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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第一章 追放サバイバル編

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第42話 バカげたボス戦!


 ネズミダンジョンの地下三階。

 僕は最奥にあるボス部屋の前までやってきていた。

 目の前には両開きの大きな扉がある。


 周囲を確認すると、敵の気配はなかった。

 お腹がすいていたので丁度いいと思い、壁を背に座ってアイテムボックスから昼ご飯を取り出した。

 丸くて固いパンと干し肉をかじりつつ、アイテム欄を整理していく。


「おっ、死のネックレスだ」


 即死がランダムで1~5%付くユニークの首飾り。 

『死のネックレス 即死2% HP増加2%』


 ……うーん。微妙過ぎる。即死2%はいいとして。HP増加がたったの2%ではゴミとしか言いようがない。

 HP増加は鎧と首飾りにしかつかないので、二つ合計でHP200%は確保したい。

 今のところ『まごころチョーカー』に変えて装備する必要は感じなかった。



 もぐもぐとパンを食べながら他のアイテムを見ていく。

 そしたらユニークレアの首飾り『神秘のロザリオ』があった。

『神秘のロザリオ 神託 防御25% 属性抵抗50% 回復率75% HP増加100%』


 いい装備だった。

 ただし回復職専用だ。僕は装備できないし、しても効果が出ない。


「残念」


 HP増加がいずれ必須になるからもったいない。

 いつか誰かにあげるか、それとも売ってしまうか……。


 いや、待てよ?

 ひょっとしたら賢者なら効果が発生するかも?

 取っておこうと思った。


 

 簡易な昼ご飯を食べ終えると、僕は立ち上がった。

 通路の隅にドブラットから手に入ったゴミを捨て、大きな扉の前に立つ。


「よしっ!」


 僕は気合を入れて、両開きの扉を開いていった。徐々に大きな広間が見えてくる。

 中はとても広かった。100メートル四方はありそうだ。

 天井も高い。30メートルはある。


 大広間に入ると、後ろで自動的に扉が閉まった。

 ボスを倒さない限り、部屋から出られない。


 僕はカピバランを探した。

 でも見当たらない。このダンジョンのボスなのに。

 おかしいなと思って『鑑定』で広間を見た。


「なっ!」


 そしたら思わず絶句した。

 大広間の奥に超巨大なカピバランがいたからだった。


 カピバラをそのまま大きくしたような見た目だが、見上げるほど大きい。

 体高は25メートルほど。つまりちょっと伸びをしただけで天井に頭が着きそう。

 体長は40メートルほど。大きすぎて焦げ茶色の壁が聳えているようだった。だから一瞬、わからなかった。



「これと戦うの?」


 いくらなんでも大きすぎると思い、鑑定でステータスを確認する。


--------------------

種族:グレート・カピバラン Lv30

攻撃力100万 防御力100万

HP100万 MP100万

スキル:『引っ掻き』『噛み付き』『突進』『地鳴り地団駄』

--------------------


 ――なにこの、馬鹿が考えたようなモンスターは。

 このカピバラを生み出したやつは『ボクちんが考えた、さいきょーの魔物~』とでも思ったのだろうか。

 こんなのどうやって倒せというんだ。頭が悪すぎる。


 即死や毒ダメージがあっても、ダメージを与えなければ効果が発生しない、はず。

 でも僕の攻撃力とボスの防御力に差がありすぎて1ダメージすら入らない。


「詰んだ」


 ボスを倒さないと部屋から出られない。

 見ていると、巨大カピバラは突っ立ったまま動かなかった。

 どこも見ていないような遠い視線をして、ぬぼーっと立ちすくんでいる。



 僕は思う。

 ――即死の確率を上げたら倒せないかな?

 そこで死のネックレスなど、即死が付いてる装備に変えた。


 それからカピバランに近寄って、毒竜の蛇剣を鞭のように振るって攻撃してみた。


 ドォォォン――ッ!


 蛇剣の切っ先がペチッと当たった瞬間だった。

 カピバラの大きさに合わせたのか、超巨大なドクロが浮かんで、カピバラは死んだ。


「え? マジで!? 即死ってダメージがなくても発生するんだ!」


 初めて知った。

 MISOじゃどんな敵にもダメージを与えられたし、即死の装備はほとんど持ってなかった。

 だから知らなかった。


 即死はダメージ計算とは別の扱いを受けている。

 これを知ったらもう、ますますハーデスリングを手放せなくなった。

 ――って、そうか。

 カピバランはLv30だから、2と3と5の倍数だ。即死確率100%だったんだ。



「いやー、ハーデスリング様様だね」


 バカが考えたモンスターを一撃で倒せて本当に良かった。

 ただ「でも……」と別の疑問が頭に浮かんだ。


 ダメージを与えなくても即死が発動するなら、攻撃する気がなくても即死が発動したりしないだろうか?

 例えば、ソフィーの頭を撫でたら即死が発動しました、なんて事故が起こるかもしれない。

 そうなったら英雄たちになぶり殺しにされる。


 ――他人がいる場所では、ハーデスリングを外しておこう!

 と心の中で決意した。



 ――と。

 そんなことを考えていたら、視界が急に変化した。

 よく見れば、立ちながら死んでいたカピバランの体がグラっと揺れ動いたようだった。


「え?」


 見上げるほどの巨体が、まるでビルが倒れるかのように僕へ向かって倒れてきた。


「ちょちょちょちょ――ッ!」


 僕は焦って変な叫びをあげながら逃げ出した。

 ――こんな巨体に押しつぶされたら、ひ弱な運キャラなんてひとたまりもない!



 部屋の中央辺りまで来たところで、背後からドォォォ――ッ! と豪快な音がした。

 風が吹き抜けて僕の黒髪を揺らす。

 冷や汗をかきながら振り返ると、ほんの2メートルもない距離にカピバランの背中が壁のように立っていた。


「ぎりぎり。マジでぎりぎりで助かった……」


 そういえば即死した敵は地面や水面に落ちてから解体ナイフの効果が発動していた。

 ――これ、イダテンブーツを手に入れてなかったら死んでた。

 ほっと安堵の息を吐いて、額にかいた冷や汗を拭った。


 しばらくしてカピバランの巨体が消えた。

 同時にドロップしたアイテムが飛んでくる。

 指輪じゃなくて革製品のようだ。



 アイテム欄を開いて確認すると、見た目は皮鎧と同じだけど『狩人の皮鎧』という名前が付いていた。

 ポケットが多くて、狩りには最適らしい。『命中10%』や『茫漠』などの効果が付いていた。


 ノーマルと同じ見た目で名称が付いてる場合は、だいたいノーマルレアに相当する。

 ノーマルの品にちょっとだけいい効果が付いてる。

 僕の『そよ風のローブ』も同じ。『エルフの礼服』は見た目が変わりすぎているのでよくわからない。


「しかし命中と攻撃速度に補正か……どうしよう」


 結構いい装備だ。装備しようか悩む。

 今着ているエルフの礼服と比べるとこんな感じ。

『エルフの礼服 防御+ 5 防御+25% 魔防+25% 魔力回復上昇25%』

『狩人の皮鎧  防御+10 茫漠 命中10% 攻撃速度10% HP増加10%』


 エルフの礼服は魔法防御が上がるのが嬉しいけど、遊び人は魔法を使わないから『魔力回復上昇25%』が無意味になっちゃってるんだよね。


 ただエルフの礼服は説明文に『伝統的な模様に魔力を込めた刺繍が施されている』とあって、シェリルが縫いながら魔力を込めてくれたのかなぁと思うと……。


 ――まあいいや。

 10%程度の上昇は誤差の範囲だ。

 回避やHPが大幅に上がる装備が手に入るまで、エルフの礼服をまだまだ使い続けようと思った。


十万字越え! 応援してくださってありがとうございます。

またブクマや★★★★★評価ありがとうございます。励みになります!

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