第23話 水路掃除
本日2話目。
村の朝。
僕は村の周囲にある畑にいた。
アイテムボックスに、水路のゴミと泥を吸い込んでいく。
近くにいた農夫が目を丸くして叫ぶ。
「なにして――ええ? 水路が深くなってる!?」
「まあそういう魔法かスキルと思っててください。たぶん今日中に終わります」
「こいつはすげぇ! あんた若いのにすごいな! 助かるぜ!」
「はーい、頑張ります」
僕はその後、水路に沿って歩きながら、ゴミと泥をどんどん吸い込んでいった。
アイテムボックスがいっぱいになりかけると、空き地になってる畑まで行って泥を捨てた。
木の枝や葉っぱ、枯れ草も一緒に捨てる。
小石や岩は畑の邪魔になるだろうと思って、畑の隅に積み上げた。
ていうか穴の空いたフライパンや錆びたナイフ、銀貨や銅貨もあったんだけど。
手ぬぐいや木でできた人形みたいなのも。
――勝手に処理するのはまずいかも。あとでゲイルさんに相談しよう。
西の空が赤く染まり、夕暮れになる頃に、ようやく水路掃除は終わった。
農夫の何人かに、仕事はこれでよかったかを聞いて、大丈夫だという言質を貰ってから村に帰った。
僕はさっそく冒険者ギルドへ戻る。
カウンターに座っていたゲイルが眉間にしわを寄せて、訝しそうに僕を見てきた。
「どうした、ユート?」
「水路掃除、終わりました」
「嘘だろ!? 村の水路全部だぞ?」
「確認して貰って構いませんよ。農夫のアーバインさんやイエーガーさんにも仕事完了の確認をして貰いましたが」
ゲイルは口を半開きにして僕を眺めた。呆れているような、感心しているような、不思議な表情だった。
「その二人が確認したなら間違いねぇな。依頼完了だ。冒険者カードを出せ」
「はい」
僕は冒険者カードを出した。
ゲイルはカードを水晶玉にかざしてから僕へと渡してきた。
見れば、ランクが上がっていた。
「え、もうEランクですか!?」
「イノシシは倒せるし、採集も大量。面倒な依頼もこなしてる。――見習いは卒業だ」
「ありがとうございます。あと、水路のゴミから鍋や銀貨が出てきたんですが、どうしましょう?」
「そりゃ役得だ。小銭ぐらい自分の物にしていいし、金物はオイゲンのとこ持って行けばくず鉄として買い取ってくれる。ちょっとした小遣い稼ぎだ」
「いいんですか。人形や手ぬぐいなんかも?」
「あー、人形かぁ~。他人にはゴミでも、本人にとっては思い出の品かも知れねぇなぁ」
「これなんですが」
僕は人形を取り出した。手のひらからはみ出る大きさの人形。布の端切れを服のように来ている。
ゲイルはじっくりと見ていたが、急に顔をしかめて唸る。
「う~ん。こいつぁ、ソフィーの人形だなぁ」
「ソフィー?」
「道具屋に引き取られた少女だよ。ちょっと事情があってな」
「ふむ。とりあえず、処分するかどうかは本人に確認したほうがいいですね」
「ああ、頼むわ――歳の近いもんと知り合いになれた方が嬉しいだろうしな」
「村に若者はいないって言ってましたもんね」
「いや、子供はいるんだが……まあ、よろしくしてやてくれ」
「わかりました。あと魔物の素材をいくつか買い取って欲しいです」
毒竜の蛇剣のために残り20万ゴート必要だけど、少し足りなくなっていた。
ゲイルは首をかしげた。
「畑に魔物が出たのか?」
「まあ、そんな感じです。来る途中で倒した魔物もあります」
「そうかい。鹿肉はないか? 高く買うぜ?」
「鹿は狩ってないですね。狼とか」
「狼は肉が臭くてまずい。買い取りは毛皮と牙だけだな。てか、遊び人が狩れるのか?」
「はい、こんな感じで」
僕は毛皮や牙をカウンターに出した。甲虫の外殻や、カマキリの鎌も出す。
山盛りとなった。
ゲイルは目を見張る。
「こんなに狩ったのか」
「はい、同行者がとても強かったので」
獲物はシェリルと半分こにしたけど、それでもかなりの量だった。
ゲイルは難しそうな顔をする。
「状態がいいのと悪いのがあるな。査定に時間がかかりそうだ」
「最低でもどれぐらいにはなるかわかりますか? オイゲンさんに渡す武器の強化代金があと5万ゴートほど足りなくて」
「10万ゴート以上は確実だな」
「じゃあ10万ゴート分の先渡しをお願いしたいです」
ゲイルはカウンターの上に金貨と銀貨をジャラッと出した。
12万5000ゴート分だ。一瞬なんで2万5000? と考えて、水路掃除の依頼料だと納得した。
「ほらよ」
「ありがとうございます」
僕はお金をしまった。
ゲイルが牙や毛皮を手に取りながら言う。
「査定結果はまた明日来てくれ」
「はい、わかりました。それでは失礼します」
僕は丁寧に頭を下げて、ギルドを後にした。




