第78話 装備調達とテンプレ冒険者ギルド
城塞を後にした僕とミーニャは、ベヘモス商会の倉庫兼事務所に戻ってきた。
事務所の椅子に座ったミーニャが、頭の上の猫耳をへにゃっと垂れさせながら言う。
「つ、疲れたニャ。でもこれからユートが頑張ってくれたら、ベヘモス商会がこの国に食い込めるニャ」
「そうなの? この国の商会は?」
「主だったところは全部、国王か第一王女を支援してるニャ。中立に見えても裏でどう動いているかわからないニャ。このまま第一王子と懇意にすれば、王室御用達商人も夢じゃないニャ」
「まあ、頑張ってみるよ。どんな武器がいいとかはあるのかな?」
「聖剣エクスカリバーなんか有名にゃ」
「エクスカリバーかぁ……」
貴族の知識でも知っている、有名な聖剣。
でも正直、能力的に微妙な剣なんだよなぁ。
イーリスに使って貰うなら別の剣がいい。
――でもゲーム的に強い剣であっても、聖剣という名称に負けてしまうかも知れない。
悩んでいるとカルロスが事務所に入ってきた。
ミーニャのそばへ寄り、紙とお金を渡す。
「姉御。計算できやしたぜ」
「ご苦労にゃ……ニャにゃっ!? 3155万ゴートにゃ!? そんなになったニャ!?」
「中級の貴重な素材ばかりで……それにユニークの指輪や優秀な効果付き指輪だったんで」
ミーニャがぐぬぬっと下唇を噛みつつ、僕を睨んだ。
そしてお金の載ったトレイを差し出しながら言う。
「約束ニャっ! 受け取るといいニャ」
「うんありがと」
僕は素直に受け取った。
魔銀貨28枚に大金貨17枚。金貨は15枚だった。
魔銀貨はミスリルで出来ていて、一枚100万ゴートの価値があった。
大金貨は20万ゴートの価値があった。
素材や武器の買い取り価格は、全部で3155万ゴートになったようだ。
一割増が効いて、とても得をしたと思った。
これで所持金が経費合わせて5000万ゴートを超えた。
もうお金に困ることはなさそうだ。
僕はミーニャに言った
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「何かあったらすぐ連絡するニャ」
僕は街へ出た。
石畳の通りに面して、様々な店が軒を連ねていた。
物価や品揃えを確認しながら歩いて行く。
特に武器や防具の値段を見ていく。
低級装備は充実していた。
しかし効果付きは少なかった。
中級装備はあまり見かけない。ユニーク装備は大きな店で飾られている一本があったぐらいだった。
「それに武器はメイスやハンマーが多いなぁ」
「ブブッ?」
ミツコがどうしてと言いたそうに羽を鳴らした。
「たぶん近くにあるダンジョンがゴーレム系ダンジョンだから、剣より打撃武器に需要があるんだと思う」
解説しながら大通りに出る。
ひときわ大きなお店があった。武器や防具が充実し、テントや寝袋など野営用品も置かれている。
「探し物があるかも?」
僕は店に入った。
鑑定で見るまでもなく、新品のアイテムばかり並んでいた。魔道具も多い。
僕はテントや寝袋を見る。探していたつるはしもあった。
「お。あった」
僕は嘴から柄まですべて鋼鉄で出来たつるはしを手に取った。
一言でつるはしと言っても、尖った部分は銅や鉄、鋼と何種類かある。
しかも柄が木でできてたり鉄でできてるつるはしが多く、それらはすべてMISOでは下級マトックに分類されていた。
「ついでに経費で全部買っちゃお」
王子からもらった経費の2000万は余っても全部僕のものだけど、何に使ったかだけは書いて提出しないといけなかった。
というわけで、テントや寝袋、毛布。鍋や包丁、火打ち石など。魔物避け結界装置や魔法ランプ、コンロ型着火装置も一台。魔石の魔力が続く限り水が出る水筒など。
などなど野営用品一式を全部新品で揃えた。170万ゴートの大奮発。
さらに中級マトックになる『鋼のつるはし』も購入。とても頑丈で岩盤も砕ける。
これでゴーレムダンジョンに潜る準備はできた。
購入した物品の明細と領収書をもらった僕は店を出た。
同じ大通りにある冒険者ギルドへ向かう。三階建ての大きな建物。
一階は受付カウンターがあり、反対側に依頼が張り出された掲示板がある。隣には酒場が併設されていた。
鎧を着た剣士や、ローブを着た魔法使いがいる。
酒場の方からは昼間だというのに騒がしい声が聞こえてきた。
僕はカウンターへ足を向けた。まずはミツコの従魔登録をしようと思った。
しかしモヒカン頭にとげ付き方パッドをした大男が絡んできた。
どこの世紀末から来たんだか。テンプレのような嫌がらせ冒険者だった。
「よお、見かけねぇ顔だな? ここはガキの来るところじゃねぇんだぜ? ひゃっはっは」
「すでにEランクですので、大丈夫です」
僕は無視してカウンターへ向かう。しかししつこく絡んでくる。
「田舎でちょっと雑魚相手に活躍出来たからって勘違いするガキが多いんだぜ? ダンジョンのルールを知らずに挑むと死ぬぜ。ひゃはは!」
「どう違うって言うんですか」
「モンスターを倒すとアイテムを落として消える。肉が食えねぇってことだな」
「食料を余分に持って行く必要があるってことですね」
「さらにここは中級のゴーレムダンジョン。ストーンゴーレムから大理石、アイアンゴーレムから鉄のインゴットが落ちるが、重いんだよ。荷物持ちは必須だな。あとゴーレムは剣より打撃武器がいい。関節を狙うといいが、砂鉄を間接に打ち込むのも有効だ」
「ほう。なかなか正しい意見ですね」
チンピラのように絡んでくるが、言ってる内容はすごく真っ当だった。
「わかったならガキは帰ってママのおっぱいでも吸ってな! ぎゃははっ」
僕は馬鹿笑いを無視してカウンターへ行き、受付のお姉さんに話しかける。
「すみません。テイマーではないんですけど、従魔登録をしたいのですが」
「なにっ!? 生きてる本物かよっ!?」
チンピラが大げさに驚いていた。
お姉さんはチラッと僕の頭に乗るミツコを見る。
「ハニービーですか。では登録料1万5000ゴートと、冒険者カードをお願いします」
「はい。どうぞ」
僕は冒険者カードを渡して書類を書いた。
お姉さんは処理するとともに、タグの付いたネックレスと冒険者カードが返された。
「こちらのタグをミツコさんにつけておいてください。あとレハーノで登録したユートさん。おめでとうございます」
「なんでしょう?」
「ダンジョンを発見した功績により、Dランクに昇格です」
「ありがとうございます」
僕はお礼を言いつつカードとタグを受け取り、ミツコの首にネックレスを付けた。
「どう? 苦しくない?」
「ブゥン」
と楽しそうに音を鳴らすミツコ。むしろ気に入ってくれたようだ。
チラッとモヒカンの大男を見ると、ばつの悪そうな顔をしていた。
「へっ。従魔もいてDもありゃ、言うことねぇな。……死ぬんじゃねぇぞ」
モヒカンは捨て台詞を吐いてどっかいった。
その後ろ姿を見ながら僕はボソッと呟く。
「なんだったんだ、あれ」
受付嬢が興味なさそうに答える。
「あの人は初心者に絡んでは冒険者としてやっていけるか試してるんだそうですよ。お気になさらず」
「意外といい人だった」
それから僕は掲示板へ足を向けた。どんな依頼があるのかなと思いつつ。
レハーノ村の依頼は薬草採集とイノシシ退治ばかりの地産地消だったので興味があった。
掲示板を見る。依頼はいろいろと多かった。
一番多いのは、ダンジョンからのドロップ品買い取り。
大理石に鉄のインゴット。鋼のインゴットもある。レアドロップだ。
あとは魔結晶の買い取りもちらほらある。
逆に薬草採集は少ない。常時買い取りしてるみたいだが、紙が茶色く古びていた。
ネズミ退治や狼退治もあるが、行き先がダンジョンじゃないからか、これらも人気がないようだった。
「ふむ。ゴーレムを倒せるかどうか、一度試した方がよさそう」
ミツコもブブッと賛成するように羽を鳴らした。




