第24話 念願の、毒竜の蛇剣を手に入れたぞ
夕暮れ時の村の道。
仕事を終えた村人たちが家路についたり、宿屋へ向かったりしている。
僕はソフィーのいる道具屋へ行く前に、村の外れの鍛冶屋へ向かった。
鍛治屋へ来ると、店の方にオイゲンがいるのが見えた。
そのまま店に入る。
剣や槍、盾が四方の壁に飾られ、棚には包丁や鍋がある。
奥のカウンターにドワーフのオイゲンがいた。
「こんばんは。毒竜の蛇剣はできてるでしょうか?」
「ユートか。できてるぜ」
カウンターに、ドンッと長剣を置いた。
黒光りをする刀身。ナイフの時と違って、まっすぐな両刃の剣になっていた。
しかし手に取って目の前に掲げると、光の反射によって刀身に切れ込みがあるのがわかった。
――いわゆる、蛇腹剣といわれるもの。
強く振ると刀身が伸びて鞭のようにしなる。
「ふふ。ふへへ」
思わず変な笑いが出た。
中盤にならないと手に入らない剣が、序盤で手に入ったのだから、そりゃ笑いもこみ上げようもの。
しかも蛇腹剣は近接武器で有りながら、遠距離攻撃扱いになる。
つまり遊び人のスキル「ラッキーショット」の効果が乗るのである。
一応、鑑定してみると、ちゃんと『毒竜の蛇剣』と表示された。
攻撃力も説明文もゲームと同じ。+48で、毒は秒間96ダメージ。
ということは強化は成功している!
僕は気持ちの悪い笑顔で言った。
「素晴らしいですオイゲンさん! ありがとうございます!」
「試し切りとかしなくていいのか? 扱いにくい武器だぞ?」
「大丈夫です! ――これ、残りのお金です」
金貨と大銀貨と銀貨で20万ゴート支払った。
オイゲンは少し引き気味になりながら、お金を受け取っていた。
「ま、まあ。何かあれば、また言ってくれ。調整するから」
「はい! あ、鉄くず引き取って貰えますか? 水路掃除で出たやつです」
「構わないよ」
僕はカウンターに鍋とフライパンと短剣と鎌の刃先を出した。
オイゲンはあごひげを撫でつつ言う。
「誰が水路に捨てたんだか。困るんだよな――んん? こいつは……」
オイゲンが短剣を手に取って鞘を抜いた。外はボロボロだけど、中は錆びてなかった。
僕も思わず息を飲む。
鞘に収まった状態で表示された名称は『鋼の短剣』で、今とは違う名前になっていた。
鞘に『隠蔽』の効果が付与されていたらしい。
「退魔のナイフだったのか」
攻撃力は25。しかしアンデッドや死霊に対して、行動不能にさせ、能力を封じる。
さらに攻撃すれば、防御貫通のうえ2倍ダメージとなる。そこからさらにクリティカルやダブルクリティカルが乗る。
かなり強い武器だ。
オイゲンが鞘を指の爪でこすり、鋭い目つきで見る。
「これはソフィーの母親の物だ」
「ソフィーって道具屋の?」
「よそから引き取られてきたんだが……すまん、掃除のゴミは清掃人の物だが、これで買い取らせてくれねぇか?」
オイゲンは金貨を10枚置いた。10万ゴートだ。
相場より安いように思う。100万ゴートぐらいが適正価格じゃないだろうか?
けれど、鞘も柄も水に浸かってぼろぼろだ。手直しするだけで数十万ゴートかかりそう。
――まあ、ひょっとしたらお母さんの形見の品なのかも知れないし、お金が貰えるだけでありがたい。
そこで僕は了解したと答えようとしたら、オイゲンが突然しゃがみこんだ。
カウンターの下で何かごそごそしている。
なんだろうと思ったら、立ち上がってカウンターに大金貨を3枚置いた。60万ゴートだ。
「え?」
「70万だ。頼む」
「あ、はい。わかりました。鉄くずごとお譲りします」
勝手にお金が増えた。何も言っていないのに。
下手なことを言って下げられたら困るから、黙っておく。
僕はお金をアイテムボックスへしまった。
オイゲンはもう僕のことなど気にしていない風で、短剣を大切に胸に抱きながら鍛冶場へ向かった。
僕は店を出ながら思う。
「閉店とか、ドアに鍵かけたりとか、しないでいいのかな?」
――まあいいや。
こんな村なら泥棒もいないだろうし。
それにしてもソフィーか。
MISOには出てこなかったキャラクターだ。
英雄たちが保護者代わりなのだろうか? ちょっと気になる。
そこで宿屋へ帰る前に、道具屋へ寄ろうと思った。




