緊急会議
….また、意識を飛ばしたか、俺は。弱いな、少し、弱すぎやしないか。奇襲を許し、裏切りを許し、挙句後ろから刺し殺される。どうするかな…こんなところに居たって、何も変わらない、早く戻りたいが…
「よお、またきたのか。お前、覚えてるか?いつしかの時に、腐った龍を喰い、魔王の側近の一部を喰い、無理矢理その使えない力を解き放たせたことを。今、そのツケが回ってきている。お前はあの機械の剣を捨てた、だが付け入る隙を作ってしまった。いつしかに雷基と戦っていただろ、無理矢理バベルの塔とかいう人智を超越した力を使ってしまった、何もない時に。お前じゃ、力不足だった。そして、役不足でもあった。お前は、自分を過小評価しすぎていた。お前は、神を喰った。もう、あの神はいない。お前は、新しいスキルを使えるようになりすぎた、身体がもたなかった。今、お前の力はどん底だ、無理矢理使えるようにしすぎていた。お前はこのツケを払わなくてはならない、お前は、お前であって、お前じゃない。黙示録は…」
「黙示録は…アポカリプスはなんだって言うんだ、早くここから帰……」
「黙って聞いてくれ、宿主。あんたの力になりたいんだ、お前ほどおもしろそうなやつは見たことがないからな。黙示録が……近い、さっき言っただろ、右腕が消えつつある…と。」
ああ、言っていた、機械の剣による何かだ…と。
「それは違った、あの剣は黙示録の引き金。あの神はこの世…森羅万象を遅らせるための切り札。バベルの塔は地を崩す為の移動手段、ノアの方舟は奇跡の産物。暴食は…障害全てを喰らう救世主の矛。戦旗は可能性を導き出す希望、槍は光を齎し道を作る道具。阻害の銃は真の力を隠す為、狭間を渡り歩く弓は皆を目的地まで届ける為に。そして俺は、何も喰らわない役立たず。黙示録、全てが重なり合う時、初めてその審判に終止符を打てる。だが俺はもう、これ以上知らない。これ以上は、何も。ただ一つ、言わしてくれ。お前がここから消し去ったのは切り札だ、どうなるのか、俺にもわからない。俺はこの世界に、何千、何万、何億年とここにいた。俺は好きなんだ、この世界が。殺伐としていて、仲間が殺されて、神が権力を振りかざして…でも、そんな世界が面白いんだ。毎日誰かが殺されて、泣き叫びながら生かしてくださいと懇願する。そんな、終わってるこの世界が好きなんだ。だから、俺からの、一つの生命としてのお願いだ。頼む、この世界を、いやここだけじゃない、その他大勢の世界を、救ってくれ…!」
…なんだって、情報量が多すぎて…わけが、わからない。一体この世界は…いや、そんなこと、今はどうだっていい。後で、何回だって考えられる。
「わかった、俺にも、何が何だかわからないんだ。でもな、わかった。俺はこの世界に来てからはお前との馴れ合いが一番長いんだ、だから、できる限りは、なんだってやるさ、ゼルス。」
そうだ、それが、俺だ。考える時間なら後で大量にある、黙示録…それだけが気がかりだ、至高神にそんな…そんな力があったのか。俺の力が使えないのは喰いすぎ故…なのか?それだけじゃない気もする。だが今俺にそんなことを気にできる暇なんてない、とりあえず今はこの世界のことを知る必要がある。少し管理者っていう奴がいるのと真王の存在を知った程度で調子に乗りすぎた、この世界の事を俺は…知らなさすぎたんだ。
「それじゃあな、俺は戻る、もう二度と来ないよう願っててくれ。」
「ああ、そうするよ、何回も意識飛ばしてたら身体に悪いからな、気をつけろ。それじゃあな、俺の分まで戦ってくれ、文也。」
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…よく見る……ことはない天井、問題のない身体、なんとかなったらしい。俺の腹も…塞がっている、不思議なものだ。痛みもある、でも傷は治る、あれほどの傷も、なんの跡も残さずに…
「目が覚めたか、今レジリアが色々持ってきてくれてるから少し待っとけ。翔也と凛で今残党狩りをやってるところだ、俺は城内の見回りなんだがレジリアが帰るまで見ておいてというわけで今ここにいる。なんかあれだな、相当な闇を抱えてそうだな、あの子。気にかけてやれよ、あれは爆発したら何をするか分からない、俺は…あいつが時々怖い。何故かはわからないが…な、足音か、そろそろ来るんじゃないか。」
…時々、怖く見える……もしかしたら絶華族が嫌われているのもそういうところがあるのかもしれないな…。でも大丈夫だ、レジリアなんだぞ、そんなことをするような奴か…?まあでも、奴隷として売られそうだったんだ、闇は持ってるはず、それを、どうにかしないとそのままなのかもしれない。俺は話を聞かなかった、また動けるようになれば、レジリアの事についても…
「文也様、目が覚めたんですね…!よかったです…!」
「それじゃあな、あ、そうそう。隼人からの…置き手紙だ、これが本当かどうかはわからないが…もしこれが、本当なら、'この中に、裏切り者がいる'。それも、相当現実的なことが書かれてある、相当な審議がいるぞ、これは。」
…置き手紙、えらく律儀だな、要求が書かれてあるのかそれとも…
「これを読んでいる人がいるという事は僕の作戦は成功したのでしょう、もうこんな事やってられません、こんな遊びに付き合うのは反吐が出そうです。頼みました、貴女が内側から、僕が外側から。魔王と協力し、貴女が好きなものを、僕は元の世界に帰る為。目的は違いますが協力関係なのです、間違っても他人には読ませないでくださいよ………か、なんだ、これは…。」
貴方じゃなく、貴女。わざわざそう書くのが余計に…信憑性がある、となるとこの中なら…凛と玲、あと…レジリア?それは違うか、だって勇者じゃないから…な。
「…これでよし、緊急で人を集める、さっきの場所に行くからここで待っててくれ。」
「わかりました…。」
…まさか、こんなことになるなんて。ここに来て早数ヶ月…日付感覚がおかしくなりそうだ、今この瞬間も…隼人は何かを喋っているのか?今この瞬間も内部から何か探られているのか…ああ、クソ。わかりきってただろ、そもそもあの時点で。そしたら消去法で隼人が残った瞬間拘束するべきだった、ああ、クソ!
「おい、どこに行く、そっちは壁だ……どうした、お前、寝ぼけてるのか?」
「…いや、すまない、考え事をしていた。裏切り者…誰だと思う、雷基。」
「さあ、誰だろうな。少なくともいつか矛盾が生まれるはずだ、例えば貢献度が少ないとかな、だから今の時点じゃわからない。ただ手紙には貴女って書かれていたんだ、愚直に考えるなら玲か凛。だがそんな単純な答えじゃないと思う、それを考える為の会議だろ、文也。」
…そうだな、一体誰が何のために…いや何のためかはわかりきってるか。どうしてこんなことになるまで俺が放置したか、それが結構重大な問題だ…。
「今回急ぎ集まってもらったのは他でもない、俺たちの中に…裏切り者がいるかもしれない。今回隼人が残したこの置き手紙、この中に書かれていること、何が真実で何が嘘かを見極めたい。そしてあわよくば…裏切り者を炙り出したい、では、緊急会議を始める!」




