第14話 村の宴
森の中の広場にあるかがり火が星空を高く照らす夜。
フェアリーエルフの村ではささやかな宴が開かれていた。
行方不明のシェリルが見つかったお祝いと、角ウサギを排除した僕の歓迎を兼ねていた。
フェアリーエルフの村は大きな木の上に家々があり、各家にははしごなども特になかった。フェアリーエルフは空を飛べるので。
僕は飛べないため、宴は広場で開かれていたのだった。
広場にはたくさんのテーブルと椅子が並んでいた。テーブルの上には料理が大皿に盛られている。
テーブルを囲むようにたくさんのエルフ――200人ぐらい――が座っていた。
上座に座る村長アンリが長い髪を揺らして立ち上がる。手にはコップを持っていた。
「皆の者。人の子ユートがシェリルを連れ帰ってきてくれた上、角ウサギを倒してくれた。村の恩人ユートを歓迎しよう。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
アンリがコップを掲げると、エルフたちもコップを掲げた。
アンリの隣に座る僕も少し照れながらコップを掲げた。
それからは無礼講的な宴が始まった。広場のあちこちで笑い声が起こる。
みんな楽しんでいるようだった。
僕は久しぶりに食べる温かい食事を楽しんでいた。
アンリが話しかけてくる。
「フェアリーエルフの食事は口に合うだろうか、ユート殿よ」
「はい、とてもおいしいです。特に山菜の揚げ物がサクサクしておいしいですね」
山菜に薄く衣を付けて揚げたもの。天ぷらのようでおいしい。
「気に入って貰えて何よりだ。こっちの鳥の香草焼きもうまいぞ」
「うわぁ、柔らかい――あつっ」
あふれた肉汁に火傷しそうになった。
ひぃふぅと息を吐く僕を見て、アンリは豪快に笑う。
「ふはは。気を付けて食べたまえ。逃げはしないからな」
「はいでも、おいしいです」
僕は天ぷらや鶏肉、サラダなどを頬張って食べた。
味付けは塩とハーブ、木の実油ぐらいだけれども、本当においしかった。
アンリがしばらく僕の様子を眺めてから言う。
「しかし、ユート殿よ。仕立ての良い服だが、旅をする服ではないのではないか?」
「ええ、まあ。突然追い出されて、用意する暇が無かったと言いますか」
確かに今着ている服は、貴族が公的な場で着る礼服だった。旅と戦闘でボロボロになっている。上着の裾なんて裂けていた。
本当はイーリスと駆け落ちするために、村近くの洞窟に旅の道具や荷物を隠してあったんだけど。
イーリスは今頃王都だろうし、僕も国外。お互い取りに行く暇がないからそのままになってるんだろうな。
アンリは思慮深げに頷く。
「ふむ。だったら、お礼として仕立て直そう。少しは丈夫になるだろう。服が仕上がるまでは滞在するといい」
「ありがとうございます。それと今後、エルフの取引所を利用させて貰うというのは無理でしょうか?」
「うーん。会ってすぐであるから難しい。村の掟で、ある程度の期間をかけて信頼できる人かどうか見定めねばいけなくてな」
アンリは申し訳なさそうに顔をしかめた。
僕は予想外の答えに少し考える。
んん~? シャロンは利用できるって言ってくれたけど、村長的にはまだ僕への信頼度が足りていないのか。
じゃあクエスト――困りごとを解決しないと。
僕は笑顔で言う。
「そうですか。でしたらいつか信用して貰えるよう頑張ります。何か困りごとがあったら言ってくださいね」
「ありがとう、ユート殿。今のところは大丈夫だ。さあ、料理を楽しんでくれ」
その後は料理を食べて、フェアリーエルフたちと話したりした。
しばらくして食事を終えた頃。
宴が続くが、僕は疲れを感じて暇乞いをした。
村長の家に向かおうとしたところ、シェリルが話しかけてきた。手には麻でできた服を持っている。
「ユート先生。お休みですか?」
「うん。おいしいご飯を食べたら、少し眠くなったよ」
「でしたら、こちらの普段着に着替えたら、今着ている服をお渡しください。修繕しておきます」
「ここまでひどくなっても直せるの?」
「母に仕込まれましたから」
シェリルは笑顔で答えた。でもどこかしら寂しそうだった。
その姿に、ピンッと脳裏に閃いた。クエストの予感。
気になったので尋ねる。
「シェリルのお母さんは?」
「今は病気で寝ています。それで薬草を採りに行ったら……」
「薬草」
ふと、ここへ来るまでに薬草を採集したことを思い出した。
シェリルも熱心に探していた。
ただ病気に効く薬草はあっただろうか?
僕は慎重に、何気なく聞いた。期待されないように。
今はクリアできないクエストの可能性があったからだ。
「どんな病気?」
「じょじょに呼吸がしにくくなっていく病気です」
――肺炎かな?
でも医療知識は無いので詳しくはわからない。素人判断は怖い。
ただゲームの知識ならあった。薬師や錬金術師、魔女などは育てたことがある。
当然、調薬や調合の知識はあった。クエストの種類の知識も。
僕はMISOを思い出しつつ、該当するクエストを脳内で探した。




