第21話 スキル上げと勇者イーリス
本日2話目。
午後の宿屋の一室。
僕は少し時間ができたので、ステータスの確認をしようと考えた。
ステータス画面を開いてレベルを確認する。Lv21のままだ。
ブッシュボアやネズミを倒したけど。レベルは上がってなかった。
今後は下の上辺りのモンスターを狙って倒していかないとレベルは上がらさそうだ。
近くのダンジョンが適正だからレベル30までは上がりやすいはず。
そのためにはSPを振っておくかぁ。
まずは下級スキルの『投擲Lv1』を10まで上げる。
そうすると中級の『ラッキーショット』が開放されるのでLv10まで上げる。
……ラッキーショットは遠距離攻撃の命中率とクリティカル率が上がり、攻撃が当たると運が上がる。攻撃をミスするまで運は上がったままになる。
だからマスターしておきたいのだけど、今はSPが厳しい。
そもそも遊び人は弓矢が装備できないので、投げ短剣か石ころを投げるしかない。
突きの中級スキル『マジックスライス』も取っておきたい。
敵を真っ二つにするスキル。ただしダメージは入らない。
手品でよくある、箱に入った助手を真っ二つにするマジック、あんな感じのスキル。
上半身と下半身をバラバラにするので、うまく嵌まると敵は移動不可になり、一方的にボコボコにできる。
あとは、遊び人の奥義の一つ『遊園地』のために、ゴミスキルである『ジャグリング』『アクロバット』『口笛』『コミカルダンス』を取らなくてはいけない。
とりあえずマジックスライスもLv1にしておいた。
ステータスはこんな感じになった。
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名前:ユート(ユーティウス・プエル・コムス・ド・ラランティウム)
種族:人間 性別:男 年齢:15歳
職業:遊び人 Lv:21
筋力:F 敏捷:E 智慧:F 運:D
HP:108 MP:12
攻撃力:40 防御力:74
スキル(SP2)
攻撃スキル:
下級:『突きLv10』『投擲Lv10』
中級:『マジックスライスLv1』『ラッキーショットLv10』
補助スキル:
下級:『みかわしステップLv15』
中級:『ボックスハイドLv21』
その他スキル:
『毒攻撃:毎秒24ダメージ』『毒抵抗10%』『敏捷+15』『敏捷+30』『鑑定:物』
装備:
『毒蛇のナイフ』『エルフの礼服』『そよ風のローブ』『銀の指輪』
称号:
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後は明日かな。
そうこうするうちに、夕食ができたと言われたので一階の食堂に降りた。
食堂はラフな格好をした村人たちで半分ぐらい埋まっていた。
僕は空いているテーブルに座る。
女将のマーサが機敏な動きで傍へ来る。
「何にするかい? 今日はシチューかイノシシのステーキがおすすめだよ」
「ではシチューとパン、あとサラダで」
「あいよ! 300ゴートだよ」
安い。
僕は銀貨を3枚出した。
マーサは素早く受け取るとカウンタ奥の厨房へ戻っていった。
待つことしばし。
深い器に入ったホワイトシチューと切れ込みを入れた丸パン、緑のサラダが提供された。
シチューは滑らかな舌触り。牛乳の甘みがおいしい。さらに一口サイズの肉がゴロゴロ入っていておいしかった。
この肉もイノシシかな? と思って鑑定したらネズミ肉だった。
――ひょっとして。僕がギルドに売った素材が、そのまま宿屋の晩ご飯になったのかも。
究極の地産地消かも知れないと思った。
一人で黙々と食べていると、村人たちの騒ぐ声が聞くとはなしに聞こえてきた。
「今日も疲れたなぁ」「毎日仕事ばっかりだ」「どこかにいい女はいねぇかなぁ」
マーサが、ふんっと鼻で笑って腰に手を当てる。
「いるでしょうが、目の前に。こんなとびっきりの熟女、そうはいないよ?」
「熟しすぎてらぁ」
「そりゃ飲み足りないんだよ。酔えば美女に見えるから。飲みな、飲みな!」
「「「違ぇねぇ!」」」
がははと笑う男たちがお酒をおかわりしていた。
客と女将の距離が近くて、なんだかいい感じだなぁと思った。
その後、食べ終えた僕は部屋に戻った。
ベッドに潜り込みながら思う。
――イーリスと別れてから十日ぐらいたった。元気にしているだろうか。
今頃王都で騎士団に守られているかも知れない。レベル上げも開始されてるかな。
そんなことを考えるうちに意識が遠くなって寝た。
◇ ◇ ◇
一方その頃。
夕暮れ時のミッドランド王国の王都。
イーリスは王城の傍にある離宮に向かって歩いていた。
錬兵場での訓練を終えて、タオルで頬を伝う汗や赤髪を拭きつつ、隣を歩く鎧を着た騎士に尋ねる。
「ねえ、騎士団長さん。ユートはまだ見つからないの?」
「今は勇者の保護を終えて、勇者の家族を保護して回る段階に入っています。王城を守る近衛騎士団と王都を守る第一騎士団が勇者様を守り、王国を守る第二騎士団が、現在各地で勇者の家族を保護して回っています」
「保護って、私はお母さんしかいないけど」
「いえ、あなたのお母さんの弟さんや、その両親。父親の両親、その家族まで、保護の対象となっております」
「えっ!? お母さんの弟? お父さんのお母さん? そんな人たち知らない! 会ったこともない!」
「有名になると親戚が増えますからね」
「その人たちも国に保護されるんだ……なんだか納得いかないけど」
「でもあなたにとっては知らない人でも、母にとってはよく知る人でしょう? 弟さんが母親に頼んで、あなたを振り回そうとする可能性も出てきます」
「魔王の手先として?」
「そうです。魔王や魔族は、そういう裏から手を回して勇者を妨害する手も使ってきますので」
「なるほど。それでまとめて保護するってわけね。ユートだけでも先に保護は無理なの?」
「勇者条約で手順が決まっておりますので、申し訳ありません。ただ、身元が確かですから、親族の保護が終わり次第、真っ先に向かわせましょう」
「ありがとう。きっとユートは家で酷い目に遭ってると思うから、早く助け出してあげたいんだ」
「ああ、確か本妻の子ではなくて不遇な扱いを受けているとか。お披露目もされてませんでしたね」
「保護されるまで頑張って生き抜いて欲しいよ」
イーリスは寂しい笑顔を浮かべると、与えられた離宮の中へと入っていった。
騎士団長はその背中を見送りつつ、思案深げに顎を撫でる。
「大丈夫だとは思いますが……念のため、ユート殿を大切に扱うようにと、辺境伯に手紙を出しておきましょうか」
騎士団長は一つ頷くと、また錬兵場へと来た道を戻っていった。




