第46話 これからのことと、ざまぁの始まり(エピローグ)
本日3話目。
村の夜。
夕食を終えた僕は宿屋の部屋にいた。
今日はいろいろ頑張ったので、200ゴートでお湯を用意してもらって体を拭いていた。
温かいお湯とはいっても、拭いた後は肌寒くなる。
急いで服を着ようとして、はたと動きを止めた。
「ていうか、着替えがない……」
今まで大変だったので、ずっと着た切り雀だった。
――明日、道具屋へ行こう。
古着で良いから着替えを手に入れよう。
ついでに流血の半月刀なども売ってしまおう。
呪術師のことでいろいろあって忘れていた。
僕はシャツとズボンを履くと、ベッドに座った。
そして気になっていたことを確かめるため、指輪を出した。
ステータス画面を開きながら、左手の指に指輪をはめていく。
――そう。
MISOでは指輪は8個までだったけれど、ここは現実。
リングの細い指輪なら、二個三個装備できるのではないかと考えた。
つけるだけなら簡単だ。重要なのはちゃんと効果が反映されるかどうかだった。
ていうかLvが39にもなっていた。
バカが考えたようなモンスターを倒したから、馬鹿みたいに経験値が入ったようだ。
気を取り直して『筋力+15』のウィンドリングを装備する。
するとHPが30増えた。風攻撃と風抵抗も反映されている。
「実験は成功だ!」
僕は小躍りして喜んだ。
――これで個数を限定しなくても指輪が装備できる!
7個まで固定して、残りの一個を状況に応じて付け替えるということをしなくてよくなった。
もちろん、物理的に不可能な場合もある。
例えば『ハーデスリング』はドクロの飾りが大きかった。
第二関節と第三関節の間が、ドクロで全部埋まってしまっている。
かといって、第一関節と第二関節の間まで装備すると、剣が持てなくなる。
持てるけど、扱いにくくなるというか。
握力をしっかり反映させるためにも、第二関節と第三関節の間だけにした方がいいと思った。
その後は指輪を選んだり、どの指にはめるか組み合わせを考えたりして過ごした。
指輪の組み合わせが終わると、僕はベッドに寝転んだ。
――遊び人なのに、一ヵ月もかからずにレベル40近くまできた。
装備も整ってきた。
ちょっとした失敗もあったけど、順調に成長できてる。
次はどうしようか?
やっぱりアイテムボックスの容量を増やしたい。
そのために貢献ポイントを荒稼ぎしなきゃ。
ふと今は何ポイントになっただろうかと思って課金画面を開いた。
「え? ――マジで!」
僕は思わずベッドの上に上体を起こして座りつつ、課金画面を見直した。
貢献ポイントが約3900になっていた。
「なんで? あ、そうか」
コロポックルたちを助けたからか。
30人ぐらいいて一人50ポイントなら、1500ポイント。
元は2400ポイントだから、だいたい計算が合ってる。
「ありがたや~」
僕は合唱して礼を言いつつ、画面をタップした。
アイテムボックスを購入する。枠が50増えた。
またベッドに寝転びながら考える。
「やっぱ困ってる人を助けるのが最優先だなぁ。困ってる人と言えば……」
僕はシェリルを思い出していた。
フェアリーエルフの村では、まだまだ職業的な問題を知らなくて困ってる人がいたはずだ。
「ソフィーのレベル上げが終わったら、フェアリーエルフの村に行こう。そのためには準備としてお金と……」
あれも欲しい、これも欲しいと考えていたら、急速に瞼が下がってきた。
……ああ、眠い。
今頃イーリスも眠っているだろうか? それとも勇者のレベル上げを頑張っているだろうか?
僕はイーリスと再会するためにもまだまだ頑張らなきゃと思いつつ。
暖かな眠りに誘われて、僕は静かに目を閉じた。
◇ ◇ ◇
昼過ぎのミッドランド王国。
王城に併設された練兵場に、騎士や兵士たちの訓練する声が響いていた。
広い練兵場の端には、軍服に鋼の胸当てを付けたイーリスがいて、剣を振るっている。
表情は暗く、思い詰めたように歯を噛み締めていた。
――と。
そこへ鎧を着た騎士団長のヴァッシュが短めの金髪を風になびかせて近寄ってきた。
後ろには魔術師のような茶色のローブを着た痩せた男と、白い僧衣を着た女性を従えている。
「イーリス殿、精が出ますね」
「うん。ユートの敵討ちのためにも、頑張るよ」
答えるイーリスの、緑の瞳が暗い。恨みの炎が燃えていた。
魔術師と回復士の二人が少し怯えた。
ヴァッシュは努めて明るい声で言う。
「さて。今日はパーティーで連携して戦う訓練をしましょう。我らをパーティーに入れてください」
「えっと、そういうのって冒険者ギルドに行かないとできないんじゃ?」
「勇者なら、神に与えられた能力として、どこでも目の前にいる人をパーティーに入退できます。この人をパーティーに入れると念じて貰えたら組めるはずです」
「やってみる……あ、できた――あれ?」
「どうしました?」
「ヴァッシュさんと魔術師さんは入れられたけど、僧侶さんが入れられない」
イーリスは女僧侶を睨むように見つつ、「うんっ」とか「えいやっ」と叫ぶがパーティーに参加させられないようだった。
ヴァッシュが首をかしげる。
「パーティーは最大4名で、魔法やスキルの効果が適応されます。敵を倒したときの経験値も分割されますが。なぜ3人で? それとも勇者パーティーは4人じゃなく3人になってしまうのか……?」
その時、ひょろっとして頼りなさげな魔術師の青年が言った。
「ちょっと調べてみますね。補助魔法を使えばパーティーのメンバーや状態がわかるはず……」
魔術師が杖を掲げて光らせた。光を持続させつつ、周囲の人たちを見ていく。
そして、あっと声を上げた。
「あっ! ユートって人がすでにパーティーに入ってます!」
「ええっ!?」「なんだって!?」
驚きの声を上げるイーリスとヴァッシュ。
イーリスは訳がわからない様子で呆然としていたが、すぐに気がつく。
「そう言えば! 聖判の儀の時、一緒にいたいって願ったかも!?」
ヴァッシュが頼もしげな笑みを浮かべて言う。
「それです。よかったですね、イーリス殿」
「なんで? パーティーが3人だとこの先困りそうなのに?」
「いえ、すでにパーティーに入っているなら、ユート殿は死んでても助かりますよ?」
「えっ、ほんとに!? どういうこと!?」
イーリスが整った顔を戸惑いと希望で輝かせる。
ヴァッシュは微笑みながら、落ち着いた声で諭すように言う。
「魔王が出現すると神は対抗する手段を与えてくれます。その一つが勇者の誕生。もう一つは世界中の高位の聖職者――司教や僧正などに『勇者蘇生』という魔法を与えます。魔王がいる間だけの限定ですが、勇者は肉体が完全消滅しない限り生き返れます。パーティーメンバーも同じです。つまり――」
「ユートは死んでても生き返るんだ!」
「その通りです。死体さえあればいいのです」
「ユートに会える! やったっ!」
イーリスは美しい顔を破顔させて飛び上がった。胸が揺れ、赤髪がふわっと広がった。
ヴァッシュは心配顔になって注意する。
「万が一ですが。白骨となって長期間過ぎて魂が抜けていたり、魔物に骨まで食べられていたら、復活はできませんので心しておいてください」
諭されても、イーリスは笑顔をやめない。
強気な笑顔で言い切った。
「大丈夫だよ! ユートはすごいもん! 時々、知らないことを言うし、なんだか大人に見えるときだってあったから!」
「ほう。報告と違っていますね」
イーリスは胸に手を当ててうつむく。信頼する微笑みを浮かべて目を閉じる。
「私が今ここにいるのも、ユートのおかげ。いろいろ危ないことしたけど、ユートの助言があったからなんとかなったんだ。本当にユートは賢いんだよ!」
「そうだったのですか。では、優秀な功労者を必ず迎えに行かねばなりませんね」
「どうするの?」
「王から勅命を貰い、部下を大勢率いて脅しに行きますよ。辺境伯は国境警備の任務があるため、かなりの自軍を備えていますからね」
ヴァッシュはしたたかな笑みを浮かべて、にやりと笑った。
つられてイーリスも悪い表情で、にやりと笑う。
「ユートにひどいことをした責任を取らせるってことね?」
「辺境伯自ら、ユート殿探しをしていただきましょう」
ヴァッシュは快活に笑った。
それからパーティーを抜けて、かわりに僧侶を入れて魔法との連携を訓練するようにイーリスに言うと、颯爽と風を切って歩き去った。鎧は陽光を浴びて頼もしく光っていた。
第一章・終わり
これにて第一章終わりです。読んでくださった方、応援してくれた方ありがとうございました!
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第二章からは毎日一話更新にしようかと思います。




