表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/36

第18話 最果ての村


 二日後。

 気持ちの良い午前の日差しを浴びながら、僕は草原を渡っていた。

 時々、小さいネズミを見つけては狩っていく。他の動物や魔物は相手にしない。

 

 ボックスハイドのスキルで透明になっているので不意を撃つことができた。

 ネズミを仕留めると木箱を出して中へ入り、またボックスハイドを発動させる。


 そうして二十匹ほどネズミを倒した頃合いで、草原が切れて平野になった。

 平野の中にポツンと存在する村へと着いた。

 

 粗末な小屋のような家が四十軒ほどある小さな村。

 村を守る壁や堀はなく、腰ぐらいの高さの柵が村を囲んでいるだけ。


 最果ての村レハーノ。

 もうここは僕が生まれ育ったミッドランド王国ではなく、隣国のカスティーニャ連合王国に入っている。

 死の森経由で入国したから国境の検問もなかった。


 レハーノは別名英雄の村と呼ばれる。

 引退したSランク冒険者たちが余生を過ごしているからだった。



 僕は踏み固められた道沿いに歩いて村に入る。

 何人かの村人が、よそ者の僕に気付いて探るような視線を送って来る。

 ちょっと居心地が悪い。


 敵意がないことを示すため、通りかかった男性に声をかけた。


「あのー、すいません。冒険者ギルドはどこにありますか?」


「へぇ、若いのに冒険者かい? ギルドはこの道まっすぐ行って、村の中央にあるよ」


「ありがとうございます」


 僕は礼儀正しくお礼を言ってその場を離れた。

 ――まあ、ゲームの知識から場所は知ってるんだけど。

 自分が何者かを知ってもらい安心してもらうためだった。



 村の中心は道に面して二階建ての建物があった。

 冒険者ギルドに宿屋、少し離れて村長の家。

 あとは平屋の家ばかり。空き地も多い。

 

 冒険者ギルドの建物は古びているが、作り自体は石やレンガが使われていてしっかりしていた。

 中へ入るとカウンターがある広い部屋で、反対側の壁に掲示板があった。依頼の紙が張り出されている。

 あと奥には資料室と解体場、裏庭に訓練場。二階はギルドマスターの部屋と会議室があるはずだった。


 冒険者ギルドの建物は全部同じ形をしているので間違いないはず。


 しかし僕は入るなり少し途惑っていた。

 人気がほとんど無かったからだ。というか、カウンターに頬杖を突いて座る無精ひげを生やした中年男が一人いるだけ。それ以外の人影は無かった。

 隣に併設されている酒屋はロープが張られて利用できなくなっていた。


 ここまで人がいないとは、正直予想外だった。

 確かに村は大陸の外れのへんぴな場所にはあるけれど、近隣にはドロップのおいしいダンジョンがあるし、ハイレベルな魔具鍛冶屋と魔女の道具屋がある。

 MISOでは人気のある場所の一つで、クラン(プレイヤーたちが所属するグループみたいなもの)がこの村に本部を立てることも多かった。



 でも現実では冒険者は一人もいない様子だった。

 チンピラみたいな冒険者に絡まれる展開にならなかったのは良かったけれど。


 カウンターに座るおっさんが目だけで僕を見ている。眼光が鋭い。

 僕は恐る恐るカウンターに近づいて話しかけた。


「すいません。冒険者になりたくてきました。登録お願いできますか?」


「見かけねぇか顔だな。まあいい、ほら登録用紙だ」


 おっさんがカウンターの上に紙とペンを無造作に置いた。

 僕はペンを取り、必要事項を記入していく。名前はただのユートにしておいた。

 家名を名乗って生きていることがバレたら、何をされるかわかったもんじゃない。

 あとは職業や年齢を書く。


 一通り書き終えておっさんに言った。


「これでいいですか?」


「ふぅん、文字が読み書きできるんだな――って、遊び人か。若いのに大変だな」


「頑張って一人で生きていこうと思います」


「そうかい。あとはこの水晶玉に手を置いたら登録完了だ」


 僕が記入している間におっさんは水晶玉とカードをカウンターの上に用意していた。

 水晶玉に手のひらを乗せると淡い色に光った。

 カードも光る。


 そして冒険者カードができあがった。

 おっさんはカードを僕へ渡しながら言う。


「身分証にもなるからなくすなよ。冒険者ランクはFからスタート。AやSまであるから地道に頑張りな」


「はい……それで、あの、登録料はいくらでしたっけ?」


「お? あ、そうか? ――久しぶりすぎて覚えてねぇや。まあいくらでもいいから置いてけ」


「あ、はい。わかりました」


 僕は銀貨を一枚置いてカードを受け取った。

 おっさんは気軽な口調で言う。


「その代わり、ネズミ見かけたら退治しといてくれ。畑荒らされて困ってんだ」



 ――きた。隠しクエストだ!

 僕は笑顔で答える。


「はい、わかりました。狩れたら持ってきますね。あとは薬草採集を受けたいと思います」


「掲示板に依頼書が張ってあるから、それ持って行きな」


「はい。では行ってきます」


 僕は内心浮かれながら、軽い足取りで冒険者ギルドを出た。


 この村で冒険者登録をした理由。

 一つが試験なしで冒険者になれること。

 もう一つが、この隠しクエストの存在だった。


 何でもないような頼み事に見えて、実は内部的にはしっかりとクエストとして処理されている。

 初回の依頼と一緒に、ネズミを二十匹以上持ってくるとクエスト完了。


 今後、冒険者として依頼をこなすたびに、内部的に倍の評価をしてもらえるようになる。

 冒険者ランクが上がりやすくなる。

 友人同士でパーティー組んで遊んでたのに一人だけランクの上がりが早いことから、考察班が見つけ出した。

 他の街の冒険者ギルドでも隠し依頼は存在していた。筆記試験で満点を取る、など。


 MISOにはこういう裏設定とか隠しクエストみたいなのがたくさんあった。それがやりこみ要素となり、根強い人気に繋がっていたのだけど……。


 まあゲーム情報は僕だけしか知らないのだから、有効に使って行こう。



 僕は通り道をゆっくりと歩く。

 道に面した道具屋を外から眺めて品ぞろえを確かめつつ、村の外へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ