第86話 ダンジョンボス戦!
地下十階。
石畳と石壁のダンジョンとなる。
広い通路に数種類の魔物が混合して現れた。
やっかいなのは石像や銅像のゴーレム。
剣士風なら剣術スキルを使ってくるし、魔術師風なら魔法を使ってくる。
悪魔をかたどったような石像ガーゴイルも出た。
まあ最下層と言うことで中級ダンジョンで出る魔物の最大レベルであるLV60の魔物が多かったので、即死100%を発動させてさくさく進んだ。
覚えていた宝箱も開けていく。この階には三つあった。
地下五階は空っぽだったが、さすがに十階の宝箱は入っていた。
キュアポーションにマナポーション。ミスリルのインゴットも手に入った。
これで二個目だ。
「よしっ」
僕は頼まれてた依頼分のインゴットを手に入れて気を良くした。
「この調子でボスも倒してしまおう」
「ブブッ?」
ミツコが心配そうに羽を鳴らした。大丈夫? 敵強くない? とでも言いたげに。
僕は肩をすくめて答える。
「たぶんボスはグレートミスリルゴーレムか、ミスリルマシンゴーレムだから。どちらも倒し方は知ってる」
「ブブブ……(本当に強いのは出ない?)」
「激レアの強い敵で、石の女神像なんてのがいるけど……まあ、めったに出ないから大丈夫!」
「ブーブー」
ミツコが不満そうに羽を鳴らしながら、僕の顔をのぞき込んできた。
昆虫は複眼なのに、ジト目に見える。
「わかったってば、気を付けるよ」
僕はミツコに謝った後、迷宮のような地下十階を歩いてボス部屋前へと移動した。
両開きの大きな扉を押すと、ゴゴゴっと音を立てて開いていく。
中は石の柱が立ち並び、魔法の明かりが灯っていた。
広間のように広い。奥には祭壇のような段がある。
僕は毒竜の蛇剣を握りつつ、中へと入った。周囲を警戒しながら奥へと進む。
後ろの方で扉が閉まった音がした。
僕の足音以外、静寂が支配する。
――と。
祭壇前に白い光が集まり、高さ10メートルはある白い石像が現れた。女神のように美しい姿。素材は大理石か石膏か。
「やっばっ!」
僕はとっさに石柱の影に隠れた。
石の女神像は、石化をしてくる。見られたが最後、石化されて死ぬまでボコボコにされる。
パーティーなら対処法はあるが、ソロだと詰む。
女神像に見られるわけには行かなかった。
とはいえ。焦ったけど、結局Lvは60。
柱を利用して90度の角度で背中を叩くように蛇腹剣を振るったら、ペチッと乾いた音とともに女神像は死んだ。
「やれやれ。変なフラグは立てるもんじゃないね」
「ブブッ」
ミツコはおかしそうに羽を鳴らした。
僕はアイテムボックスを確認する。
石の女神像からは『ミスリルのインゴット』と『女神のレリーフ』がドロップしていた。
レリーフは女神の盾を作る素材だった。
「さて、帰ろう」
僕はボス部屋の奥に向かった。
奥にある小さい部屋で、ダンジョンコアを触って地上に戻った。
中級ダンジョン踏破して称号と共に『筋力+3』を手に入れた。
外に出ると、空が赤く染まっていた。
朝焼けかと思ったら西の空の方が明るい。夕焼けのようだ。
ダンジョン内でどれぐらい過ごしたかわからなかった。
――時計みたいな物欲しいな、とちょっと思った。
街へ戻るため、東に向かって歩く。
敵のいない安全な道を歩いていると次第に考えないようにしていた考えが浮かんでくる。
最初は顔を上げて歩いていたが、次第に俯いて、背は丸まっていく。
僕の黒い影が伸びる地面を見て、とぼとぼと歩く。
街が近づいてくるにつれて、気持ちが落ち込んでくる。
「あ~。うまくやってきてたと思ったのになぁ……」
たぶん、自分の事だけを考えて見れば、うまくやってこれたと思う。
二回ぐらい死にかけたけど。いや、三回か。
でも遊び人と言う不遇職で、しかも運キャラでここまでいい感じでこれてる。
ステータスを見ればレベルは47になっていたし、スキルポイントも随分と溜まった。
でもそれだけ。
マルコスさんを救えなかったことが、大きなしこりとなって残っている。
世界を救うのは僕の仕事じゃないし、すべての人を救うなんて無理だと分かっている。
でも自分の手の届く範囲ぐらいなら守れると思っていた。
――それなのに。
守れなかった。
なんでもわかってる気になっていた。無自覚な傲慢だったと気付かされた。
この先やって行けるのだろうか。
こんな調子じゃイーリスを助けることも魔王を倒すこともできないかもしれない。
「あー、だめだ。気分が沈む!」
かといって急に心は晴れない。
しょうがない。今日だけは目一杯落ち込もう。絶望しよう。
明日から、また頑張ればいいんだ。
僕は東へ15分ほどの距離を歩いて、交易都市コメルシアへ戻った。
街の西門が閉まりかけていたので、ぎりぎりで滑り込む。
危うく野宿になるところだった。
宿に帰ると、カタリナから連絡が来ていた。待ち合わせの場所と時間を手紙で知らせていた。
再会は明日にすることにして、僕は部屋に戻って寝た。
疲れていたのか速攻で眠りに落ちた。




