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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第83話 失意の帰還


 ダンジョン地下五階。

 ボス部屋の前の小さな広間に僕はいた。

 弱火でことこととスープを煮込んでいる。


「ううん……あれ?」


 カタリナが目を覚ました。

 同じ薬か魔法を使ったのか、アダンもルシアも次々と目を覚ました。



 カタリナが呆然としつつ、開いているボス部屋の扉を見た。


「ユートが助け出してくれたの?」


「はい。全滅して開いたみたいで……その後、骸骨の銅像は倒しました」


「マルコスは……?」


「扉が開いて、僕が入ったときにはもう、姿はありませんでした」


 僕はマルコスが使っていたメイスを床に置いた。

 カタリナが崩れ落ちるようにメイスに手を伸ばした。


「そんな……マルコス……っ! あなたっ!」


 カタリナはメイスを抱きしめて泣いた。涙をボロボロとこぼして号泣した。

 アダンも目に涙を浮かべて歯を噛み締めている。

 ルシアは信じられないといった様子で立ち上がる。


「嘘よ! だってマルコスは、だって取っても強いもん!」


 僕は首を振った。マルコスの着ていた鎧と背負い袋を出す。


「あとは鎧と背負い袋があっただけだよ」


「そんな……うわぁぁん! 探すぅぅぅっ!」


 ルシアは泣きながら細い手を振って、ボス部屋の入り口目掛けて走った。


「待って! 復活してる――危ない!」


 僕は最速で追いかけた。

 入り口手前、ぎりぎりでルシアを突き飛ばす。

 そのまま僕は中へ踏み込んでしまった。


 ドォンと重い音を立てて後ろで扉が閉まった。


 部屋の中央に、3メートルはあるゴーレムが現れた。

--------------------

種族:グレートアイアンゴーレム Lv50

攻撃力1200 防御力800

HP3500 MP200

スキル:『殴る』『蹴る』『多段殴打』

--------------------


 動きは遅いけれども、多段殴打は一発食らったら死んでしまう強さがある。

 ――ただアイアンゴーレムだけども、即死75%ならどうか。


 僕は巨体に近づきながら蛇剣を振るった。

 鉄の体に傷がつき、ドクロのエフェクトが発生。

 一発で倒した。


 鋼のインゴットと鋼の盾を手に入れた。

 ――てか、鉄じゃなく鋼のインゴットばっかり。レアな方が落ちてる。

 強化一段階目は鉄のインゴットが必要なんだけど……運キャラの弊害かもしれない。


「まあ、手に入らなければ買えばいいか」


 後方で扉が開いていく音が聞こえたのでそちらに向かった。

 入り口で立ち止まる。ぼろぼろ泣いているルシアに呼びかけた。


「倒したから。探すなら探すといいよ」


「ふぇぇん――ごめんな゛ざい゛」


「え? ――ああ、いいよ別に。グレートアイアンゴーレムだったからすぐ倒せたよ」


「「「ええっ!?」」」


 ルシアだけじゃなくカタリナもアダンも驚いていた。

 僕は肩をすくめてアダンを見た。


「アダン、ごめんだけどスープ見ておいて。煮詰まるかも?」


「あ、はい」


 アダンは鍋に向かった。

 ルシアがボス部屋に入ってくる。

 流れる涙を拭いつつ、部屋を見ていく。


 僕は扉が閉まらないように入り口のところでずっと立って待っていた。

 しばらく部屋をうろうろしたルシアが、泣きながら戻ってきた。


「何もなくなった! マルコスがいなくなった! う゛うわぁぁん!」


 また声を上げて号泣した。

 僕はルシアをそっと部屋の外へ誘導する。



 ルシアはカタリナに駆け寄って抱きついて泣いた。

 カタリナもまた抱きしめつつ泣いた。


 ボス部屋を出た僕は、鍋を見るアダンの傍に来た。

 しゃがみつつ話しかける。


「アダン、なにがどうなったの?」


「骸骨がとても強くて。素早いし、攻撃が鋭くて。攻撃しても防がれるし。前後で挟み撃ちしても防がれた上にカウンターで切り裂かれて……」


「回復したり遠距離攻撃したらそっちにも斬撃飛ばしたり、とか」


「そう……それで、魔力も尽きてどうにもならなくなって……それでマルコスが――っ」


 アダンはこみ上げる涙と嗚咽を堪える。でも口の端から「くぅっ」と悔しそうな呻き声が漏れた。

 その後の途切れ途切れの言葉を繋ぐと、マルコスは最後に捨て身の攻撃を繰り出してみんなを守ったらしい。



 しばらくしてルシアも泣き止んで、みんなは落ち着いた。

 たき火を囲んでスープを飲む。

 僕は尋ねる。


「これからどうされますか? カタリナさん」


「戻るしかないわね……」


 ため息交じりのカタリナの言葉に、アダンが驚きと戸惑いの声を上げる。


「でも、指名依頼を受けてるから、違約金が……」


「でもしょうがないわ」


 気になったので尋ねる。


「どんな依頼だったんですか?」


「貴族からの依頼よ。ミスリルのインゴットを一つ取ってきて欲しいって」


「なるほど。それで地下6階に行こうとしてたんですね」


「でももうダメだわ……せっかく借金返したところなのに、また……」


 カタリナは顔を手で覆ってしまった。

 旦那さんをなくしたのに、さらに違約金まで発生なんて……。

 アダンもルシアも肩を落としてしょんぼりしていた。



 ――しかたない。

 僕は意を決して言った。


「じゃあ僕が余分にミスリルのインゴットを取ってきますよ」


「そんなの悪いわ」


「いえ、乗りかかった船です。一晩だけですけどマルコスさんにはお世話になりましたから」


「本当にいいの?」


「ええ、任せてください」


「……そうね。ボスも一瞬で倒したみたいだし。もし取ってきてくれるなら助かるわ」


「その代わり、醤油を売ってる雑貨屋を案内してください」


「……ありがとう」


「あたしが連れてくからっ! 絶対連れてくからぁ!」


 ルシアが泣きはらした目をしつつ元気に叫んだ。

 僕は苦笑しながら答える。


「ありがと。じゃあさっそく。僕はダンジョンの攻略を続けるので、皆さんを四階の階段まで送りますよ」


「そこまでして貰わなくても……」「帰るだけならわたしたちでもできるってばっ」


「魔力がもうないのでは?」


「「うっ」」


 カタリナとルシアが口ごもった。

 ――どうやら図星らしい。



 それから僕らはスープを食べ終えると、野営の道具を仕舞った。

 疲れ切った三人を連れて、来た道を戻っていく。

 途中、ストーンゴーレムが二体出たけど、速攻で倒した。


 三人とも目を丸くして驚いていた。


「一瞬で!?」「強いですね」「すごいよユートさん!」


 そして上へと上がる階段まで来る。

 カタリナは青い髪を揺らしてお辞儀した。


「何から何まで助けてくれてありがとう」


「これぐらいなんでもないです。カタリナさんたちも気を落とさずに、頑張ってください」


「ありがとう」「さよなら、ユートさん」


 僕らは手を振って別れた。

 それから僕は来た道を引き返してボス部屋へと向かった。


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