第68話 勝利の宴で村掌握
フェアリーエルフの村の広場にて。
落ちこぼれ組がジャンパーティーを倒して団体戦優勝をした。
広場を取り囲むエルフたちが勝者を称えて騒ぐ中、村長のアンリが輪を抜けてシェリルたちに近づく。
そしてシェリルたちの前に立つと、渋みのある笑みで勝者を称えた。
「よくやった、落ちこぼれ組よ。汚名を返上した戦いぶり、見事であった」
「ありがとうございます、アンリさん」
シェリルが代表して答えた。金髪が風になびく。
アンリが手を掲げながら言う。
「皆の者、落ちこぼれ組はもう落ちこぼれではない! 彼ら彼女らを悪く言うことは金輪際してはならん!」
「そうだそうだ!」「もともとすごかった!」「落ちこぼれ組ばんざーい!」
観客たちがノリノリで讃える。
アンリはシェリルを見て言った。
「――何か勝者から言うことはあるかね?」
「はい! ――皆さん!」
シェリルが群衆を見渡して高らかに叫んだ。
騒いでいた群衆は、息をひそめてシェリルの次の言葉を待つ。
シェリルは一つ頷いて、広場全体に通る声で言った。僕を指さしつつ。
「今回、圧倒的な勝利をおさめられたのは、ひとえに偉大なる先生のおかげです! その方は人間のユート先生です!」
「ふむ。素晴らしい成果であるな。――ユート殿、こちらへ」
「あっ、はい」
指名されたので出ないわけにはいかなかった。
僕は周囲の視線が集まる居心地の悪さに緊張しつつ、なんとか広場の中を進んだ。
アンリとシェリルの傍まで来ると、アンリから促された。
――何を話そう?
と考えつつ、とりあえず気持ちの赴くままに話し出す。
「えーっと、皆さん始めまして。人間のユートです。シェリルを助けた縁で、この村を訪れることができました」
周囲を見渡すと、興味半分敵意半分な視線や表情が多かった。
――いやでも、注目が集まってる今がチャンスかな?
僕は言葉を続ける。
「見ての通り、僕の指導した落ちこぼれ組は落ちこぼれではなくなりました。というか、この世には神様に与えられた職業がある以上、どんな人でも役に立つ存在になれるんです」
えええっ、と観衆から驚きと疑念の混じった声が上がる。
「そうは言ってもなぁ」「ダメな奴はダメだろ」「でも落ちこぼれ組は優勝したぜ?」
がやがやとあちこちで議論が巻き起こった。
僕は、えへんっと一つ咳払いをする。
また観衆はシーンと静かになった。
「信じられない人もいるかもしれません。ですので明日から、自分は十分強いと思う弓師や狩人の方たちも指導します。僕が教えれば、さらなる力を手に入れられるでしょう」
「マジか!?」「もっと強くなれると?」「信じられないわ」
様々な声が沸き起こる。
僕はみんなの反応を泰然として受け止めた。
――まあ、前世のゲーム知識を活用すれば、まず間違いなくうまくいくから。
そうして、賛否両論が巻き起こりつつ武闘祭は幕を閉じた。
武闘祭のあとは広場で宴となった。
ピエールがオープンキッチンを出して、次々と料理を作っていく。
「やだ、なにあれ」「料理できたんだ?」「かっこいい」
女性のエルフたちがピエールを興味津々な目で見ている。
ピエールは戦いの時より真剣な表情で料理を作っていく。ステーキ肉に塩を振るときなんて、ちょっと格好つけてるような感じがした。
ピエールの隣では広い作業台を持ってきたダントンが、テーブルの上に短剣や弓などを並べた。彼が作った武器だ。
エルフたちが手に取って眺める。
「なかなかいいじゃないか」「よく切れそうだ」「この弓、強いな。いい出来だ」
「まだまだ修行中です、もっと頑張ります」
ダントンはかしこまって答えた。
――鍛冶師として順調に育っているようで何より。
その後も宴は続いていく。
酒を飲み、出来立ての料理を口に運ぶ。
いつしか僕はシェリルと並んで座っていた。
シェリルが微笑んで言う。
「ユート先生、ありがとうございました。今後は胸を張って生きていけます」
「いやいや、ちょっと育成を手伝っただけ。シェリルが頑張ったからだよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
シェリルはお酒で火照る頬を染めて、朗らかに笑った。
ちょっとドキッとする笑顔だった。
僕は視線を逸らして水を飲む。
――僕はイーリスを助けなきゃいけないんだ。浮気してる場合じゃない。
惑う心を抑えつつ、僕は宴を楽しんだのだった。




