第30話 指輪狩り
ネズミダンジョンの地下一階。
僕は大広間から出てすぐの通路に座り込んでいた。
汗が全身から噴き出し、荒い息を繰り返す。
――ゲームと現実の違いを失念していた。
ゲームなら5時間でも10時間でもぶっ通しで狩ることができた。
プレイヤーキャラは疲労しないからだ。
でも現実だと狩っては走り狩っては走りを繰り返していたら、そりゃあ当然疲れが溜まる。お腹も空く。
時間は30分は過ぎただろうか。あるいは一時間。二時間狩ってたかも知れない。
狩りに集中しすぎて、時間経過がわからなくなっていた。時計が欲しいな。
僕は通路の壁にもたれながら大広間に目を向ける。
床がキラキラと光っていた。
僕が捨てた微妙な効果の指輪たちだ。
途中からは立ち止まるのももどかしく、アイテムボックス画面を開きながら狩りをして微妙な指輪を捨て続けた。
その結果、たぶん床に千個以上の指輪が転がっていた。
ゲームだと数分で消滅するけど、現実では長く残り続けるみたいだ。
ダンジョンに吸い込まれたりしないのかな?
ちなみに欲しかった『鑑定』が付いた指輪も手に入れていた。
鑑定の文字を見たときは、息をのんだ。内心喜んだ。すぐに落胆したけど。
手に入れた指輪の効果は『鑑定:犬』だった。
説明文を読むと、犬の種類がわかるらしい。チワワとかスコティッシュフィールドとか。
……需要はあるのだろうか?
捨てるに捨てられないので、まだ残してある。
――と。
見ていると、再度発生したリングラットが、床に落ちた指輪に近づいて匂いを嗅いだ。
そのまま手に取ってカリカリとかじり始める。
――リングラットの餌って指輪だったのか。
道理で指輪が確定で落ちるわけだと思った。
僕はアイテムボックスからパンと干し肉を取り出してかじる。水も飲む。
アイテム欄を開いたついでに、付与効果の高い指輪を見ていく。
「うーん。敏捷+6か。一応装備するか。即死抵抗15%は有りだけど、素材がアイアンリングだとなぁ……」
まだまだ運が低いからか、良い素材に強い効果が付いた物がドロップしない。
ノーマルレアの指輪である、ファイアーリング(火抵抗5~10%)に『透明』や『鑑定』が付いたら最高なんだけど。
ユニークやユニークレア、レジェンドの指輪はまだ手に入れるのは無理だろう。
せめて運が201を超えないと。
「お! 運+17のゴールドリングが手に入ってる。いつの間に」
僕はアイテムボックスから取り出して装備した。
他にも二つすでにドロップした指輪を装備していた。
『回避8%』と『運+9』だ。
そういえばレベルも上がったはず。運に振っておこう。
レベルは24になっていた。何時間かで3つも上がるとは。
STPは9ポイント全部、運に振った。
スキルはどうしよう。
しばらくは意味の無いスキルか、害のあるスキルしか取れない。
ボックスハイドを31まで上げられたらいいんだけど。スキルレベルが上がるアイテムは持ってないしなぁ。
――そういやマジックスライスがあんまり発動しなかったなぁ。
Lv1だと厳しいか。
「上げとくか」
マジックスライスにSPを14振ってLv15まで上げた。
さらに『ラッキーショット』にSP15振って最大にまで上げた。
SPは残り1。
昼食も食べ終えて一息ついた。汗も引いた。
僕は気合いを入れながら立ち上がる。
「よし! 狩るか」
毒竜の蛇剣を握りしめて、また大広間へと入っていった。
そして刈り始めて数分後。
指輪が強く光りながらアイテムボックスに収納された。
見た目はシルバーリング。
――ということはレアな効果が付いた証拠!
僕はアイテム欄を見て、思わず悔しい声を上げた。
「んなぁ! 出たし!」
それは『スキルレベル+1』の指輪だった。
――なんでこう、物欲が無いときに限って、目当ての物が出るんだ。
がっくりと肩を落とし、泣きそうになりながらその指輪をはめた。
ボックスハイドを31にできなくなったけど、他のスキル『みかわしステップ』や『ラッキーショット』の最大値を超えて上がるからだ。
少し落ち込んだけれど、気を取り直す僕。
「またレベル上げればSPも溜まる! やるぞ!」
気合いを入れて、また大広間を駆けながらリングラットを狩り続けた。




