表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に特定外来生物《世界改変おじさん》が放出されました〜勝手に異世界に召喚されたから常識改変で世界をめちゃくちゃにしても問題ないよね?〜  作者: 黒海苔
倫理観崩壊レベル2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/49

第三十五話:少しずつ変えていたら、街が少しだけ変わっていた件

 グランヴェルに来て、五日が経っていた。


 帝国へ向かうはずが、なんとなく足が止まっていた。


 理由はわかっていた。


 まだ変えていないものが、あった。


 ◇ ◇ ◇


 朝の市場を歩くと、変化がわかった。


 食料の配布が、すっかり当たり前になっていた。


 商人が余り物を渡す。


 孤児が受け取る。


 それだけのことだが、三日前とは空気が違う。


 孤児たちの顔が、少し違った。


 昨日より、少し元気そうだった。


「昨日より活気がありますね」


 エルシアが言った。


「ここ数日で変わりましたよね、この辺り」


「そうだな」


「何か変わったんですかね。街の空気が少し違う気がして」


「さあ」


 恒一は短く答えた。


 理由はわかっていた。


 でも言えなかった。


 ◇ ◇ ◇


 その日の昼。


 恒一は一人で市場の端を歩いていた。


 エルシアもシュラもリリスも、宿に戻っている。


 一人の方が、考えやすかった。


 市場の奥を見た。


 奴隷商会の区画が見えた。


 あの区画は、まだそのままだ。


 一人の商人の価値観を変えただけで、制度は残っている。


 借金奴隷は今日も売られている。


 孤児は今日も路地にいる。


 まだ変わっていないものが、ある。


 恒一は歩き出した。


 ◇ ◇ ◇


 その日の夜。


 恒一はノートを開いた。


 今日書いたのは二文だった。


『《グランヴェル》では、借金の肩代わりとして未成年を差し出す契約は、良識ある商人なら避けるものだという認識が広まっている』


『《グランヴェル》の孤児院や施設に寄付をすることは、商人として評判が上がる行為だという認識が自然に根付いている』


 大きな改変ではない。


 制度を破壊するわけでもない。


 ただ、少しずつ。


 商人たちの中に、新しい常識を植えていく。


 誰も気づかない。


 誰も不思議に思わない。


 恒一はノートを閉じた。


 窓の外を見た。


 《グランヴェル》の夜が静かに流れていた。


 この街で、小さなものが積み重なっていた。


 恒一はそれを、確かに感じていた。


 ◇ ◇ ◇


 翌日。


 翌々日。


 その翌日も。


 恒一は小さな改変を続けた。


 一日に一文か二文。


 急がなかった。


 急ぐ必要はなかった。


 少しずつなら、世界は壊れない。


 そう思っていたから。


 ◇ ◇ ◇


 五日目の夕方。


 エルシアが恒一に声をかけた。


「コウイチさん、そろそろ出発しませんか」


「ああ、そうだな」


「帝国に行くんですよね」


「そうだった」


「師匠はずっと前から行く気でいますし、リリスちゃんも特に意見はなさそうですし」


「わかった。明日出発しよう」


 エルシアは少し安心したような顔をした。


「この街、思ったより居心地が良くなりましたよね」


「そうか?」


「最初より、なんか、穏やかな感じがします。うまく言えないんですけど」


 恒一は頷いた。


「そうだな」


「旅に出るのが少し惜しい気がするのは、私だけですかね」


「俺もそう思う」


 エルシアが少し笑った。


「正直に言ってくれるんですね」


「嘘をつく理由もないから」


 恒一は夕焼けに染まった街を見た。


 来た時とは、少し違う街になっていた。


 誰も気づいていない。


 ただ、少しだけ。


 確かに変わっていた。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ