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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第65話 落ちこぼれ組育成


 次の日の朝。

 フェアリーエルフの村の外れにて。

 少し木がまばらになった広場で、僕とシェリルは、落ちこぼれ組三人を呼び出していた。


「おはよう、みんな」


 ちなみに課金アイテム購入画面を開きっぱなしにしていた。

 ポイントの変動を調べるため。


「どうも……」「おはようっす!」「ほぁー、ねむーい」


 料理人ピエールに、鍛冶師のダントン。そして紅一点でテイマーのマリーが返事をする。

 やる気があるのはダントンだけだった。ピエールは落ち込み、マリーはあくびをしている。

 ダントンが前のめりになって言う。


「シェリルさんをめちゃくちゃ強くしたユートさんですね! 村で噂になってますっ!」


「え、そうなんだ? ――君たちも強くするから、安心して」


「どもっす」


「じゃあ、ダントンからしようか。……戦い方は、ハンマーが基本だね。盾がなくて両手持ちだから」


「はいっ」


「こんな感じで素振りしてみて」


 僕は両手で持った木の枝を肩へ乗せるように上げてから、振り下ろした。

 鍛冶師がハンマーを振るうモーションだ。


「こんな感じか? ――どりゃ!」


 体格の良いダントンが、気合いを入れて柄の長いハンマーを振り下ろした。

 ドパァンッと破裂音がして、地面に丸い穴が空く。


「おお、すごい。一回でできてる! その調子で繰り返して、ダントン」


「あざっす! こうっすね!」


 ダントンはブゥンと風を切るいい音をさせて何度もハンマーを素振りした。

 


 続いて僕はピエールを見る。

 心ここにあらずといった様子。

 どう説得しようか悩みつつ話しかける。


「ピエールは剣士になりたかった?」


「弓がうまくなれない以上、狩りで活躍出来る剣士がよかった」


「なるほど。でも安心して? 狩りに限定すれば、料理人は剣士より活躍出来るからね」


 ピエールは暗い瞳で僕を睨む。


「適当なことを言うな、人間」


「いや、本当だよ。剣の扱いにかけては剣士の方が、そりゃあうまいけど。ただ――」


「なんだ?」


「料理人は動物や魚の解体ができる。その知識やスキルを利用すれば、刃が通りやすい箇所を、つまりは弱点を狙えるということなんだ。狩り限定でね」


「……なるほど。言っていること一理あるな」


「人間や魔族との戦いで力を発揮したいというなら、剣士じゃないと無理だけど。村の役に立つために動物を狩りたいというなら、料理人の方が有用だよ」


「ほう……そんなことができるのか」


「今までだって『獲物のあの辺りを狙えれば……』みたいな感覚が起きることはない?」


「……言われてみれば、確かに。じゃあ、何をすればいい?」


「そうだね……料理人は、初期攻撃スキルが『斬る』で、初期補助スキルが『食材探知』なんだけど。斬るがすでにLv10になってるから、次の斜め切りを取るために、食材探知をLv5まで上げよう」


「何をすれば?」


「食材を探すんだ。森の中でもいいし、家の中でもいい。棚や倉庫を探して食材を見つける。Lv3になってるから、今までも探してみたりしたんじゃない?」


「確かに。何か食べる物を探したときはすぐに見つけたな」


「うん。食べ物を見つけるスキル。範囲探索系だから、鍛えれば索敵にも使えるようになるよ。戦場やダンジョンでは機能しないけどね。あくまで食べられる獲物を見つけるスキルだから」


 ちなみに魔物や魔族が『食材探知』を持っている場合、人間も見つけることが出来る。場合によっては要注意なスキルだった。



 ピエールが深く頷きながら言う。


「ふむ。むしろ剣士よりは役立ちそうだな」


「その通り。狩りを主体にするなら特にね」


「なるほど。――ではLv5になるまでやってみよう」


 ピエールは少しだけやる気を見せて、広場の端まで行った。目を細めて森の中を見ている。食材を探しているようだ。


「うん、よし」


 あの調子なら今日中にLv5になって『斜め切り』が取れるだろう。



 ――さて。

 僕は最後の一人に目を向けた。

 テイマーのマリー。

 暇だったのか、しゃがみ込んで小さな蟻の行列を見ていた。


 そばに行って僕もしゃがみ込む。


「マリー。蟻を愛でてるの?」


「こいつら全員滅亡する」


「えっ。なんかえぐいお告げだ」


「空から巨大な手が振ってきてーぎゃくさつー」


 マリーが蟻を潰そうとしたので手で防いだ。


「やめといてあげて」


「ぶふー」


 マリーは不満そうに頬を膨らませた。けど虐殺は素直にやめた。

 僕はマリーに尋ねる。



「やりたいことはないの?」


「ほあー。何もせずにだらだら生きて~、他者の命をもてあそびたい」


 うわ、マジでダメ人間、もといダメエルフだ。

 しかも穀潰しニートの女王蜂アザトースより思想がひどい。

 この子を強化して大丈夫かな? と一抹の不安を覚えつつも、説得を試みる。


「じゃあさ、使役した動物に狩りをさせたり守らせたり、あとは身の回りの手伝いなんかもさせたら、楽できると思わない?」

 

「おぉ~。だらだらする~」


「じゃあ、ちょっとだけ頑張ろう。そしたらあとは寝てても命令するだけで、自動的に強くなってくから」


「ほあー。やれと言われればやる-」


 相変わらずの気の抜けた返事だけど、少しだけ目は輝いていた。

 僕は頷いて立ち上がる。マリーも立たせる。


「じゃあテイマーの武器は杖か鞭だ。そして初期スキルは『叩く』と『撫でる』。この二つをLv5まで上げよう」


「叩くはわかるー。でも、撫でる?」


「うん。動物を撫でて友好関係を気付くんだ。犬でももふもふしてればレベルは上がるよ」


「蟻は?」


「インセクトテイマーになるなら中級からだね。最初は知能の高い犬や猫、ネズミや鳥、難しく言うと脊椎動物という背骨のある動物をテイムしよう」


「はふー、わかった」


 その後はテイマーの殴るモーションを演じて見せて、マリーに同じ動きを繰り返させた。

 素振りが出来るようになったら、木の幹を叩かせる。


 僕は三人を見守りながら、時々、指示を出した。

 貢献ポイントはまだ増えなかった。



 そして最後は実践。

 三人を連れて森の中に入って、ネズミや鹿を狩った。

 僕とシェリルがあとから着いていたので危ないことはなかった。


 鍛冶師ダントンは『殴打』がLv5になったので『振り下ろし』を取得出来た。

 これで補助スキルの『鍛冶』の成功率が上がり、取得経験値も増える。

 あとは短剣や包丁でも作っていけばレベルも上がっていくだろう。

 『鉱石選別』や『採掘』はまたそのうちでいいかな。


 料理人ピエールは『斬る』と『食料探知』がLv5になり、中級スキルの『解体』を取ることができた。『調理』も取れるはずなので、あとは自分で料理を作っていけばいい。

 

 テイマーのマリーは無事『叩く』をLv5にできた。あとは『撫でる』を上げるための動物が必要だったが、ネズミも鹿もお気に召さないらしい。


 結果、僕の頭の上にいたハニービーのミツコに目を留めた。今はマリーの華奢な両腕に抱かれてもふもふされている。

 傷つけてはいけないと念を押したが、ミツコは怯えるような震えを小刻みに続けていた。


 ――おかしいな。テイマーが生き物を撫でると、相手は心が癒されるはずなのに。

 テイマーとは思えない。正直、『鑑定』で見るまでは占い師か呪術師かと思っていた。


 とんでもない化け物を育てているのかも知れないと不安を感じつつも、貢献ポイントのため、ミツコには我慢してもらった。



 こんな感じで、三人を育てていった。

 彼らのスキルが育つにつれて、貢献ポイントも増えていった。


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