第73話 行商人との出会い
次の日。
僕は朝早くから目を覚ました。
どたばたと一階の方が騒がしかったからだ。
一階の食堂に降りると、酒樽がいくつも運び込まれていた。
エプロンを着けたマーサが快活な声で言う。
「おや、早起きだねユート」
「おはようございます、マーサさん。朝からどうしたんですか?」
「行商人が来たんだよ。注文した酒樽を運んできてくれたからね」
「おー、行商人ですか。後で会えるかな?」
冒険者ギルドで買い取って貰えなかった素材を買って貰えるかも? と僕は思った。
マーサがパンやスープの朝食を持ってきて言う。
「村の空き地で商品広げてるから行ってみな」
「ありがとうございます」
僕は朝食を手早く食べ終えて宿屋を出た。
念のため冒険者ギルドに寄って買い取り価格を調べたけど、タイラントボアやマウンテンスパイダーはブッシュボアやジャイアントスパイダーと同じ価格だったので売るのはやめた。
ブッシュボアだけ売って、冒険者ギルドを出た。
続いて鍛冶屋のオイゲンの所へ行き、頼んでおいたインゴットや防具を引き取った。
ファイアーリングを五百個つなげた『防火のリングメイル』防御は10しかないけど火抵抗が180%もある。
オイゲンには「二度とこんな細かい作業は御免だ!」と文句を言われてしまった。
爽やかな日差しの降る朝。
村の空き地に幌付きの大きな馬車が止まり、その周囲に敷かれたシーツの上に商品が並んでいた。
塩や砂糖、穀物など。胡椒もある。
服は少ないが、糸は種類があった。鉱石やインゴットもある。
普段はもう畑に出ている村人たちが、空き地に集まってきていた。
ソフィーがクラリッサと一緒に来ていた。
メモを見ながらひげ面の中年商人と話す。
「えっと、塩の大瓶6つ、砂糖の大瓶が3つ。あと紙の束が二束。インクもありますか?」
「はいよ! 全部で3万6千ゴートだね」
クラリッサが横から口を出す。
「香辛料や薬草はあるかの?」
「そう言われると思っていくつか持ってきましたぜ」
抱えるほどの木箱を幌馬車の荷台から下ろして中を見せる。
クラリッサがしわだらけの顔をしかめて言う。
「これとこれを貰おうかの。いくらじゃ?」
「1万5千ゴートでどうだい?」
「では塩や砂糖と合わせて五万ゴートでどうじゃ? ここで売れんと無駄に持ち帰りじゃろ?」
「ばあさんにはかなわねぇな! いいよ、五万ゴートだ」
「ソフィー、払いな」
「は、はい」
ソフィーが金貨を5枚払う。
その間にクラリッサがバッグにしまっていた。マジックバッグだった。
僕はソフィーに話しかける。
「おはよう、ソフィー」
「わっ。おはようございます、ユートお兄ちゃん!」
「買い物出来たみたいだね」
「どちらかと言えばお店の仕入れですけど……お兄ちゃんもお買い物ですか?」
「素材を買い取って貰えるかなと思ってね」
「なるほろ」
僕は商人に声をかける。
「すいません。素材の買い取りってお願いできます?」
「見かけない顔だな? 少量なら買い取ってもいいが……冒険者ギルドには売らないのかい?」
「中級や上級なのに低級と同じ値段って言われたので売らなかったんです」
「中級……何がある?」
「マウンテンスパイダーやタイラントボアですね。ホーンラビットの毛皮と、プラチナホーンもあります――あと、ユニークの指輪なんかも」
バトルリングを出してチラッと見せた。
商人は慌てて両手を振った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 馬車に載らねぇし、手持ちもねぇよ! 本店まで来てくれたら買い取れるが」
「本店ってどこです?」
「交易都市コメルシアだ。この村から馬車で一週間ほど南に行ってちょい西にある。北部では一番大きな街だな」
僕は脳裏にMISOの地図を思い出しながら尋ねる。
「その街って、近くにダンジョンが二つある街ですか?」
「いや、一つだな。ゴーレムが出るダンジョンだ」
僕が知っているダンジョンのうち一つはゴーレム系ダンジョンだった。
ひょっとしたらもう一つの地下墳墓系ダンジョンは未発見なのかも知れない。
――これはおいしいかもしれない。ダンジョンを発見すると冒険者ランクが一つ上がるから。
「なるほど。じゃあ、着いていきます」
「おう! いいぜ! 馬車に乗せてやるよ! ――ただ、ちょっと待っててくれ」
他の村人に呼びかけられて商品を売り始める商人。農作物との物々交換などもしている。
僕は腕まくりしながら言った。
「じゃあ、ついでに手伝いますね」
「おう、悪りぃな! ――馬車から塩出してくれ」
「はい」
僕は塩壺を下ろしたり、穀物の入った袋を下ろしたり、時には商品を売ったり。
『鑑定』があるので、商品名や値段もわかったから余裕だった。




