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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第5話 亡霊の館

本日2話目。


 午後の日差しが降る中、僕は死の森を歩いていた。

 途中、何度か魔物とすれ違ったけど『ボックスハイド(透明)』を発動している僕はタゲられることはなかった。


 そして森が開けて、廃墟のような屋敷が現れる。

 二階建ての横に長い屋敷。ただ窓はひび割れて、屋根にも穴が空いていた。

 別名『亡霊の館』。ここには下級と中級のアンデッドが生息していた。



 僕はボックスハイドを切らさないように注意しつつ、扉を開けて館の中に入った。

 入ってすぐはエントランス。吹き抜けの高い天井からボロボロのシャンデリアが下がり、正面には二階へと続く幅の広い階段があった。

 床は埃っぽく、天井の隅には蜘蛛の巣が張っていた。


「んん?」


 僕は周囲を見渡した。前世で見慣れた館の内部。

 でも館にいるはずのアンデッドが見当たらない。

 

 ここには、とある理由から何度も来たので、マップもモンスター出現場所も覚えていた。

 なぜ何度も来たかと言えば、ここにだけ出現するモンスターがいたからだ。

 それは下級の骸骨スケルトンと幽霊ゴースト。ただし、執事服を着たスケルトンとメイド服を着たゴーストだった。


 魔物使い(モンスターテイマー)や死霊術師ネクロマンサーは、その珍しいスケルトンをゲットしたがった。

 だからクランメンバーに頼まれて、何度もこの館へ足を運んだのだった。

 ちなみにモンスターは誰でも『テイムブック』というマジックアイテムに閉じ込めることができて、MISOではそれを他プレイヤーに売ることもできた。

 閉じ込めたモンスターによっては数百万から数千万ゴートになるので、ちょっとした小遣い稼ぎになったのだった。



「でも……いない」


 気配探知のスキルは無いけれど、それでも魔物がいないことはよくわかった。

 僕は首をかしげながら、まずは二階へ上がった。

 左端の部屋と、右の真ん中にあるボス部屋に宝箱があるはずだった。


「うーん。廊下にはゴーストが出たはずなんだけど」


 不思議に思いながら、左端の部屋へ入る。

 おもちゃやぬいぐるみのある子供部屋。埃っぽくて天井には蜘蛛の巣がある。


 子供部屋では子供のゾンビと呪われた人形が襲い掛かって来る、はずなんだけど。

 警戒しながら部屋を探ったけれどモンスターは現れなかった。

 ただ、宝箱もなかった。正確には宝箱の蓋が開けられていて、中には何もなかった。


「ここに籠手の『小さな守り』があったはずなんだけど」


 『小さな守り』は一日一回、攻撃を防ぐバリアを張る装備だった。中盤まではボス戦などで使える装備。

 でも宝箱は開けられている。ゲームでは時間がたてば宝箱は復活したけれど、現実世界では違うのかも知れない。


 ――ひょっとしたら、すでにどこかの冒険者が来てモンスターを倒して宝箱をあさった後なのかも知れない。

 この世界では時間経過しても復活しないのか。



 部屋を出て右へと向かう。

 ボス部屋の前まで来て、用心しながら鍵穴を覗く。

 でもボス亡霊で中級モンスターの首無し騎士デュラハンは見当たらなかった。


「やっぱり誰かが来た後かぁ」


 残念に思いつつ、僕は一階へ戻った。

 ――もし、目的の武器まで回収されていたら、今後の成長に大幅な修正が必要だった。

 賢者までの道のりが遠くなる。


 僕は憂鬱になりながら食堂へ入った。

 その奥にある厨房へと向かう。


 厨房には地下へと降りる階段があった。

 地下は食料庫になっている。



 僕は階段を降りて地下一階の食料庫へ入った。

 がらーんとした広い部屋。少しほこりっぽい。しかし記憶とは違っていた。

 ここは積み上がった木箱が迷路を作っていたはずだった。でも今は倉庫の端まで見える。空いた木箱がいくつか転がっているだけ。


 木箱まで冒険者が持って行ったのだろうかと、不思議に思いながら奥へと向かう。

 そして食料庫奥の隅まできた。


 僕はしゃがみ込んで床を探る。

 石畳に四角い切れ目があり、よく見れば引き出すタイプの取っ手もあった。

 取っ手を引くと床が持ち上がる。

 その下には階段が続いていた。


 ――地下二階へと続く隠し階段。

 そして僕の目的の武器がある。


 真っ暗な階段に足を踏み込むと、壁にぼぉーっと魔法の灯りがともった。

 ――どうか、ここにある宝は盗られていませんように。



 僕は祈りながら地下二階に降り立った。

 そこは床も壁も天井も石造りの迷宮。

 もっと言えば地下墳墓だった。


 床の上には無数の蛇が張っている。

 まるでインディ・ジョーンズになった気分だった。


 カラフルな縞々をした蛇を刺激しないように、抜き足差し足で慎重に歩いて行く。

 目的は墳墓の一番奥にある石棺。


 奥に行くにつれて床を這う蛇の数が増えていく。床が見える場所が減っていく。

 もし蛇を踏んでタゲを取ってしまったら、その瞬間、ボックスハイドの透明が切れて一斉に襲われるはずだった。


 僕は額に汗を掻きつつ、さらに慎重に歩いた。

 そして一番奥の部屋に来た。

 部屋の中央に白い石棺が鎮座している。


 石棺の傍まで行き、両手に力を込めて石棺の蓋をずらした。

 ゴゴゴッと鈍い音を響かせて、蓋がずれていく。



 ゴトンッと音を立てて蓋が床に落ちた。

 無数の蛇が一斉に振り向く。

 しかし僕は見えなかったようで、数秒後にまた床を這い始めた。


 内心で、ふうっと吐息を吐きつつ、石棺の中を見る。

 黒い僧衣を着た骸骨が横たわっている。

 その胸の辺りに、禍々しい黒緑色をしたナイフが置かれていた。刃渡りは20センチほど。刀身が不気味に波打っている。


 だけど呪われたアイテムじゃない。

 これは『毒蛇のナイフ』という武器で攻撃力は+24、追加効果で敵に毒状態を確率で付与する。

 運キャラは筋力が無いので、状態異常マシマシで敵を倒す必要があった。


 しかもこのナイフは毒ダメージ計算がおかしかった。

 通常10~30秒に一度1~10ダメージなのに、このナイフは秒間48ダメージも与える。 

 今の僕には必須装備と言えた。



 僕は毒蛇のナイフを手に取り、今持っていたサイコロナイフはアイテムボックスへしまう。


「他の人に取られてなくて良かった……だいぶ強くなれた」


 そして石棺の部屋を出ようとした。



「ん?」


 その時、骸骨の腕に装備された腕輪が目にとまった。

 ――これは『力の腕輪』では?

 筋力が2倍になる装備。ゲームではなかったのに……いや、そうか!


 ゲームでは石棺を調べて毒蛇のナイフを取得した後、もう一度調べることはしてなかった。

 きっと、石棺をしつこく何度も調べていれば手に入ったかもしれないと思った。


 とりあえず、石棺まで戻って腕輪を手に取った。

 手首に装備する。これで筋力が二倍の16になったはず。微々たる数値だけど。

 でも運キャラは運以外のステータスは装備で上げなくてはいけない。

 ありがたい装備だった。



 それから僕は部屋を出た。

 帰り道も蛇を踏まないように注意しながら戻っていった。


ブクマありがとうございます!

嬉しいので夜にもう一話更新します。

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