第22話 村で依頼仕事
次の日。
僕は朝起きてお祈りを済ませると、朝食を食べてから宿屋を出た。
道の向かいにある冒険者ギルドへ向かう。
今は武器がないので、戦闘しなくていい依頼はないかなと思っていた。
あとは村の外にちょっと出て偶然魔物を狩ってきたという体裁で、持っている素材の残りを売りたいところ。
ギルドに入ると、カウンターでゲイルが腕を枕にして寝ていた。
――いや、うつぶせになってるだけで起きてる気配がする。
「おはようございます」
「おう」
くぐもった声でゲイルが答えた。
挨拶しといてよかった。寝たふりだったようだ。
僕はそのまま依頼の張られた掲示板へ行く。
昨日は詳しく見ていなかったので、じっくりと見ていく。
『薬草採集』に制限がかかった。10束が最大になってる。毒消し草は20束。
毒消し草の方が群生地が少ないのに。
それから『星月草』の依頼が出ていた。紙が新しい。制限無しか。解呪ポーションの原料だ。
ただ星月草は、昼間は他の草に擬態していて『鑑定』でも見分けられない。
夜に姿を現すので、採集するなら徹夜か森で一泊が必須。
夜の森は武器がないと危険すぎる。やめよう。
――まあ、アイテムボックスにはシェリルと一緒に取った星月草が入ってるけど。
何本あったかな? と思って確認したら、17本あった。一束にはなるか。
他の採集系は『鉱石の採集』『猛毒大蛇の毒牙』『マンティコアの毒針』『コカトリスの石化袋』『ドラゴンの血、心臓、肉、牙、鱗、翼』
――無理でしょ。パーティーでAランク、ソロならSランク必要。
僕は今Fランクなので受けられないけど。
他の依頼は『畑のネズミの駆除』『ジャンピングマイマイの駆除』などがあった。
マイマイ系は毒がめっちゃ効くけど、今は武器がないからやめておこう。
他の退治系も無理となると。
村の中での依頼は無いかな?
配達依頼なんてのは無かった。護衛の依頼も無い。
あとは『倉庫の整理』と『農業水路の掃除』がある。
倉庫は3000ゴートで水路は25000ゴートか。水路掃除が随分と高い。
僕は水路掃除の紙を手に取って眺める。
詳細は、幅と深さが一メートルの水路の掃除。底に溜まったゴミや泥を外へ掻き出すというもの。
南東の森から流れ出る小川は村の南を通って西へと流れていく。
そこから水路を引き込んで田畑に利用しているが、かなりの広範囲を掃除しなくてはいけないようだ。
スコップか何かで浚渫していくなら、すごい時間がかかりそう。十日ぐらい?
――でも、この依頼なら。
外で魔物と遭遇したので倒しましたと嘘を言っても信じて貰えそうだ。
それに僕ならすぐに終わらせられそう。
紙を持ってカウンターへ行く。
ゲイルはしんどそうに呻いている。
「大丈夫ですか? ゲイルさん」
「イノシシをアテに飲み過ぎた」
「二日酔いですか。ほどほどに」
「で、なんだ?」
「今日はこの依頼をお願いします」
僕は依頼の紙と冒険者カードを出した。
ゲイルは眉間にしわを寄せる。
「水路掃除は時間がかかるぞ。いいのか?」
「今、武器を整備中で戦えないので、ちょうどいいかなと」
「途中で投げ出すんじゃねぇぞ。ほら」
掃除する水路の描かれた地図を渡される。
続いて冒険者カードを返して貰い、アイテムボックスにしまった。
「では、行ってきます」
僕は意気揚々と地図を片手にギルドを出た。
村を出て畑のあぜ道をゆっくりとした足取りで歩く。
両側に麦や野菜が青々と生長している。
風が吹いて麦畑を渡り、野菜の葉を揺らす。
――のどかだなぁ。
イーリスを助けて魔王を倒すために、運キャラになって最強の賢者になるという願いを一瞬、忘れそうになる。
こんな村でのんびり過ごせたら、どんなにいいことか。
戦いに疲れた英雄たちが、国の権力も届かない最果ての村で暮らしている理由がわかる気がした。
僕は魔王討伐の旅が終わっても、きっと国には帰れないだろう。
イーリスと二人でこの村で暮らしてもいいんじゃないか? そんなことをふと思った。
畑の中を歩いて農業水路まで来た。
一メートルの幅がある水路。水がさらさらと流れているが、深さは一メートルもない気がした。
水面は50センチメートルぐらいだ。
泥が20~30センチは積もっているのではないだろうか。
水路を眺めていると、農夫の男性が一人、話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
「冒険者ギルドで、水路掃除の仕事を受けてきました」
「おー、助かるよ。あんたが代わりに引き受けてくれたのか。ゲイルの奴、頼んだのになかなかやってくれなくってよ」
農夫は呆れ気味に肩をすくめた。
僕は苦笑して答える。
「二日酔いでしたもんね。浚渫した泥はどこに置けばいいですか?」
「少量ならあぜ道でいいし、大量なら――ほら、作物が植わってない畑があるだろ? あそこに撒いてくれたらいい」
「わかりました。じゃあ掃除しますね」
僕はアイテムボックスを使った掃除を開始した。




