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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第57話 ソフィーの未練


 午前中の森の中。

 僕とソフィーは森の中で魔物や動物を狩った。


 時々、薬草を採集しつつ。

 ソフィーは薬師でもあるので『薬草探知』と『薬草採集』を持っていたからだ。

 薬師は薬草を採集するだけで経験値が手に入る。


 ただ、森の魔物は危険なので、一人で採集に来ることは出来ない。まだ。



 あとは一度、イノシシの集団と出会った。うり坊をたくさん連れていた。


 このときはさすがに僕も戦った。

 毒竜の蛇剣を振るい、次々と即死を発動させてイノシシの数を減らす。


 ソフィーも戦ったけれど、焦りすぎたのか一回しか幽霊攻撃が発動しなかった。

 ただ全然違う方向に飛んだ幽霊は、カーブを描いてうり坊を仕留めた。

 ――さすが必中攻撃。強い。


 全部倒すとソフィーが華奢な肩で息を切らせながら言った。


「すごいです、お兄ちゃん……こんなにいっぺんに倒しちゃうなんて」


「毒竜の蛇剣と指輪のおかげだね」


 僕は剣と指輪を店ながら言った。

 指にゴテゴテとたくさんの指輪が付いているので、少し恥ずかしい。

 ソフィーが僕の指輪をじっと見る。


「すごいです。たくさん効果が着いた指輪ばかり……あ、クラリッサさんの指輪」


「うん、さっそく使ってる」


 僕はハピネスリングを見た。

 これのおかげで運が601を超えて、運がSになった。

 

「ドロップが格段に良くなったよ――ほら」


 僕はアイテムボックスに入ったイノシシから出た魔石を取り出した。

 ソフィーが驚く。


「えっ、この森に魔石持ちのモンスターがいるんですか!?」


「僕が倒したから出た可能性があるね。普通は出ないと思うよ」


 ソフィーが戦いの後を見渡して言う。


「……ですよね。普通のイノシシですもんね……不思議です」


「まあ僕の運が高くてドロップがいいというのは内緒で」


「はいっ、ユートお兄ちゃん! 誰にも言いません!」



 その後も狩り続けて。

 夕方になる頃には、念願の『怨霊呪縛ファントムバインド』を取得できた。

 なぜ念願なのかと言えば。


 ソフィーが今日最後の魔物と戦う。

 口笛で呼び寄せた長角鹿に対してファントムバインドを発動。

 鹿の足下からどす黒いオーラとともに怨嗟の表情をした亡霊が何体も融合しながら、鹿に絡みつく。妬みや恨みを呟いて呻く。


 鹿が動けなくなったところで、ゴーストバレットで狙い撃つ。

 バシババシッと連続で幽霊が当たり、鹿は苦悶の声を上げて地面に倒れた。


 呪術師は足止めをして抵抗を下げて遠距離攻撃で始末することができる。

 『不調領域ディスオーダー』でも抵抗を下げるため、ファントムバインドはボスモンスターにも効く。

 もう一人でも危なげなく狩りができるようになった。

 これが念願だった理由だった。



 僕は声を上げて褒める。


「よくやった、ソフィー! これで一人でも狩りが出来るよ!」


「……めちゃくちゃ不気味なんですけどぉ……今夜、夢に見そう……うぅぅ」


「うん、慣れるしかないねっ!」


「ユートお兄ちゃん、そればっかり!」


 ソフィーは涙目になって、ぷいっと横を向いた。

 でも視線を逸らしたまま「ありがと、お兄ちゃん」と呟いた。


「さあ、目的のスキルも取れたし、今日は帰ろっか」


「はい、お兄ちゃん」


 僕らは森の中を歩いて、村へ向かった。



 森を抜ける頃。

 西の空に夕日が輝いている。

 草原や、村の周囲にある畑が赤く染まっている。


 俯きながら歩くソフィーが、ぽつりと言う。


「ユートお兄ちゃん――」


「ん? なんだい?」


「強くしてくれてありがとうございます。これで怖いけど怖くなりました」


「呪術師の職業が?」


「うん、はい……。なんでみんなを苦しめちゃう職業なんだろうって、すごく悩んでたので……」


「まあ、そうだよね。知らないと怖いもんね。特に人は知らないものを恐れがちだし」


 呪術師は嫌われていて迫害されているせいか、剣士や魔術師と違って職業のスキルなどが解明されていなかった。

 そのせいで余計、意味のわからない怖い職業と見なされてしまっていた。



「でも、まだ未練があったりします」


「未練?」


 ソフィーが顔を上げて空を見た。黒髪がさらっと流れる。


「どうしてお母さんと同じ聖女じゃなかったのかなーって。聖女ならみんなに愛されたのにって」


「え――っ!」


 僕は息を飲んだ。

 ――聖女!? 回復職を二つマスターすると開放される上級職の聖女!?

 母が聖女って、まさか?


「ソフィーのお母さんて、元Sランク冒険者のアリシアさん? ゲイルさんたちと一緒に冒険してた」


「はい、そうです。おじさんたちは昔からよくしてくれました」


 ゲイルたちがやたらとソフィーを大事にするとは思ってたけど。まさかそんな理由があったなんて。

 ていうか、MISOの公式設定資料集にも載っていなかった情報だ。

 

「お父さんは?」


「よくわからないです。でもお母さんと一緒に旅した騎士様だって、噂で聞きました」


 ――なっ!

 まさか聖騎士と結ばれていたなんて。そして子供を授かっていただなんて。


 僕の知らないキャラ情報だ。

 聖女と聖騎士、そして仲間の英雄たちに後日談があったなんて、思いもよらなかった。

 純愛を貫いたけど、結ばれることはなかったので、悲恋かと思ってたのに。


 ゲームではデジタル的に処理されてしまったNPC達も、現実世界ではちゃんと暖かい血が流れているんだ。

 みんな生きているんだ。


 どうも前世の知識が戻ってから、この世界をゲームとして捉えがちになっていたけど。

 生きた人たちがそれぞれの物語を紡ぎ、織りなしていく現実なんだと改めて思わされた。



 そんなことを考えていると、ソフィーが悲しげな声で言った。


「なんで聖女から呪術師が生まれちゃったのかなぁ。私が悪い子だから呪術師なのか、それともお母さんの子じゃないから聖女じゃないのかなぁ……」


「それは違うよ」


「え?」


「ソフィーはちゃんとお母さんの血を引いてるよ。聖女は回復職を二つマスターするとなれる職業なんだ。だからお母さんは僧侶と薬師の二つを持って生まれたんだと思う。そしてソフィーも同じ二職持ちで片方は薬師。お母さんの子で間違いないよ」


「お兄ちゃん……っ!」


 ソフィーが感極まった声で泣いた。頬を伝う涙が夕日に光る。

 僕にしがみついてきて泣く。

 僕は頭を撫でようとしてミツコがいるのに気づき、背中をポンポンと叩いた。

 ミツコもソフィーを慰めるように前足で頭を撫でていた。


「ソフィーが望むなら、薬師をマスターしたあと神官か僧侶に転職して、その後、聖女になればいい。そういう道だってあるよ」


「うん……はい……っ」


 ソフィーは僕の胸に頬をこすりつけるようにして泣く。

 頭の上に乗ったミツコが顔の前に来るので、ちょっとのけぞる。



 僕は紙とペンをアイテムボックスから取り出して言う。


「じゃあ聖女になれる方法も書いとくね。これを読めば、魔女になるか聖女になるか好きに選べるから」


「ありがとうございます、ユートお兄ちゃんっ」


 抱きつかれて歩きづらい中、僕は紙にスキル上げや転職の仕方を書いていった。

 ――と。


 なんだか村の方が騒がしくなっていることに気付いた。


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