第91話 勇者パーティーの情報
次の日、僕はベヘモス商会の事務室にいた。
ミーニャに呼び出されたのだった。
ソファーに向かい合って座っている。ミーニャの隣には町の人のようなシャツとズボンを着た第一王子フェルディナンドがいた。
お忍びで来たらしいけどその美形は隠しきれておらず、鎖骨が見えるラフな格好が逆に色気を醸していた。
イケメンのまぶしさに気後れしつつ僕は尋ねる。
「それで、今日の呼び出しはなんでしょう?」
「良い武器ができたと聞いてね」
「ああ、一応こちらにしようかと思っています」
僕は今朝受け取ったばかりの『十束の剣』をテーブルの上に置いた。
『十束の剣 竜殺 攻撃+120 攻撃120% 筋力+120』
朱塗りの鞘に入り、柄は白く、鍔には宝石が嵌まっていた。
フェルディナンド王子が片方の眉だけ上げて言った。
「なかなか良い剣だけど選ばれるのには、ちょっと弱いのではないかな」
僕はオリハルコンのインゴットとドラゴンの鱗を出して置いた。
「ここからさらに強化したいんです。素材はあります。でも魔具鍛冶師がいなくて」
フェルディナンドは目を見開く。
「これはオリハルコン! ――すごい剣になりそうだね」
「草薙の剣は竜殺がついてて攻撃+240 攻撃240% 筋力比率上昇レベル×3になります」
「聖剣と比べると、少し見劣りしますね」
「ここだけの話なんですが、ラスボスの魔王がドラゴンなので。実用性という点では聖剣より竜殺が付いた武器が一番いいと思います」
ぶっちゃけ、竜殺が付いた聖剣グラムなんてのもあるが、魔王討伐後に出現する裏ダンジョンに行かないと手に入らないので意味がなかった。
「魔王がドラゴンなんて情報は確認されていませんが、確かなのですか?」
僕は頭の上に乗ってるミツコを指さした。
「こちらはハニービーのミツコです。この子の親のハニービークイーンと会って話したところ、魔王がドラゴンだから協力するか悩んでいると言っていました」
「なんですって!? 魔物経由で聞いたというのですか……信じられないですが、信憑性はありますね……」
「疑うなら最果てのレハーノ村にハニービークイーンが住んでいますので、聞いてみるといいかもしれません」
僕の頭の上でミツコが同意するようにブブッと鳴いた。
フェルディナンドが頷く。
「この街の鍛冶師ではダメだったんだね?」
「無理だと言ってました。僕にも魔具鍛冶師の知り合いが一人いるんですが、その人の作る剣は実用重視で装飾がないんですよ。選ばれるためには、貴族が好きそうな装飾を施せる魔具鍛冶師じゃないとと思って」
「そうだね。国として勇者に贈る剣だから、装飾も重要だね」
「誰かいませんか?」
「王都に行けば王室御用達の魔具鍛冶師を紹介出来るよ。装飾の腕も王国随一だ」
「じゃあその人にお願いします」
「それなら、急いで王都へ行こう。一緒に来て欲しい」
僕は一瞬だけ考えた。
でもこの街でやりたかったことはほぼすべて終えたと思った。
残りも一日あればいい。
「わかりました。ついていきます」
僕は頷いて同意した。
フェルディナンドは長い脚を組み替えると、和やかに微笑んで言う。
「さて。君が欲しがっていた勇者の情報を伝えようか」
「どんなことがわかりました?」
「全部じゃないけどね。まずは勇者パーティーに入る上級職の状況。シュタールアドラー帝国が魔導騎士を推している。グレース王国が魔女を出すそうだよ」
「ほう。魔女とはすごいですね」
魔導騎士は下級職の『魔法剣士』をマスターするとなれる上級職。そんなに強くない。典型的な器用貧乏の職業。
一方、魔女は下級職の『呪術師』『薬師』『魔術師』の三つをマスターしてなれる職業。
年齢=レベルの世界で三つもマスターするなんて、クラリッサさんのような老婆なんだろうなと思ってしまった。ワルプルギスのよーる!
「あとルクティア教皇国とサンイース王国が、自分のところの聖女を推そうともめてるね」
「うわぁ。それはそれで面倒ですね」
聖女・聖人は回復職を二つマスターすればなれる上級職。
魔女よりもなりやすいため、被ったのだろう。
政治的対立が勇者パーティーに持ち込まれそうで、今の段階からうんざりした。
「とりあえず、勇者、魔導騎士、聖女、魔女のパーティーになるのでしょうか」
「そのはずだろうけどね。どうもまだパーティーが組めなくてごたついてるようだよ」
「その辺は謎ですね。まあ今は武器の用意が先決ですね。思うのですが、強化にどれぐらい時間がかかるかわかりませんし、明日にでも出発しましょう」
「賛成だ。むしろ私から提案しようかと思っていたところだよ」
「では、また明日」
王子との話し合いを終えた僕は、街の外に出た。
向かうは中級ゴーレムダンジョン。
2~3回ぐらい周回するつもりだった。
僕は十束の剣と一緒に引き取っていた熱血鉢金を頭に巻く。
『熱血鉢金 防御+50 火攻撃50 火抵抗50% 攻撃速度50%』
「ポーションも食料も補充したし、やるぞー!」
「ブブッ!」
頭の上でミツコが楽しそうに羽を鳴らす。
僕はゴーレムダンジョンへ向かって、平原を駆け抜けていった。




