第63話 フェアリーエルフの村再訪
夕暮れ時の、山の麓。
山影の辺りは、もう真っ暗になっている。
僕はエルフの老夫婦が住む家へとたどり着いていた。
あばら家のドアをノックする。
「すみません。ちょっといいでしょうか?」
僕の問いかけに、家の中からいぶかしむ声がする。
「誰だ、こんな時間に? ――ったく」
ドアが開いて顔をのぞかせた老エルフの男性が、ぎょっと驚く。
「なんと! ……ユート殿ではないか」
「お久しぶりです。皆さんの村に用があってきました。入れますか?」
「ユート殿なら良いだろう。案内しよう」
年配の男性に連れられて、森の中を歩いた。
日が沈む頃、フェアリーエルフの村についた。
村のあちこちに明かりが灯り、ツリーハウスのある大木が照らし出されている。
そしてシェリルが僕を見つけて駆け寄ってきた。長い金髪が後ろへなびき、大きな胸が服を押し上げるように揺れた。
「ユート先生!」
「久しぶりだね、シェリル」
「はい、お久しぶりです――また会えて嬉しい――え?」
傍へ来たシェリルの視線が僕の頭に止まった。頭の上で帽子のように静かにしていたミツコを見て、しばらく固まる。
そして恐れわななきながら言った。
「えっ!? ――ゆ、ユート先生! 頭の上に魔物のハニービーが!」
「ああ、ごめん。紹介するね。この子はハニービーのミツコ。こっちはフェアリーエルフのシェリルだよ」
僕が紹介すると、ミツコはブブブッと羽根を鳴らした。
シェリルが目を丸くしつつ、それでも頷く。
「私はシェリルです。ミツコさん、よろしくお願いします」
シェリルが金髪を垂らして頭を下げると、ミツコもまた頭を下げた。
そしてシェリルが顔を上げると、僕を見て眩しそうに目を細めた。
「少し合わないうちに、なんだか強くなられましたね、先生」
「あー、うん。レベルも40になったし。これ付けて見てみて」
僕は『鑑定:人』が付いた指輪を渡した。
シェリルが指にはめて、僕を見る。青い瞳がどんどん広がっていく。
「――なっ! なんという強さですか! 攻撃力は1000越え、HPは2000越え。ベテランの壮士並みです!」
「あれ? そんなに?」
僕は自分を鑑定した。ステータスはこんな感じだった。
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名前:ユート(ユーティウス・プエル・コムス・ド・ラランティウム)
種族:人間 性別:男 年齢:15歳
職業:遊び人 Lv:40
筋力:A 敏捷:C 智慧:D 運:SS
HP:2118 MP:212
攻撃力:1074 防御力:447
スキル+12(SP13)
攻撃スキル:
下級:『突きLv10』『投擲Lv10』
中級:『マジックスライスLv30』『ラッキーショットLv15』
補助スキル:
下級:『みかわしステップLv15』『口笛Lv5』
中級:『ボックスハイドLv30』『ジャグリングLv10』『アクロバットLv10』『コミカルダンスLv10』
その他スキル:
『鑑定』『創造』『気配探知』『危険感知』『状態異常攻撃25%』『HP吸収』
『攻撃75%』『防御50%』『HP増加51%』『魔防25%』
『攻撃速度35%』『回避105%』『移動速度240%』『回復率50%』『魔力回復上昇25%』
『状態異常抵抗30%』『毒抵抗10%』『火抵抗5%』
『筋力+75』『敏捷+140』『智慧+100』『運+102』
『筋力比率上昇×5(200)』『敏捷比率上昇×2(80)』『運比率上昇×7(280)』
『即死25%』『2の倍数即死25%』『3の倍数即死25%』『5の倍数即死25%』
『毒攻撃:毎秒96ダメージ』『火攻撃+15』
装備:
『毒竜の蛇剣』『エルフの礼服』『疾風のマント』『鱗ベルト』『イダテンブーツ』
『力の腕輪』『第六感』『まごころチョーカー』『マジックバッグ(ポーチ)』
『ハーデスリング』『フォルトゥナリング』『ラクシュミリング』『アポロンリング』『イダテンリング』『ブラフマリング』『【鑑定】【状異抵】スピードリング』『【茫漠】バトルリング』『【運+19】【MP吸収】ハピネスリング』『ファイアリング』『命の指輪』
称号:下級ダンジョン踏破(土抵抗2%)
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すごい。『力の腕輪』と『アポロンリング』と『バトルリング』の効果で、筋力に一切振ってないのにAになってる。
運なんて801を超えてSS表記になっていた。
そりゃプラチナホーンが出るわけだ。
僕自身、驚きつつ照れて頭を掻く。
「まあ、頑張ったから。強くなれてよかったよ」
「さすがユート先生ですっ!」
シェリルは信頼する笑みで僕を称えた。
ますます恥ずかしくなったけど我慢した。
とりあえず、再会の挨拶が済んだところで僕は言う。
「それでね、シェリル。落ちこぼれ組を呼んでくれないかな?」
「はい、今すぐに!」
シェリルがすらりとした指を輪っかにして咥えた。鋭い指笛が村にこだまする。
その合図を受けて、ドタドタとフェアリーエルフが三人、羽根を揺らして駆けよってきた。
「なんでしょう?」「おや、この前の人間……」「ほぁー」
すらりとした長身の美青年エルフと、肩幅が広くてがっしりした青年エルフ、そして、口を半開きにして僕を見上げる美少女っぽいエルフが傍へ来た。
村では役に立たないごく潰しと思われているエルフの三人だった。
――前回は『鑑定』がなくて、何の職業かわからなかった。
でも今回はある。職がわかれば、正しく導けるはずだった。
MISOを十年プレイした僕なら。
僕は気さくな笑みと声で言う。
「やあ、久しぶり。突然だけど、君たちの職業を鑑定していいかな?」
「どうぞ、ご自由に」「できるものなら、やってみな」「はふぅ」
美青年は諦めた笑みを浮かべ、体格のいいエルフは挑発的に、女の子はやる気なさそうに答えた。
というか、最後のは返事じゃなくてただの吐息じゃないかと思った。
まあ、許可が取れたので『鑑定』で見ていく。
そして、僕自身驚いた。
「なっ! ――君は『料理人』だよ! だから前回見たとき、ナイフ捌きや動物の解体が上手かったんだ!」
「えっ! そんな……剣士だと思ってたのに……」
美青年はがっくりと肩を落とした。可哀想なぐらい凹んでいる。
僕も意外だった。
解体が上手いので、狩人か探索者じゃないかと思っていたけれど。
ちゃんと鑑定してよかった。間違った指導をするところだった。
「でも、料理人も悪くないよ? 剣士に匹敵するぐらい。僕の指導を受ければ、みんなが見る目を変えるぐらいの役立つ存在になれるから!」
「はぁ……はぃ」
青年は力なく答えた。
――いや、言ってることは本当なんだけど。
今日の所は励ましても言葉が届かなそうなので、次に移った。
続いて二人目を鑑定する。
エルフに似合わない体格の良さ。肩幅が広くてがっしりしている。
鑑定結果は意外だけれども、納得する結果だった。
「君は鍛冶師だね。エルフには珍しいんじゃないかな?」
「マジっすか。……なんだかエルフの暮らしが合わねぇなあ、とは思ってたぜ」
「ガンガン火を焚いて、金属を叩いていこう!」
「うすっ!」
さらに三人目を鑑定した。
「へぇ。君は魔獣使い《ビーストテイマー》だよ」
「ほへー、そうなんですかぁ」
なんか、自分の事なのにどこ吹く風で、気持ちのこもらない返答をされた。
ぼーっと遠くを見つめている。
――大丈夫かな、この子。
気を取り直して、僕は言う。
「僕は生まれた家柄が特殊だから、いろんな職業の育て方に詳しいんだ。だから明日から君たちを一人前になるまで指導させて欲しいんだ」
「ほんとですか! 嬉しいです!」「願ってもねぇ! この村じゃ鍛冶に詳しいエルフはいないだろうからよ」「どっちでも~」
美少女エルフがちょっとだけ心配だ。
僕はシェリルを見る。
シェリルは目を潤ませて僕を見上げていた。
「さすがユート先生……約束を忘れずにいてくださったのですね」
「まあね。乗り掛かった舟だから」
――さすがに、アイテムボックス拡張のために貢献ポイントを稼ぎに来ました! とは、口が裂けても言えなかった。
人として最低すぎるので、さすがに自重する。
その後は、明日の予定を打ち合わせして、僕はシェリルの家へと案内された。
母娘と再会して、ささやかな歓迎を受けた。




