15 誤解?
「何を……っ!」
「それはこちらのセリフだ。お前は何の権限があって他家の次期当主の縁談に口を出したのだ。それもレィディアンス様がすでに関わっている縁談に──それがどういうことか理解できないのか!?」
「え……」
ここは辺境。婚姻に関しては本人の希望が通りやすい。
しかし、皆が皆恋愛結婚をしているわけではなく、紹介という形でお見合いをして伴侶を決めるものも少なくはないのだ。ただ、その話を受けるか受けないかというところで、家ではなく本人の意思が尊重される。
今回モーブ男爵とオリーブの縁談が当主間で話し合われていた段階であったのと違い、ヴェルトとエボニーの縁談は後者──お見合いの要素は濃いが、ヴェルトを通して既に正式にレィディアンスの耳に入りエボニーを見定めている段階でもあったのだ。
その対象であるエボニーの排除。
オリーブのやったことは辺境伯、そして次期辺境伯であるレィディアンスの方針に異を唱えたことになる。その上その意向を阻止するためにモーブ男爵を嵌め、その企みに加担させようとしたのだ。
──主を謀った罪は重い。
「そ、そんなつもりは――」
「ならばどういうつもりだったというのだ」
「あ、あの娘は王都で不義をはたらき、相手の婚約者である令嬢によって辺境に送られてきたのでしょう?婚約者に頭が上がらないくせに平民を相手に浮気をした低位貴族の尻拭いを、何故辺境男爵家と言うだけでヴェルト様がしなければならないのですか?
レィディアンス様も一年前、私とヴェルト様の話をしたとき『わかった』と言ってくださったではありませんか。なのに・・・なのに何故ヴェルト様の伴侶にという話のある平民を辺境に受け入れたのですかっ・・・中央貴族の言うことなど断ってくださればよかったのではないですか!何故ヴェルト様が望まぬ平民女を伴侶としなければならないのですか!!」
一気にまくしたてたため、はぁはぁと、肩で息をするオリーブ。
その訴えを静かに聞いていたレィディアンスが、オリーブをまっすぐ見て口を開いた。
「色々誤解があるようだ」
誤解?
オリーブはレィディアンスの言っていることが、よくわからなかった。
「そもそもお前の言う『エボニーの不義』に関してだが、厳密に言えば不義ではない。あいつは元々婚約者を溺愛しているからな、そもそも他の女になど興味がないんだ。
それに何故そのような勘違いをしているのかは分からないが、そもそもこの話を持ってきた男は低位貴族ではない。お前の言うエボニーの不義の相手とやらは、ヴェルトの後輩で友人の──」
レィディアンスは一旦言葉をそこで切った。
そして、その言葉が理解できずに立ち尽くすオリーブの様子にため息をつくと、再び口を開いた。
「公爵令息だ。
だが、公爵家という地位などはどうでもいい。お前はただの貴族令嬢という立場にもかかわらず、既に辺境伯家が関与している縁談を潰そうとしたのだ。この行為の意味が分かるか」




