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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第50話 熊退治!


 午前中の森の中。

 僕はハニービーに案内されて、生い茂る木々の下を歩いていた。

 ただ通りやすい道を選んでくれているのか、木々を掻き分ける必要はなかった。


 危険感知が反応する。

 透明な蜘蛛の糸が、木漏れ日を浴びてキラキラ光っていた。

 ジャイアントスパイダーもフォレストスパイダーも生態は同じで、木々の間に蜘蛛の糸を網のように張って、獲物を待ち構える。

 だいたい近くの木の中に隠れて、網の端の糸に足をかけている。獲物がかかると振動で気づき、素早く襲いかかる。


 僕は危険感知や気配探知の反応がある木の上を注意しながら歩いた。


「――いた」



 僕は毒竜の蛇剣を構える。

 頭の上に乗るハニービーが必死と頭にしがみついてきた。少し震えているので怖がっているらしい。


 枝や蜘蛛の糸が邪魔だなと思いつつ、剣を振るう。

 ビュウッと風を切って刃先が伸びた。


 ザンッ! と鋭い音がしたものの、木の枝に弾かれて、蜘蛛の足を何本か切り落としただけだった。

 しかし、ドォンと不気味な音とともに、ドクロの顔が浮かぶエフェクトが発生。

 蜘蛛は地面に落ちて動かなくなった。


「よし。楽勝だね」


 僕の言葉に、ブブブッと驚いたように羽音を鳴らすハニービー。ちょっと可愛い。

 蜘蛛の体が飛んできてアイテムボックスに入った。

 確認すると、糸の束のアイコンが表示されていた。

 

「普通のスパイダーシルクかぁ、まあいいか」


 あとクモの肉や外殻が素材として入っている。食べられるのだろうか? ちょっと不気味だった。

 ハニービーがブブッと何か言いたげに羽根を鳴らす。


「ああ、うん。じゃあ、次に行こう」


 またハニービーは羽音を鳴らし、前足で方向を示す。

 僕は指示通りに森を歩き始めた。



 しばらくは蜘蛛を倒しながら歩いた。

 結構な数がいた。十匹は倒しただろうか。

 ついでに出会った鹿も倒した。角が板のように広がったヘラジカ。巨体だった。


 そういやゲイルが鹿肉が食べたいと言っていたことを思いだした。

 これなら大量に食べられそうだ。


 そしてどんどん森の奥へ向かって歩いて行く。南東の方角。

 葉で覆われた景色の向こうに山脈の端が見えてきた。


 そのとき、ピリッと後頭部から背筋に電流が流れた。

 なにか危険な予感。


「なにかいる?」


 僕の呟きに、ハニービーはブブッ? と疑問形で返してきた。

 ハニービーは蜘蛛の居場所しか知らないので、つまり蜘蛛以外の危険だ。



 今は『消滅』が発動していない。装備に付いた『茫漠』の効果だけだ。

 足音を立てないよう、慎重に歩く。

 危険な反応が大きすぎておぼろげな方向しかわからない。


 ――と。

 バキバキッ! と木々の折れる音が響いた。

 

 赤黒い毛に覆われた体高3メートルぐらいの熊がいた。毛が錆びた鉄のような光沢を放っている。体高で3メートルだから、立ち上がったら4メートル以上はありそうだ。

 返り血を浴びたような黒い体毛に、僕はすぐブラッディベアだとすぐにわかった。


--------------------

種族名:ブラッディーベア Lv55

攻撃力880 防御力600

HP1200 MP80

スキル:『豪腕』『切り裂く』『噛み付く』『唐竹割り』『乱切り突進』

--------------------

 鑑定で確認してもその通り。

 

 かなり強い。この森にはいないはずの魔物だ。

 なんでこんなところに?


 特にスキル『豪腕』が強い。一分ほど筋力が5倍になる。

 その間、HPも攻撃力も防御力も跳ね上がる。

 しかも豪腕発動中に、爪の斬撃を周囲に発動しながら突進してくる『乱切り突進』されると多段ダメージが入って、冒険者はだいたい死ぬ。


 防御も高くてダメージが通らないけど、即死がある僕には関係ない。

 ……Lv55だと5の倍数だから、即死50%か。2~3回は攻撃したい。

 先制攻撃と、気付かれてからの次の攻撃を確実に当てて即死を発動させよう。



 僕は熊を回り込むように迂回すると、背後から忍び寄った。

 蛇剣を振りかぶって背後から袈裟斬りにする。

 パシンッと乾いた音がして毛皮に阻まれた。即死は発動しない!


「があっ?」


 熊が不思議そうな声を出して振り返った。

 僕を見るなり目を赤く輝かせる。


「ガァッ!」


 鋭い牙の並ぶ大きな口を開けて駆け寄ってきた。

 ――って、早い!


 僕は蛇剣を真一文字に横へ振り抜く。

 シャララ――と刀身が鳴って、もう目の前まで来ていた熊の顔に当たった。

 ドンッとドクロのエフェクトが発動して熊が突進しながら倒れた。

 僕は横に飛んだ。巨体をぎりぎりで避ける。


「あっぶな」


 倒れた熊が素材となって飛んでくる。

 アイテムボックスを確認すると、熊の毛皮と肉、肝や胆のう、牙のほかに赤い魔結晶が入っていた。


 ブッ、ブブッとハニービーが羽音で鳴く。大変でしたね、とでも言いたげに。


「即死があっても強い敵は油断出来ないね」


 ぶんっぶんっと頷くように羽音が鳴った。

 それからまたハニービーの案内の元、蜘蛛退治に戻った。


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