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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第8話 ポンコツちゃんからの逃亡


 亡霊の館の一階。

 僕はフェアリーエルフを背負ったまま、厨房から外の様子をうかがった。


「魔王様のための、ドラゴンのための、魔物のための――えーっと、なんだ?」


 まだドラコの演説が続いていた。

 偉そうに振る舞うために演説をしていたら、何を言っているのか自分でもわからなくなったようだ。

 さすがポンコツちゃん。


 僕は厨房を出て裏口へと向かった。

 今はすべての魔物が表の庭に集まっている。

 逃げ出すならチャンスだった。



 僕は急いで裏口へと向かった。

 そしたら急ぎすぎたらしい。


「ん……んぅ?」


 背中から可愛らしいうめき声が聞こえた。

 ――やばい!

 今、声を上げられたら、見つかってしまう!


「ごめん、君を助けるから静かにして!」


「んー! んぅー!」


 フェアリーエルフが背中で暴れた。

 縛ったままにしておいて良かった。


 僕は裏口から館を出た。

 外はすでに日が傾いている。

 僕は裏庭に隣接した森の中へと入った。

 そして、少女を背負ったまま西へと走り続ける。その方向が外縁に一番近い。


 できるだけ館から遠く離れていく。

 夕暮れ時の薄暗い森の中を駆けていった。



 そして死の森を囲む崖まで来た。

 フェアリーエルフを下ろして、手足の拘束を解く。

 猿ぐつわに手をかけたところで、僕は言った。


「魔物に見つかるから、叫ばないでね」


 フェアリーエルフは、こくこくと可愛らしく頷いた。金髪が揺れる。

 猿ぐつわを解くと彼女は、ぷはぁっと安堵の息を吐いた。

 そして二重の大きな青い瞳で僕を見上げて言う。まつげが長い。


「助け出してくれて、ありがとうございます」


「いやいや、困ったときはお互い様さ」


「私はフェアリーエルフのシェリルと言います」


「僕はユートだよ。……で、どうして捕まっていたの?」


「病気の母のために薬草を手に入れようとして、村からかなり離れたところを魔物に襲われました。結界の外に出てしまっていたのでしょう」


 僕は頭の中でMISOの世界地図を思い出しつつ尋ねる。


「シェリルの村はこの近くなの?」


「えっと、ここは死の森ですね。死の森を出て北西に向かった山脈の中に、私の村があります」


「えっ、そんなところにフェアリーエルフの村があったんだ」


 MISOではなかった情報。

 そもそもフェアリーウルフの隠れ里は実装されてなかった。


 でも、だいたいの場所はわかった。

 MISOではエルフの老人が住む家があったところではないだろうか?

 エルフの珍しい品を購入できたはず。



 シェリルは眉尻を下げて不安そうな表情を作る。


「どうか私たちの隠れ里は、他の人に教えないでください」


「うん、もちろんだよ。信じて欲しい」


「はいっ」


 シェリルは垂れ目がちの瞳を輝かせて、笑顔で答えた。

 ――ちょっと可愛い。


 直視していられなくて、僕は視線を逸らした。

 ――なに浮気してるんだ。僕の想い人はイーリスだけだ。



 僕はアイテムボックスからベルトで作ったロープを取り出しつつ言う。


「じゃあ、この崖を登ろう。僕が上に行ってからこのロープを垂らすから」


 僕は崖の岩肌に手を伸ばした。でこぼこに手や足をかける。

 するとシェリルが小首をかしげた。金髪がさらっと流れる。


「えっと。私は飛べますので、私が上に行ってロープを垂らした方がよくないでしょうか?」


「あ……」


 そうだった。フェアリーエルフは背中の羽根を使って空を飛べるんだった。

 僕は恥ずかしさに頬が火照るのを感じつつ、崖から手を離した。

 ロープを差し出しつつ言う。


「うん、そっちの方がよさそうだ。お願いするよ」


「はい、行ってきます」


 ロープを受け取ったシェリルは透明な羽根をパタパタと羽ばたかせて崖の上まで飛んでいった。



 しばらくして崖の上からロープが垂らされた。

 ロープを手がかりに、僕は崖を登っていく。

 10分ほどで登り切った。


 しかし腕の筋肉を使いすぎたらしい。

 両腕がぷるぷると小刻みに震えていた。


 心配そうな顔をしてシェリルが言う。


「大丈夫ですか?」


「なんでもないよ。これぐらい平気さ」


 僕は強がりを言って、胸を張った。

 シェリルが笑顔になって言う。


「それは良かったです」


「じゃあ、シェリルの村まで送るよ」


「いいのですか?」


「また捕まったら大変だろ?」


「はいっ。ありがとうございます」


 シェリルは嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔にドキッとしてしまう僕だった。


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