第43話 異常な事態の犯人
本日2話目。
ネズミダンジョンのボス部屋にて。
僕はボスの『グレート・カピバラン』を倒したところだった。
もうこの部屋には用はない。
部屋の奥にある通路を通って、ダンジョンコアがある部屋に向かおうと思った。
――が。
「あれ?」
あるはずの通路が見当たらなかった。
僕は前世の知識で覚えているマップを思い出した。
通路がある方向を見る。
そこには通路の幅いっぱい――つまり15メートルの巨大な宝箱が立ち塞がっていた。
――こんなの、あったっけ?
部屋に入った時には確認してなかった。
それにあまりにも大きすぎて、存在自体が怪しい。
僕は首を傾げつつも『鑑定』を使った。
するとステータスが見えた。
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種族:グレート・ミミック Lv90
攻撃力300万 防御力200万
HP100万 MP50万
スキル:『擬態』『必中』『噛み付き』『飲み込み』
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「うわぁ……」
思わず呆れた声が出た。
またバカが考えたモンスターだ。
Lvも90と、下級ダンジョンには在り得ないほどレベルが高い。
「……」
僕は巨大な宝箱を見上げつつ、腕を組んで考える。
――どうしよう?
即死があるから倒せるはずだけど、攻撃されたら『必中』があるからヤバい。
どう考えても一撃で死ぬ。
――戦うか、帰還するか。
でもダンジョンを踏破すると称号がもらえる。
称号はスキルが増えたり、ステータスがアップする効果がある。
一つ一つは+1や+2などの微々たる数値だけど、いくつも踏破すると合算でバカにできない数字となる。
僕はしばらく考えた末、毒竜の蛇剣を手に持った。
――やっぱり倒してダンジョンをクリアした称号を貰おう!
腹に力を入れてミミックに近づき、剣を振り上げる。
「やぁっ!」
気合を込めて、壁のような宝箱を一閃。
ぺちっと乾いた音がしたあと、ドォォォン――ッと超巨大なドクロのエフェクトが発生した。
巨大な宝箱が光の粒子となって消えていく。
「倒せた」
光が消えた頃、アイテムが飛んできた。
鞄に見えたので、アイテム欄を確認した。
「おおっ!」
なんとそれはマジックバッグだった。肩から斜めに掛けるポーチのような鞄。
確認すると、アイテムが50枠も入るようだ。レアリティとしてはユニークレアぐらい。
――アイテムボックスがいっぱいになりかかってるので、かなり嬉しい装備だった。
僕は意気揚々とバッグを取り出して斜めに掛け、アイテムボックスから拾った装備を移し替えた。
『水てぶくろ』や『狩人の皮鎧』、『神秘のロザリオ』など、諸々。
アイテムボックスに余裕ができた。
解体ナイフの効果はアイテムボックスが優先されるので、とても助かった。
アイテムの整理を終えると、僕はダンジョンコアがある奥の部屋へ向かった。
通路を通って小部屋に出る。部屋の中央には丸い玉が光っている。
その下にはなぜかミニチュアのような村があった。
なんだろう? と思っていると、突然わあわあと騒ぐ声が聞こえてきた。
「来たです!」「人間さんです!」「もうおしまいです!」
声は下から聞こえる。
床に目を向けると、小部屋の隅に体長10センチぐらいの小人たちがいた。全部で30人ぐらい。
鑑定で確かめると『コロポックル』だった。確か森の妖精だったはず。
コロポックルの一人が進み出て、つぶらな瞳を涙で潤ませながら僕を見上げる。
「人間さん、僕らを食べますか? 天ぷらや酢の物にして食べちゃいますか?」
「酒に浸して踊り食いもいいかも?」
僕が調子に乗って答えると、コロポックルたちは「ひゃぁぁぁぁ!」「きゃぁぁぁ!」「食べられちゃう~!」と悲鳴を上げた。泣いてる子もいた。
僕は冗談が過ぎたと思って、素直に謝る。
「ごめん、言い過ぎた。食べないから安心して」
「ほんとですか? そう言って油断させて、ボクらを食べに来たのではないですか?」
「いやいや、大丈夫だから。僕に、というか人間に妖精を食べる習慣はないよ」
僕の言葉に、コロポックルたちが顔を見合わせる。
「そうですか?」「ほんとですか?」「人間さんは恐ろしい生き物」「油断なりませぬ」
コロポックルたちは部屋の隅に集まって震えている。
――うーん。なかなか信用してもらえない。
そこで僕は話題を変えた。
「どうしてコロポックルがこんな場所にいるの?」
――MISOでは、このネズミダンジョンにコロポックルはいなかったはず。
コロポックルの代表が、恐る恐る僕を見上げて言う。
「森の中は危険がいっぱいです。ここならダンジョンコアを使って、いつでも魔力を食べられるです」
「妖精は魔力を食べるのか――って、ダンジョンコアを操作できる?」
「はい。できるです」
「なるほど。操作できるなら、安全な場所になるね」
ふと思う。
あの馬鹿が作ったようなモンスターたちは、コロポックルが作っていたのか。
――冒険者として、いろいろ指導した方がいいかも知れない。
僕は、ふむっと一つ頷いた。
「わかった。今は困ってることないかな? 手助けするよ」
「それなら一つあるです」
「なにかな?」
「目の前に巨大な人間さんがいて困ってます」
「いや、それ以外で。てか、僕は危害を加えないから」
僕の言葉に、コロポックルたちは短い腕で腕組みしつつ唸った。
「何かあります?」「あるようで、ないような?」「ありゃりゃっしたー」
しばらくの間、コロポックルたちは雑談のように話し合っていた。
なかなか話がまとまらない。
そこで僕は助け船を出した。
「ちょっといいかい? 僕は攻略二日目でここまで来てしまったんだ。だから、人間がここまで来れないようにするより、君たちの村を隠すようにダンジョンを変更すべきだと思う」
「おお~!」「確かに!」「その通りですな!」
コロポックルたちがいっせいに感心する声を上げた。
そこで僕は、冒険者としてどのようにされたら嫌なのかを、地下一階から三階までとボス部屋の変更点を教えた。
逆にダンジョンの仕様でわからないところは質問して、さらに考えを伝えていく。
――結果、ネズミやアイテムのランクアップはコロポックルたちの仕業だとわかった。
ダンジョンの魔力を大量に使って強い魔物を出そうとすると、付随して強いアイテムが出てしまうらしい。
ということは他の放置されたダンジョンに行ってもMISOと同じままだ。ちょっと残念。
コロポックルたちが目を輝かせて喜んだ。
「すごいです!」「そんな考えがあったとは!」「さすがです!」
褒められてちょっと嬉しくなった。
ただ、釘も刺しておく。
「申し訳ないんだけど、もう少しだけこのダンジョンで狩りをしたいんだ。だから変更は二週間後からでお願いできるかな?」
「はいです! そもそも魔力を使い切ったゆえ、ダンジョン変更できる魔力が溜まるまでそれぐらい時間がかかるです」
「そっか。じゃあ、もう行くよ。元気でね」
「はーい!」「助かったですー!」「ありやとやんしたー!」
コロポックルたちが口々にお礼を言ってきた。
なんだかとても可愛らしい。
僕は、ほっこりした気分になりつつダンジョンコアに触って、ダンジョンの入り口へと移動した。
明日はたぶん三話更新。




