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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第29話 ダンジョン探索

本日2話目。


 僕はダンジョンの中を歩く。時刻は昼頃。

 一階はごつごつした岩肌の、洞窟のようなダンジョンだった。

 天然の洞窟に見えるが、壁にはところどころ魔法の明かりが灯っている。


 入り口からの光が届かなくなるころ、何かが蠢く気配がした。


「出たか」


 僕は毒竜の蛇剣を構えつつ、魔物が近づくのを待った。

 ――と。

 何か予想とは違う動きをしている。

 まるで床が動いているかのよう。


「ん? ネズミじゃなくてムカデだ」



 ざらざらと無数の脚が動いて長いムカデが床を埋めながら近寄って来る。

 真っ黒い体は長く、体長は3~5メートルもあるムカデばかりだった。

 ギチギチと大きな顎を鳴らして近づいてくる。


 射程に入ったところで剣を振るうと、鞭のように伸びて流れた。

 しかしムカデの硬い体に当たっても弾かれるのみ。ダメージを与えられない。


 でも僕は焦らない。

 かすり傷でいいのだから、と足の関節を狙って剣を振るった。細い足を何本も切り飛ばす。

 どんどん毒ダメージを入れていく。

 そうやって蛇剣を広く振るいながら、距離を取るため後ずさった。



 数十秒すると、ムカデが声もなく倒れた。

 即座に解体されて素材が飛んでくる。黒くて固い甲殻や毒袋、それに牙。

 後には使い道のない肉や足が残された。


「あ、やっぱり。ダンジョンの魔物じゃなくて、外から入り込んだ魔物か」


 ダンジョン産の魔物なら、倒すと遺体は消えてアイテムだけがドロップする。

 肉体の素材が残っているなら、普通の生き物としての魔物だった。


 とりあえずムカデの死骸を避けつつ奥へと進む。

 


 少し天井が高くなった広間に出た。

 周囲に魔物はいない。しかし床に動物の白骨が散らばっている。

 上を見上げると、岩の天井に無数のコウモリがぶら下がっていた。


 思わず、むうぅん、と唸ってしまう。

 ――ネズミだらけのはずなのに。

 求める魔物がいなくて、テンションが下がる。


 一階は諦めるしかないかなと思った。

 まあ今日は、地下一階が本命なのでそっちに早く行こう。


 僕は箱を取り出して中に入った。ボックスハイドを発動させる。

 透明になった僕は箱を回収してから、地下へと向かう階段へ向かった。

 一階には宝箱はないので問題なかった。



 地下一階。

 石壁や石畳でできたダンジョンとなる。

 壁には魔法の灯りがあり、床や天井を照らしている。


 幅3メートルほどの通路を歩く。

 通路に魔物の気配はない。

 どうやら外から入ってきた魔物も階段は降りられないようだ。


 僕は覚えている道順に沿って歩く。

 記憶通りなら通路に敵は出現せず、各部屋にネズミが五匹ほど出現する。

 迷路のように入り組んだ通路を歩いて奥へと向かう。


 そして目当ての大広間に出た。

 バレーコートが四つは入る広さ。通常の体育館の数倍はある。天井も高い。

 石の柱が四本だけそびえて天井を支えている。


 そしてここには四方の隅に十匹ずつ、計40匹のネズミがいた。

 しかもタダのネズミじゃない。体長50センチメートルはある、太ったネズミ『リングラット』だ。

 このリングラットは確定で指輪を落とす。逆に指輪以外はドロップしない。


 MISOでは指輪こそが最重要の装備だった。

 武器や防具の装備は各部位に一つしか装備できない。

 しかし指輪は計8個も装備できた。

 

 だからこのダンジョンは人気があり、常にプレイヤーが各隅に一人ずつ十匹狩りをしていた場所だった。

 


 しかし今は人がいなかった。

 僕は頬が緩むのを感じる。

 ――だって、こんなおいしい狩り場が空き放題、狩り放題って! メンテ開けでもこんなことはなかった!


 僕は舌なめずりしながら、まずは四隅の一つに向かった。

 リングラットに気付かれる前に蛇剣を振るう。

 ビュウッと風を切って伸びた剣がリングラットを襲う。


「きゅい!」「きゃぴぃ!」「ぎょわ!」


 攻撃されたリングラットが僕に気付いて、怒声を上げながら向かってくる。

 しかし迫られる前にさらに剣を振るう。


「まだまだぁ!」


 ズバババッと軽快な音とともに、十匹全員に刃が当たった。 


「ぴゅきぃ!」「きぃぃぃ!」


 何匹かは『ラッキーショット』の効果でクリティカルが出たらしく、甲高い断末魔を揚げて床に倒れた。

 全員に毒状態を示す、緑の煙がまとわりつく。

 しかしリングラットは太ってる割には素早い。


 至近距離に来た一匹が鋭い前歯で攻撃してくる。

 しかし僕の体がヒラリと回転して攻撃をかわす。『みかわしステップ』だ。


 もう一回、剣を振るうと、累積ダメージと毒ダメージで全部倒せた。

 指輪が十個、アイテムボックスに飛び込んでくる。


「ノーマルのリングばっかりか――でも次だ!」 



 僕は別の四隅に向けて走る。

 大広間の敵全部を使った全面狩り。

 こんなのMISOでも味わえなかった。


「ひゃっはー!」

 

 僕は奇声を上げながらリングラットの集団に襲いかかる。

 全部倒したら、また別の隅へ向かう。

 そうやって四隅を倒すと、最初の隅にリングラットが再度出現した。


 僕は目を輝かせて叫ぶ。


「やばい、待ち時間無しの最高効率だ!」


 僕は猛然と毒竜の蛇剣を振るって次々とリングラットを倒し、指輪を乱獲した。



 何周かするとアイテムボックスが一杯になってきたので、整理する。


「んー、筋力+1とか毒抵抗2%とか、ゴミだな捨てよう。ノーマルリングはどうしようか――まてよ?」


 ノーマルリングはブロンズリング、アイアンリング、シルバーリング、ゴールドリング、ミスリルリングがあった。

 指輪に使用された鉱石の純度は高いという設定があるので、MISOではノーマル指輪を集めるとインゴットを作れる方法があった。面倒なので誰も利用してなかったけど。

 

 でもここは現実だ。鉄やミスリルのインゴットは欲しい。


 僕は弱い効果の指輪は捨てた。

 筋力+1の効果だけでも魔導具扱いになるので破壊が不可。

 インゴットにもできないからだ。


 続いて、ロープを取り出してアイアンリングに紐を通した。10個ほど。

 これで一つのアイテムとしてアイテム欄に収まった。

 このまま数珠つなぎにしていけば、100個でも1000個でも一つのアイテム欄だけで収まる。

 ミスリルリングはまだ一個だけなのでそのままにする。


 そのほか、整理中に『風攻撃+5~15』が付いたブロンズリングがあった。


「おっ、これは助かる」


 毒ダメージに加えて風ダメージも入るようになる。非力な運キャラとしてはありがたい。



 僕は指輪を装備してまた蛇剣を握りしめた。


「さあ、やるぞ!」


 ニヤつく笑顔でリングラットの集団に向かう。

 剣を振るい、毒と風のダメージで倒していく。 


 ――楽しくて仕方がない。

 ほとんどまともな指輪を装備していない状態な上、ノーマルもインゴットとして当たり扱いなので、何が出ても当たりになる。


 まるで当たりしか入っていないクジやガチャを引いているかのよう。

 たぶん脳内でドーパミンがドパドパ出ている状態だろう。


 しかも狩り場を奪われたり、モンスターを横取りされたりする心配がない。

 ――今、僕は自分の置かれた境遇や目的を忘れて、MISOよりもゲームを楽しんでいた。

 もちろん、時々勝手に発動するゴミスキル『アクロバット』や『ジャグリング』には舌打ちしたけれど。


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