第15話 落ちこぼれエルフ
本日2話目。
フェアリーエルフ村の夜。
僕はシェリルと話し込んでいた。シェリルの母の容態を知るため。
考えながらシェリルに尋ねる。
「僕たちが取ってきた薬草の中に使えるのはあるかな?」
「どうでしょう。本来ならキュアポーションを飲めば治るのですが」
「ないの? ――って、そうか。角ウサギのせいで商人が来れなかったんだ」
「はい。一本飲んで一時期は治ったのですが、また再発して。村人には一人一本と決まっていたのですが無理を言って私の分も飲ませたのですが、治ったと思ったらまた再発してしまい……」
「それでか……うーん」
キュアポーションの原料になる薬草ならある。
しかし、風邪や体調不良を治すだけで、もっと重い病気にはハイキュアポーションでないとダメだ。
ただハイキュアポーションの材料はない。
でも一時期は治ったというのが不可解だ。
再発したのもおかしい。
それに老エルフのクエストにも一人の病気を治すのはなかった。疫病が発生して街から大量の薬を運ぶクエストならあったはずだけど。
――いや、そうか。
シェリルのこともクエストだったと考えると、別のエルフの村――山エルフや森エルフ、砂エルフや海エルフなど――で起こるイベントが、この村で発生しているのかも知れない。
例えば、迷子の海エルフを助けて村へ届けるクエストがあった。
となると、病気の人を助けるのは山エルフのイベントに似ているか。
それなら手持ちの薬草で間に合う。
確認のため、シェリルに尋ねる。
「お母さんの様態、詳しく見させてもらっていい?」
「えっ、ユート先生!? まさか母を治せるのですか?」
「いや、見てみないとわからないけど。ひょっとしたら知ってる病気かも知れなくて」
「本当ですか!? お願いします!」
急ぐシェリルに連れられて、ツリーハウスが並ぶ方へ向かった。
しかし、ツリーハウス近くの人気の少ない場所で、三人の男が立ちはだかった。見た目は若くて二十歳前後に見える。
美形だが軽薄そうに見えた。
真ん中の男がニタニタと笑いながら近づいてくる。
「よお、シェリル。あの話考えてくれたか?」
「お断りしたはずです、ジャン」
「考え直せよ~。こんな大事にしちゃってさ。素直に俺の女になれよ。俺の分のキュアポーション欲しいだろ?」
「イヤです。あなたの恋人になるぐらいなら、ユート先生と一緒になります」
「人間とはずっと一緒にいられないんだぜ?」
「最低な人と長くいるよりマシでしょう?」
「なんだと? 落ちこぼれ組が」
青年がすごむように眉間にしわを寄せて睨んだ。
シェリルは動じずに凜とした表情で、弓を構えて引いた。白く光る魔法の矢が輝く。
「それはユート先生に会うまでの話です」
「な、なにっ!?」
驚いて一歩後ずさる青年。
僕は肩をすくめつつ、二人の間に出た。
「やれやれ。そんな態度や考えでシェリルの恋人になれると思ってるなんて子供過ぎるね」
「なんだと! 人間には関係ないだろ!」
「関係あるよ。僕がどこでシェリルを助けたと思ってんの」
「なに?」
「部屋でも牢屋でもない、食料庫から助け出したんだよ? もうすぐ魔物に食べられるところだったんだ。君がシェリルに無意味な嫌がらせをしたせいでね」
「うっ!」
「その通りよ! ユート先生は命の恩人です! あなたとは違うんです!」
「落ちこぼれが調子に乗るなよ! 生かさせてもらってる恩を忘れるな!」
そう悪態をつくと、男たちは去って行った。
シェリルは弓を下ろすと、ふうっと吐息を吐く。長い金髪が頬にかかった。
「大丈夫、シェリル?」
「関係の無いゴタゴタを見せて申し訳ありません」
「今の誰?」
「村長の息子ジャンです。付き合いを断ったら権力を笠に嫌がらせをしてくるようになってしまって……」
「落ちこぼれ組っていうのは?」
「戦うことも、手に職を付けることも苦手で、村のお荷物になってる子供たちのことです」
「なるほど」
「ですが……私も魔弓士の力がありました。ひょっとしたら、あの子たちも……」
シェリルが訴えるような目で僕を見てくる。青い瞳が潤んでいた。
僕は腕組みをして、全然違うことを考える。
――これ確か、砂エルフの里であったクエストだ。落ちこぼれ組を鍛えて一人前にして村の信頼を得るクエスト。
だったら答えはもう決まっている。
「わかった。シェリルのお母さんを見た後は、その子たちを見てみよう」
「本当ですか!? ありがとうございます、ユート先生!」
シェリルは飛びつくような勢いで、僕の腕に抱きついた。大きな胸の谷が柔らかく僕の腕を挟む。
顔が火照るのを感じつつ僕は目をそらした。
「じゃあ、行こう」
「はいっ」
シェリルに案内されて、ハウスツリーのある一本の大木へと向かった。
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