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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第34話 戦い終わって日が昇る


 次の日の朝。

 僕はベッドで目を覚ました。

 宿屋の僕の部屋だ。


 体を調べると痛みはなかった。

 頭には包帯が巻かれている。

 誰かが部屋までは混んで、治療してくれたらしい。


 誰かわからないけど感謝しつつ、僕はベッドを出た。

 日課の祈りを終えた後で、部屋を出て一階へ向かった。



 一階の食堂にはマーサさんがいた。

 僕を見るなり眉間に深いしわを寄せて咎めてくる。


「ちょっとあんた! レベルも低いし、遊び人だし、無茶しちゃダメじゃないか!」


「心配かけてすみません」


 僕は申し訳なくて、頭を下げて謝罪した。

 ――マーサさんの言うとおりだ。

 この世界はゲームじゃない。死んだらそれで終わりなんだから、慎重に慎重を重ねて行動しないとダメだ。

 

 

 僕の傍まで来たマーサさんは太い腕で腕組みしながら、呆れた声で言う。


「ったく。ソフィーが泣きながら店に飛び込んできたから、びっくりしたじゃないか」


「マーサさんが部屋へ運んでくれたんですね。治療もありがとうございました」


 僕が重ねてお礼を言うと、マーサさんはにゅっと手を突き出した。


「ん」


「え? なんでしょう?」


「治療のポーション代と包帯の料金、2500ゴート」


「あ、はい」


 タダじゃなかった。そりゃそうか。

 僕は大銀貨一枚と銀貨5枚をマーサさんに手渡した。



 マーサさんは手早くエプロンのポケットにお金をしまうと、厨房へ向かった。


「朝食、食べてくんだろ?」


「はい、お願いします」


 昨日の夜は食べてないので、お腹がペコペコだった。

 すぐにパンと肉のスープ、それにスクランブルエッグが出てくる。


 食べ終えると、僕は外へと足を向けた。

 するとマーサさんが、後ろから声をかけてきた。


「ユート」


 振り返って返事する。


「なんでしょう?」


「めちゃくちゃ頑張ったのはわかるけどさ、これからはもっと慎重に冒険しなよ?」


 マーサさんは僕の指を見ながら言った。

 ユニークの指輪が何かわかったようだ。さすが英雄。

 僕はもう一度頭を下げた。


「はい、肝に銘じます。ありがとうございます」


 それから宿屋を出た。



 外は明るい日差しが村や通りの道を照らしていた。

 道具屋の方から、たたたっと賀露やな足音が近づいてくる。

 黒髪を後方へなびかせてソフィーが駆けてきた。


「ユートお兄ちゃんっ!」


「ソフィー、昨日はありがとう。助かったよ」


 僕の言葉にソフィーが目の端に涙を浮かべ、潤んだ上目遣いで見上げてきた。


「もう、ユートお兄ちゃん! 今後は無茶しないでください!」


「心配かけてゴメンね。もう無理するのはやめるよ」


 僕が素直に答えると、ソフィーはふにゃっと頬を緩めた。

 涙声になって言う。


「ほんと、生きてて良かったですっ。死んじゃうかと思って――わたし、わたし」


「ゴメンね。でも、そこまで想ってくれてて嬉しいよ」


「はい! わたしはユートお兄ちゃんのことが――はうっ」


 ソフィーは言葉を詰まらせて、頬を真っ赤に染めて俯いた。

 ――なんだろう、この気持ち。

 素直な好意が、今の僕にはとても嬉しく感じる。



 僕はソフィーの頭を撫でながら言う。


「ありがと。――じゃあ、無理せず冒険してくるよ」


「はいっ! 行ってらっしゃいませ!」


 元気な声に手を振って別れつつ、僕は向かいにある冒険者ギルドへ足を進めた。



 誰もいない冒険者ギルドに入る。

 静けさが支配する中、カウンターにいるゲイルだけが鋭い目つきで睨んでくる。

 ちょっと怖い。


 僕はカウンターへ近づきながら挨拶する。


「おはようございます、ゲイルさん」


「おはよう、と言いたいところだが。無茶してんじゃねぇよ」


「心配かけてすみません」


 僕が頭を下げて謝ると、ゲイルはハァッと盛大なため息を吐いて僕の手を見つめた。


「……すげえ頑張ったのはわかるがな。もうちっと余裕を持って頑張れや――期待してんだからよ」


 最後の方は、ごにょごにょっと聞き取りづらい声で言った。

 なんだか心から心配してくれたのがわかって、とても嬉しく思った。



「はい、気を付けます。でもバトルリングとフォルトゥナリングを手に入れられたので、もう無理はしませんから」


 僕が笑顔で手のひらを上に向けて指輪を見せると、ゲイルが目を見張った。


「バトルリングは俺も持ってるが――フォルトゥナリングだと! 噂でしか聞いたことない激レアだぞ!」


「自分でも手に入れることができて驚いています」


「どこで手に入れた? この辺で指輪落とす敵はいないだろ?」


「えっと、近くにダンジョンがあったので、そこで拾いました」



 ゲイルがますます驚きの声を上げた。とっさに中腰になっていた。


「ダンジョンだと!? この村の近くにあったのか! どこだ!?」


「えっと、ごめんなさい。絶対教えますから、3日だけ待ってもらえますか?」


 僕が頼み込むと、ゲイルは椅子に座り直して訝しそうに睨んでくる。


「ふぅん。その感じだと、まだまだお宝がありそうってか」


「まあ一番の宝は手に入れたかも知れませんが。まだ取ってない宝箱があるので」


 よく考えたら、隠し部屋の中央にあった宝箱、開けずに帰ってきてしまった。

 まあ、死にかけてたから仕方ない。

 そのほかにも、まだ地下二階や三階に宝箱があった。

 今日はそれらを取りに行かないと。



 ゲイルが渋い顔をして言う。


「ダンジョンを見つけたら、報告の義務があるんだが……まあ、こんな辺鄙な村じゃ、一週間や一ヵ月遅れたところで誤差の範囲だろ」


「配慮してくれて、ありがとうございます」


「いいってことよ。確認のため、俺も久しぶりに冒険を楽しめるな」


 ゲイルが強気な笑みを浮かべて力こぶを作った。

 この村じゃ冒険者ギルドは開店休業状態。

 ゲイルは村の何でも屋さんだったのだろう。



 ふとギルドに来た理由――依頼を達成してるのに報告してなかったことを思い出す。


「すいません。昨日受けた依頼を完了してないので、処理して貰っていいですか?」

 

「おう。しっかりやることやってるんだな。さすが俺が見込んだ男だ」


「ありがとうございます」


 お礼を言いながら、アイテムボックスから薬草と毒消し草の束を取り出した。

 ついでに星月草も一束出す。

 ゲイルが興味深げに口角を上げた。


「ほほう? これは星月草だな? やるじゃねぇか」


「ええ、少しですが見つけることができましたっ」


 本当は、シェリルと一緒に採集したのだけど。

 言わなきゃわからない。

 僕は続けて言う。


「あとブッシュボアも一頭狩りましたので、あとで解体場に置きますね」


「おぅよ。肉はいくらあってもいいからな」


 ゲイルは嬉しそうに言いつつ、僕の冒険者カードを手に取って処理し始めた。

 続いて依頼達成の金額を計算し始める。


 僕は待ちつつ、ふと思い出した。


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