第54話 涙の指輪狩り
ハニービーとの取引を終えた僕は、ネズミダンジョンの傍まで来た。
最後の指輪狩りをするため。
しかし空を見上げると、太陽はだいぶ西に傾いていた。まだ明るいけれども。
今から狩ると、村へ帰るのはだいぶ遅くなるかもしれない。
ミツバチたちが村へ来るので、夕方には戻らないといけないけれど……。
――正直、狩りたい。
指輪狩りをして最後のユニーク『ハピネスリング』を手に入れたい!
それにもう、ダンジョンの前まで来たら、体がうずいて仕方なかった。
「ええい! 行ってしまえ~! ひゃっはー!」
僕はダンジョンの入り口へと駆けこんだ。
頭の上でミツコが、ブブブッ!? と驚いたように羽音を鳴らした。
地下一階の大広間。
僕は狂気じみた笑みを浮かべながらリングラットを狩っていた。
「最高にブチ上がるぜ~っ!」
人格まで変わったような勢いで、蛇剣を振るってネズミを狩っていく。
運の表記がAになっているため、自分でも驚くほどノーマルレアやユニークの指輪がゴロゴロ落ちた。
ノーマルも落ちるけれど、それは大きい袋にまとめて入れていた。インゴットにするため。
これはこれで強化素材となるため、ありがたかった。
「でも……」
落ちるユニークと言えば。
バトルリング、バトルリング、マジカルリング、バトルリング。
『茫漠』がついたバトルリングまで拾った。
しかし――こんなにユニーク指輪が出てるのに『ハピネスリング』だけが落ちないっ!
「なんでだよっ!」
僕は泣きそうになりながら、それでも大広間を周回し続けた。
――これが物欲センサーなのだろう。
ゲームだけじゃなく、現実にまで反映されるとは。
世の中の不条理に涙しつつ、ネズミを狩り続けた。
そんな時だった。
突然、金色の光が僕へ向かって飛んできた。
――ユニークレアだ!
僕はわくわくしつつアイテムボックスを見た。
『アポロンリング 筋力+50 筋力比率上昇×3 攻撃50% スキルレベル+2』
立ち止まった僕は思わず、ふふっと笑ってしまう。
「バトルリングの親玉が出た」
今日はバトルリングの日なのかもしれない。
少し悩んだ結果、運+17の分厚いゴールドリングを外して、アポロンリングを装備した。
「さあ、まだまだ狩るぞ!」
僕は気合を入れて、また指輪狩りに戻った。
◇ ◇ ◇
西の空が赤く染まる夕暮れ時。
僕は最果て村へと向かって歩いていた。
収穫は良かったけれど悪かったため、落ち込んでいた。
今日のユニークレアはアポロンリングだけ。
あの後でたユニークは、バトルリングとスピードリングだけだった。
「残念」
気落ちしつつ、とぼとぼと歩を進めた。
慰めるように頭の上でミツコが、ブブッと羽根を鳴らした。
「ありがとう」
その優しさがなんだか嬉しい。
少しだけ気を持ち直して村へ向かった。
夕日が西の地平線へ沈む頃、僕は村の入り口へ着いていた。
ソフィーが黒髪を揺らして通りを駆けてくる。
「おかえりなさい、ユートお兄ちゃんっ! ――えっ!?」
傍へ来たソフィーが僕の頭の上を見て固まった。
僕の頭にはハニービーのミツコが帽子のように乗っている。
一応、弁解しておく。
「この子はハニービーのミツコ。今日からこの村に住むことになったんだ」
ミツコは頭の上から飛びあがると、ソフィーの胸の中に飛び込んだ。
ソフィーは驚きながらも、ミツコをぎゅっと抱きしめた。
「あはっ、かわいい!」
思わず頬擦りをして微笑む。
確かにハニービーは丸みがあって、首回りや手足にふわふわの毛があって、ぬいぐるみみたいで可愛かった。
同時にソフィーの仕草も可愛かった。
それからオイゲンのいる鍛冶屋へ向かった。
なぜかソフィーも付いてきた。
鍛冶場でハンマーを振るうオイゲンに会う。
「おう! ユートにソフィー嬢ちゃんか」
「こんばんわ」「こんばんはです」
気さくな挨拶を交わしあった。
そして僕は早速、仕事を依頼した。
「すみません、指輪からインゴットを作ってもらえますか? ミスリルは鋼糸で」
「インゴット製作は3万、鋼糸は10万だな」
僕は3つの大きな袋をアイテムボックスから取り出して作業台に置いた。
それぞれノーマルのアイアンリング、シルバーリング、ミスリルリングが入っている袋だ。
オイゲンが袋の中を確かめながら言う。
「まあ、この量だとインゴット四つで12万、ミスリル鋼糸は10万。合わせて22万ゴートだ」
「ではお願いします。それからブラッディベアを倒したので、赤熊の毛皮と赤魔結晶が手に入りました。それでこれとこれの強化をお願いします。鉄のインゴットを使用して」
僕はマジックボックスから『流血の半月刀』と『狩人の皮鎧』、そして『赤熊の毛皮』と『赤魔結晶』を出した。
オイゲンが目を丸くして驚く。
「ブラッディベアを倒したのか。あんまり危ないことするなよ?」
「ありがとうございます。気を付けます。それでいくらぐらいになりますか?」
「素材があるから18万、合計40万ゴートだな」
「じゃあ、これで――いつ頃、できますか?」
大金貨2枚を払いながら尋ねると、オイゲンは言った。
「明後日までにはできてるよ」
「それでは、よろしくお願いします」
僕は頭を下げて鍛冶場を出た。
村の中心へと戻って歩いていると、途中でソフィーが言った。
「ものすごい数の指輪でしたね……」
「うん、欲しい指輪があったんだけど。結局手に入らなくてね」
「なんて指輪ですか?」
「運が上がるハピネスリングって言うんだ」
「えっ!?」
「ん? どうしたの?」
「その指輪なら、クラリッサさんが持ってましたよ!」
「マジで!?」
クラリッサが持っているハピネスリングは、運+19とMP吸収付きらしかった。
――吸収系は上級ダンジョンでしか落ちない。
めちゃくちゃレアな効果付きの指輪だ。
僕は釣り合うアイテムはあるだろうかと思案しつつ、クラリッサのいる道具屋へ向かった。
ブクマと評価ありがとうございます! おかげで昨日
[日間]総合 - 連載中85 位
[日間]ハイファンタジー〔ファンタジー〕 - すべて73 位
になれたみたいです。多くの人に読んでもらえることができてとても嬉しいです。




