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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第58話 這いよる白痴アザトース


 日が沈んだ夕暮れ。

 薄闇の中、村では騒動が起きていた。

 辺りを見回しながら、ソフィーと寄り添って通りを歩く。


「何かあったのかな?」


「なんでしょう?」


 村の中心へと入っていくと、ミツバチたちが大勢いた。

 そして板に乗せられて引きずられている、横に大きいミツバチがいた。

 アザトースだ。まるまると太っている。


『やだぁぁぁ! 自立はいやぁぁぁ! 私は虫よぉ! 生まれながらの寄生虫なのよぉぉぉ!』


 アザトースの騒ぐ声に村人たちも集まってきていた。


「なんだあれ」「なんかヤバいのが来たぞ」「あれも保護するのか……?」


 村人たちは驚き途惑っている。

 僕は人垣をかき分けて前に出た。



「アザトース。もう諦めなよ。頑張って巣作りするんだ」


『来たわね、ユート! この悪魔! 私を引きずり出してどうする気!』


「どうもこうも、クイーンがそう決めただけ。女王なんだから、働き蜂がみんなやってくれるはずでしょ?」


 僕は周りを飛ぶミツバチたちを見た。

 村まで引きずってくるのが大変だったのか、何匹かのミツバチたちはコップでジュースを飲んで休んでいた。


『陰謀だわ! 私に王位を継がせない気ね!』


『いや、巣立った時点で一国一城の主になってるはず。誰も奪わないよ』



 そのとき、騒ぎを聞きつけたらしく、もう一人の女王蜂ヴィクトリアが飛んできた。

 透明な羽根が夕日を浴びてキラキラ輝く。


 そして村人たちに頭を下げ始めた。


『姉が大騒ぎしてすみません。すぐに用意していただいた家に運びますので』


『妹! いたのね! 一緒に住んで、私を養うがいいわ!』


『えっ』


 途惑うヴィクトリアに僕は言う。


「ヴィクトリア。用意した家は、村の東側と西側で離れてるから安心して」


『あ、はい。ありがとうございます』


『ちょっと! 勝手に決めないで! 私の自堕落ライフを潰さないで!』


「ヴィクトリア。家の場所に案内するから、引っ張ってきて」

 

『はい、ユートさん』


 ヴィクトリアが働き蜂に指示を出す。働き蜂たちが板に繋いだ紐を引っ張り始める。

 僕は歩きながら集まった村人たちへ言った。


「みなさん、気にしないでください。こいつを家に放り込んだら、あとは働き蜂たちがやってくれますから」


「それもそうか」「ハチミツが増えるってことよね?」「でも大丈夫かぁ?」


 村人たちは半信半疑ながら、各自の家々へと別れていった。



 僕もソフィーと別れた。


「じゃあ、ソフィー。今日はここまでってことで」


「今日はありがとございました、ユートお兄ちゃん」


 ソフィーはふわっと黒髪を広げてお辞儀すると、道具屋へ戻っていった。


 その後、村の西にある一軒家へアザトース一行を案内した。



 西にある二階建ての一軒家。

 一階が3部屋、二階が2部屋。けっこう広い家だった。

 家具はほぼない。ベッドが一つあるだけだった。


 家の中に運び込まれたアザトースが少し驚く。


『お? 壁や天井がある。一から作らなくていいんだ?』


「で、どこの部屋を女王の部屋にすれば……ヴィクトリアはどういう部屋割りをしてるの?」


 僕が尋ねると、隣にいるヴィクトリアは小首をかしげつつ考えながら言った。


『私は二階を私と働き蜂と子供たちの部屋、一階をハチミツや花粉を貯める部屋にしようかと思っています』

 

「二階なんだ。出にくくない?」


『働き蜂たちは窓から出入りしますし。人間さんたちとハチミツやローヤルゼリーを取引するなら、持ち出しやすい一階がいいかなと思いまして』


「なるほど。考えてるね――じゃあ、アザトースも二階?」


『上がるのダルい。ここでいいわ』


 アザトースは板から降りると、芋虫のように這いずりながらベッドに向かった。

 放置されていたベッドに上がると、そのまま寝転がる。

 ミツバチとは思えない、名状しがたき怠惰さを感じる。


『あ~、疲れた。誰か、ローヤルゼリー持ってきて』


 アザトースはベッドの上から指示を出した。

 働き蜂が羽根を鳴らして飛び、アザトースに食事を運んだ。



 僕は呆れながら言う。


「少しは運動しないと、ますます太るよ」


『外骨格だから太りませーん! 残念でしたぁ~!』


 ぎゃははと笑いながらベッドの上で転がるアザトース。

 僕はイラッとした。


「うっざ」


 というか、太らないというのは本当だろうか。

 すでに横に広がってるんだけど。


 僕の横ではヴィクトリアが小さなため息を漏らしていた。

 なんだか可哀想に思えた。巣を離れても、こんな姉の面倒を見なきゃいけないなんて。

 一応、ダメ元で釘を刺しておく。


「少しは働けよ、アザトース」


「残念! 私は穀潰し界のエリートよ! 気高き誇りと揺るぎない信念でもって働かないわ!」


「後ろに向かって全力過ぎる! ――まあいいや、ヴィクトリア。とりあえず帰ろうか」


『はい、ユートさん。ありがとうございました』


『今度から来るときはお土産持ってきてね! あ、当然甘い物で!』


 ウザい別れの言葉を背中で聞きつつ、僕とヴィクトリアは家を出た。


誤字報告ありがとうございます。

わりと推敲しているつもりでしたが「フェアリーエルフ」を「フェアリーウルフ」と書いていたようで、自分でも笑ってしまいました。それから「妖精狼」もアイデアとしては悪くないな? と思ってしまいました。別作品で使うかも。

今後とも、よろしくお願いします。

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