第85話 隠しアイテム
地下九階。僕は洞窟の突き当たりまで来た。
高い岩壁がそそり立っている。掘られた様子はなかった。
「よしっ。まだ取られていない」
「ブブッ?」
頭の上でミツコが疑問形で鳴いた。
「ここに隠しアイテムがあるんだよ。数ヶ月に一度復活するけど、ランダムでね。確実に復活してるメンテ開けは取り合いだった」
メンテが終わる頃に何度もリロードして、最速でログインして取りに来る。場所記憶の課金アイテム(5000円)が必須だった。
僕はアイテムボックスからつるはしを取り出して掘り始めた。
岩壁は硬いところと、少し色が薄くて砂のように崩れる部分があった。
つるはしが深く刺さり、砂壁がどっと崩れる。
しかし数分で、ゲームと現実の違いを思い知った。
「ヤバい。大変だ、これ」
足下にうずたかく積み上がっていく砂と瓦礫。足下が埋まるから外へ掻き出さないといけない。
ゲームだとつるはしを一度振るうごとに1メートルぐらい掘れて土砂も消えたのに、現実は厳しかった。
少し考えれば当然だけど。
「あ、そうか」
僕はつるはしを振るいながら、アイテムボックスに掘り出した土砂を入れていく。
これで外に掻き出さなくても良くなった。
あとはもう、つるはしを振るいまくって、壁を崩していく。
ぐるぐると渦巻き状に掘っていく。
カーブが続くので入り口が見えなくなった。ダンジョンを照らす魔法の光も穴の中へは入ってこない。
ランプを取り出して灯りをつける。
掘れるところと掘れないところの堅さが違うので、なんとか迷わずに掘り進めていけた。
数時間後。
もう今が昼か夜かもわからなかった。
ゲームだと5分ぐらいで終わった掘削が、現実だともの凄い時間がかかった。
途中一度だけ飲み物と軽食を食べる休憩を取った。あとはずっと掘りっぱなしだった。
それでもようやく渦巻きの中心へと来た。
ボコッと軽快な音ともに二畳ぐらいの小さいスペースが空いた。
ランプで照らすと壁の一カ所が金色に光っている。
僕はスペースに入って慎重につるはしを振るった。
光る壁が崩れ落ちて金属の塊が現れた。
鑑定で見ると『オリハルコンのインゴット』だった。
「よしっ!」
「ブブッ!」
頭の上にいたミツコが一緒に喜んでくれた。
帰り道はアイテムボックスを見ながら、土砂で埋めながら戻った。
――あれ? アイテムボックスの一枠が255個じゃなくて、999個入ってる。
運営が違うと、容量も違うのかなと思った。
でも容量に余裕があるのはいいことだ。
ムカデの甲殻が百以上あったりするし。コウモリの牙や翼だって……。
「え?」
僕は驚いて立ち止まった。
頭の上でミツコが不思議そうに首をかしげる。
アイテムボックスの中にベルトのような黒い帯が入っていた。
「熱血鉢巻きだ!」
いつの間に手に入れたのか。たぶんミスリルゴーレムが2体いた場所での戦闘だろう。
性能はこんな感じ。
『熱血鉢巻き 防御+5 火攻撃5 火抵抗5%』
弱い。一見、ゴミに見える。強化しても各数値が10になるだけのゴミ。当初は捨てられていたユニーク装備。
しかし鉄ではなく鋼のインゴットで強化することで『熱血鉢金』になり、各種数値が十倍になった上、攻撃速度50%が付く。
頭に速度が付くのはこの鉢金だけなので、一気に最終装備の仲間入りをした。
「ふふーん。帰ったらミーニャに魔具鍛冶師を紹介してもらお」
掘った隠し通路を埋め戻して、ダンジョンに出た。
「そういやミスリルのインゴットは手に入ってるよね?」
2体も倒しているのだから、確実に手に入っているはずだから安心していたけれど、確認まではしてなかった。
アイテムボックスを見ていく。
「……あれ?」
ミスリルのインゴットが見当たらない。
2体も倒してるのに手に入ってないのはおかしい。
のべ500個以上のアイテムを入手していた。何が何やら。
ほとんどが肉や牙などの素材だが、たまに効果付きの装備品があった。
ようやく見つけたけれど、一個しかなかった。
何でだろうと思ってさらに探すと虹色の丸い玉『オーラオーブ』を見つけた。
「ミスリルゴーレムの激レアドロップだ!」
オーラオーブはアイテム作成やアイテム強化に使用すると、付与効果を付けられる。攻撃力100%が付いた草薙の剣なんかが作れる。
ドロップ率が渋く、手に入れようとしたら何か月もかかる。高額で取引されていた。
一度、同じ運営が出した別ゲームに特典としてオーラオーブが付いたので、ゲームを十個買ったこともあるぐらい。
自分かイーリスの最終装備に使うべきだけど、今のうちから手に入って良かったと思った。
「さて、どうしようか」
ゴーレムは全種類倒せるとわかった。
ミツコが首をかしげながら下と上を交互に指さす。
帰るか、下まで攻略するか、と効きたいらしい。
「まあ一度は攻略しておかないとだし、ボスまで行くかー」
「ブブッ」
ミツコも気合いを入れて羽を鳴らした。




