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冒険者クエスト  作者: チョコミルク
剣魔学校入学~
86/87

78 武道大会1

 第一闘技場・第二闘技場では今、剣魔学校の生徒同士が暑いバトルを繰り広げていた。


 そう、遂に武道大会が始まったのだ!

 Fー2からはブイエル・トト・ヤックの3名が出場だ。

 因みにSSー1からはエリオット・シスム・ケンチムの3名で、一緒に特訓していたアネモラとサラも出場みたいだ。


 現在は全員控え室に居る。

 控え室と言っても参加人数が多いので、武技館が使われている。

 闘技場には全校生徒の9割が観戦しているので、客席もほぼ満員状態になっていた。


「えっと・・・あった。ブイエル達はまだ先みたいだね?」


 クラスメイトのクルスがトーナメント表を見ながらそう呟く。


「そうね。ねぇ、ハンスの見立てでは誰が優勝出来そう?」


 それに反応したアデルはハンスに話をふる。


「ん~っ、どうだろ?接近戦ではブイエルが有利だけど、ヤックに遠距離で攻められたら辛いんじゃないかな?ただ、トトは接近戦も遠距離でも対応出来るから、模擬戦ではヤックに勝率では上だけど、ブイエルには勝ち越されているんだよね・・・・・・。そこにエリオット第二王子が入ると更に荒れるだろうね。シスムにケンチムは・・・・・・この四人に当たらなければ、確実に上位を狙えるはずだよ」


 ハンスは今までの特訓を振り返り、そう告げる。


「ちょっと待って、ハンス。ほら、うちの特訓メンバー以外の生徒も含めてだよ?」


 そうつつこんでくるアデル。


「えっ?勿論、含めてのつもりだけど?」

「「「えっ?」」」


 ハンスは武道大会の開催が決まった後日から、ハンスのスキル内に入った生徒等の鑑定をしており、在学生は勿論の事として、教師陣のスキルも確認している。

 熟練の教師陣には勝てないが、生徒達ならスキルは上回っていた。

 だか、その生徒の中にも突出したスキルの持ち主はいくらか居たが、戦闘における熟練土は桁違いにこちらが上だろう。

 そんな内容からハンスは先程の事を言ったのだった。


「私はエリオット第二王子に賭けたわよ?」


 賭け。

 唐突にそんなことを言うアデル。


「悪くない選択だけど、どうかな?因みに僕はヤックかトトか悩んだ結果、間をとってブイエルにしたかな」


 とハンスも言う。


「そこはどっちか選びなさいよ!まぁ、分からないでも無いけどね。因みに私はヤックに賭けたわ」


 デリスもそんなことを言う。


「やった!ハンスもブイエルに賭けたんだね!よし、頑張って応援しなきゃ」


 クラスで一番真面目なタルスまでそう言う。

 みんなが話さしているのは賭けの話だ。

 この学校ではこう言った大会には学校主体で賭けが行われており、内容は簡単だ。

 誰が優勝するかを当てる賭けなのだ。が、全学年の各クラスから3名が武道大会に出ることが出来る事で、出場選手は324名にもなる。

 そんな中から優勝者を当てないといけないので、結果は難しい。

 ただ救済処置として、賭けの締め切りは第一回戦の終了し、第二回戦が始まった時に賭けの締め切りがあるため、気に入った生徒に賭けやすい。

 また、今回は別の賭けも行われる。

 それはエキジビションマッチとして、ハンスとSクラスのクシュム・ボルト・サーガの試合の賭けだ。


 この賭けの内容はあの特訓に参加したものは誰も話題にも出さず、喋ることもない。

 エリオット第二王子を筆頭にSSクラスやFー2クラスのクラスメイトは全員ハンスに安くはない金額を賭けているからだ。

 だが、そこは流石に学校だけあって掛け金の上限額存在した。

 上限額は金貨で5枚と決まっており、それ以上は賭けることが出来なかった。


 ハンスは唯一賭けが行われる事で、決闘を受けた甲斐が出てきたと1人喜んでいる。


『一年生のFー2ヤック選手の入場です!対しましては、二年生のCー3ケリー選手の入場です!』


「おっ、ヤックの番になったみたいだな」


 そうハンスは言いヤックの戦いに集中する。



 ※※※


「一年生ね・・・悪いけど勝たせてもらうわ。痛いのが嫌なら直ぐに降参なさい」


 そうケリーがヤックに言う。

 ケリーは手に杖を持っていることにより、戦士タイプではなく魔法使いタイプの生徒みたいだ。

 急所には固い素材の鎧で守られているみたいだが、ほとんどローブだけしか装備をしていない。

 この武道大会では装備品に指定はない。

 なので、武器も模擬戦用ではなく本物の武器を使っている。

 もし致命的なダメージを追っても、この武道大会の闘技場では


「んっ?先輩。武道大会では年齢は関係ない。まだ、一回戦目だから後の戦いのため余力は残させてもらうよ」


 ヤックは背伸びしながらケリーを挑発する。


「今年の一年生は随分と態度がでかいわね。これはお仕置きが必要みたいね」


 そこで、ケリーは持っている杖を構える。


「・・・・・・あなた、構えないの?」


 だが、一向に武器を構える様子がないヤックに対して、ケリーは問いかける。


「この弓は必要なさそうなんで、先生そろそろ始めない?」


 そう剣魔学校の教師は武道大会における役割は審判役だったり、運営のお仕事だったりと様々だ。

 そう考えると、教師陣だけでは人員が足りない。

 ならどうするのかと言ったら、生徒に手伝ってもらうことだった。

 だが、生徒側も無償でこんな面倒なことはするはずがない。

 少ない額だが金銭が貰えるらしい、面倒だがお金を稼ぐ事が難しいこのご時世にはそれでも有り難いと思える。

 ただ、審判に関しては教師の役割になっていて、お手伝いの生徒はその補佐くらいだ。

 その審判はヤックに試合開始を催促され、お互いに本当に始めて良いか確認後・・・


「それでは、試合開始!」


 と開始を宣言する。


 まず動いたのはケリーの方で魔術の詠唱に入る。

 ヤックに至っては弓を構えず、背中の矢筒から一本の矢を取り出し、矢を確認し何かブツブツと独り言を言っている。


「くっ!舐めすぎよあなた!ファイヤーボール!」


 放たれた魔法は火魔法のファイヤーボールで、クラスの代表の一人になるくらいはあるみたいで、詠唱も早く通常より魔力が練り込まれ、大きなファイヤーボールが出来上がっていた。


「一撃で決めてあげるわ!」


 その言葉に従い、ファイヤーボールはヤックに向けて放たれる。


「あっ、やべ。指輪外すの忘れた・・・」


 そう言ってヤックは指に嵌まっている赤い指輪をポケットにし舞い込み、手に持っていた矢で迫り来るファイヤーボールに向けて突き刺した。


 まぁ、ファイヤーボールにそんな事をしたらどうなるのか?

 勿論、それを機転に爆発するに決まっていた。


「「なっ!」」


 その行動を見ていた審判もケリーも驚きが隠せないでいた。

 そんな行為はただの自殺志望者位なのだから。


 爆炎がヤックが突き出した矢を機転に広がり、一時的に炎がヤックを飲み込む。


「ケホッ・・・まさか指輪の存在を忘れていたなんて・・・」


 そして爆炎の中から、そんな言葉が聞こえてくる。

 少し経ち爆炎も無くなりそこに居たのは、矢を突き出した状態のまま平然としているヤックの姿だった。


「なっ!」


 それを見たケリーは信じれない者を見るような顔でヤックを見る。

 衣服には汚れさえついていなく、ダメージも与えたように見えない状態のヤックに少なからず、恐怖までわき出していた。


「あ~あ、矢が壊れちゃったか・・・これはハンスに扱かれるな・・・・・・」


 違った、唯一のダメージを与えていた箇所は手に持っていた矢のみだった。


「で、それで終わりかな?何なら待つけど、とうかな先輩」


 そう、改めて色とりどりの指輪を外しながら挑発をするヤックだった。


「な、何なのよ!何をしたの!私のファイヤーボールはまともに決まったはずよ!」

「何言っているんだ?まともに決まっただろ?お陰で、ほら、矢が燃えちまったし・・・」


 それどころではない、まともに当たったならば低ランクとはいえ魔物もその一撃で倒すほどの威力だった。

 なら何故?どうなっている?と闘いを見ていた観客も息を飲んで見ている。


「くっ、どうせ、装備の・・・・・・」


 装備のせいとケリーが続けたかったが、ヤックの装備はただの学生服に背中に弓と矢筒をからっているだけなのに気が付いて言葉が止まる。

 唯一着けている装備と言ったら指輪が1つだけ、その指輪を見てもそれほど価値があるようには見えない。


「あのな。ただ魔力が普通より籠った低級の魔法何て、子供騙しレベルなだけって事だよ」


「な、子供騙しって!それなら・・・」


 再度詠唱に入るケリーだが、先程よりも詠唱は長めだ。


「あのな・・・試合の途中に長々と詠唱するかね?普通」


 対してヤックは手をケリーに向け


「エアボム!」


 ハンス直伝のオリジナル魔法で風属性を放つ。

 エアボムは不可視で回避するのが難しい魔法だ。

 ただ、殺傷力は殆んど無く相手を風の爆風で吹き飛ばすだけの魔法だった。


「ぐはっ!」


 その魔法が決まりケリーは場外へと吹き飛ばされた。


「そ、それまで!勝者ヤック!」


 武道大会のルールの1つで場外へ落ちたら無条件で負け。

 そのルールに従って、審判の教師がそう宣言をした。


「楽勝だな」


 ヤックは小さなガッツポーズをFー2クラスの応援席へ向け、控え室に戻っていった。



 ※※※


 少し戻って、一方応援席では


「ヤックって言う奴、学生服のままだぞ?勝負を諦めたのか?」

「武道大会にしてはみすぼらしいわね」

「装備を買う余裕がなかっただけじゃないのか?」

「名前だけじゃ、貴族か平民かも分からないな・・・おっと、はじまるみたいだ」


 ヤックの装備からイチャモンを付ける観客達。

 そして試合が開始されケリーが詠唱に入り魔法が完成する。


「お、おい!あのケリーって言う奴の魔法凄くないか?」

「そうね・・・流石、クラスの代表だけはあるわね・・・」

「あんなデカイファイヤーボールか?取り敢えずあれ危険じゃないか?」

「ま、まぁ、瀕死の怪我なら武舞台の力で、場外に転送されるわよ」


 完成した魔法に対して観客はざわめきだす。


「そ、そうか・・・って、何だ?ヤックって奴、ファイヤーボールに対してまさか矢でどうにかするつもりか?」

「みたいね・・・頭可笑しいんじゃない?彼・・・」


 一方ヤックに対して観客達の評価は著しくないみたいだ。

 ファイヤーボールが直撃し、爆炎が広がりヤックの姿を隠す。


「ほらみろ!直撃したぞ!しかも最後は自爆とは、早かったなこの試合」

「彼、代表になってまで出場したのに何がしたかったのかしら?」


 だが、それも長いことは続かず炎の中からヤックの姿が見えてきた。


「ちょ、彼、場外に転送されてないじゃない!」

「な、なんだ!本当だ・・・って、何で平気なんだアイツ・・・・・・」


 武舞台で二人が何か話しているが、生憎観客席までは聞こえない。

 二人の会話が終わったタイミングでケリーが派手に吹き飛び場外負けとなった。


「はっ?」

「へっ?」


 その状況を見た観客達は何が起こったのか分からない状態だ。

 乾いたような音がなったと思ったら、ケリーが場外に・・・もう、何がなんだか・・・。


「お、おい、あれどうなったんだ?」

「し、知らないわよ」

「ケリーの魔法が暴発したのか?」

「そ、そうか。暴発か、それは有り得るな」


 ヤックのエアボムは不可視なだけに、観客の多くにケリーの魔法が暴発し、勝利を納めた選手として記憶されることになった。


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