第70話 さよならフェアリーエルフ村
数日後。
東の空から朝日が斜めに差す中、僕はエルフの村の入り口にいた。
エルフたちの指導をして過ごし、全員の目処がついたため旅立つことにした。
貢献ポイントは2500ほどになり、余っていたポイントと合わせてアイテムボックスを一つ取れた。
自分のためにできることはすべてやれたと思った。
村長のアンリや村人たち、それに見送りに来てくれたシェリルとミレーヌに僕は言う。
「お世話になりました」
「何をおっしゃるんですか、ユート先生! お世話になったのは私たちの方です!」
「そうですよ。病気も治してくれましたし。とても感謝してますわ」
ミレーヌが垂れ目がちの目で微笑む。
シェリルは垂れ目がちの目の端に涙を潤ませていた。
僕はマントの裾を摘まみつつ、二人に見せる。
「疾風のマントを強化してくれてとても助かりましたよ。ありがとう」
「素材はユート先生が集めていたから……簡単すぎました」
シェリルが困り顔で涙ぐむ。
僕はマントを『鑑定』する。
『疾風怒濤のマント 防御+20 HP増加10% 回避15% 攻撃速度25% 移動速度35%』
――HPと回避が増えていい感じ。できればもう一段階強化したい。
そのために素材を手に入れなきゃ。
そんなことを考えていると、村長アンリが僕へ近づいてきた。
「これは村からのお礼だ」
アンリが布に包まれた何かを渡してきた。中を見ると透明な羽が入っていた。
――妖精の羽だ!
僕は驚いて聞き返す。
「えっ、いいんですか!?」
「シェリルから必要だと聞いてな。かつての罪人の羽――と、新しい罪人の羽だ。好きにするといい」
「――ありがとうございます」
僕は頭を下げた。
――新しい罪人って、ひょっとしてジャンのことかな?
まあ村の中で上級魔法を使おうとしたし、もし発動していれば甚大な被害が出たのは間違いない。
罪人として羽を斬られて追放されるのは致し方ないと思えた。
アンリが言う。
「いやいや、礼を言うのはこちらの方だ。村人たちの強化に加えて、我が愚息による被害を最小限にとどめてくれた。大変感謝している」
「そうですか。大切に使います」
僕は羽をアイテムボックスにしまった。
そして僕は村を離れた。
僕の背にシェリルの涙声が届く。
「また――また来てくださいね、ユート先生!」
「うん、また――元気でね、シェリル」
僕は肩越しに振り返ると、手を振って別れた。
僕は最果ての村レハーノがある南西に向かって走った。
移動速度が260%になり、のどかな平原の風景が飛ぶように後ろへ過ぎ去っていく。
ただし転んだらダメージが入るかもしれない。
なので、足元には気を付けつつ、最果ての村へ向かった。
数時間後。
まだ太陽は天頂に差し掛かっていない午前。
僕は村近く――と言っても、南に森が見える辺りまで来ていた。
このまま村に向かえばいい。
なんだけど、うずうずと心が騒いだ。
――狩りたい。指輪狩りしたい……っ!
もう充分、指輪は手に入れていた。
でも最高効率で狩り放題な状況は、もうすぐ終わる。
未発見だったダンジョンが冒険者ギルドに報告されるから。冒険者たちがやってきてチマチマとしか狩れなくなるだろう。
――その前に、もう一度! もう一度だけ狩っておきたい!
僕は自身の心に逆らえず、南へと足を向けた。
そしてネズミダンジョンの入り口まで来た。
一階は様々なモンスターで溢れていた。
太ったネズミ、ファットマウスを召喚するようになったから。
ダンジョンを支配するコロポックルたちは僕の言いつけを守っているようだった。
そして移動速度260%のままにダンジョンを駆け抜け、地下一階にある大広間へと来た。
リングラットが四隅にそれぞれ十匹ずついる。
「うひょひょっ!」
僕は変な奇声を発しながら、毒竜の蛇剣を振りかざして突進した。
……数時間後。
休む間もなく大広間を走り続けて、僕はたくさんの指輪を手に入れていた。
ユニークも出た。『バトルリング』や『マジカルリング』など。
ユニークレアも一つ出た。
『アルカナリング 鑑定 茫漠 魔法攻撃77% 魔法防御77% 知力比率上昇×3 スキルレベル+3』
アルカナリングを見ながら、僕は顔をしかめる。
「う~ん。魔法職の最終装備の一つだけど……今の僕には必要ないかなぁ。まあ将来、賢者になった時は役立つからいいか」
――その時は鑑定のついたスピードリングはイーリスへ渡そう。
贅沢な悩みだと思いつつ、僕はアイテムボックスに指輪をしまった。
いい頃合いだったので指輪狩りを終えた。
ふと、コロポックルたちは無事にやっているだろうかと気になった。
そこで荷物をまとめると、地下二階へと向かった。
地下二階では隠されたモンスターハウスへ寄った。
しかしマジックリングラットが十匹ほどうろついているだけだったので、倒さずに隠し通路を出た。
さらに確認のため、地下三階へ。
地下三階は通路に水路が流れている。
前回は獰猛なネズミ、ドブラットとシティドブラットがいたが、今はドブラットはそのままにシティドブラットがヴィレッジドブラットに変わっていた。
これは僕が指示した。
シティドブラットは時々高価な宝石や、首飾りを落としてしまう。
そのため、冒険者が狩りに来てしまうと予想された。
でもヴィレッジドブラットは何も落とさない。まれに『牛糞』や『馬糞』を落とすだけ。
アイテムドロップがくそマズいモンスターだった。それなのにシティ~並みに強い。
これにより、地下三階で狩るような冒険者はいなくなるはずだった。
狩ったとしても経験値だけが手に入り、金銭的には何一つプラスにならない。
儲けにならない地下三階は、冒険者たちは嫌がって攻略しないはず。
僕はスキル『ボックスハイド』の『消滅』を発動させつつ、戦わずに地下三階の奥へと進む。
そしてボス部屋に入った。
何本もの石柱が高い天井を支える広いボス部屋。
中央には牛ぐらいの大きさのカピバラがいた。
毒竜の蛇剣を振るって攻撃すると、一発で即死が発動して倒れた。
宝箱が出現するが、中身はただの皮鎧だった。
「よしっ」
僕はダンジョンコアのある部屋へと向かった。




