6 宿と料理
長かった・・・外での野宿、何も準備してなかったから案外疲れたな。
盗賊の所で食糧や毛布を確保出来ていたのが幸いした。
他の人も用意してなかった人も居たが少しの食糧を渡したら喜んでもらえたし、お礼も言われた。
何だかんだ言ってもそう言われるのは嬉しいことだ。
まぁ、あの文句を言ってきたおじさんも欲しそうなしてたが取り敢えず無視で!
あの悔しそうな表情、あの事がなければ渡しても良かったんだけどね。
んーっ!やっとついたぁ!ここが大都市メルガイ・・・でっけーーっ!門でこの大きさって中はどんな感じなんだろ?
コープルの正門と比べても2倍以上はあるかも。
やばい!物凄く楽しみだよ!出ていく人も入っていく人も沢山でどんくらい居るんだろ?
***半径800mの中には、10063体の個体を確認しました***
あ、うん、ありがと神格。
サラッと現実に戻ったわ・・・
それにしても中に入るのにどん位掛かるんだろうか。
流石にこうも時間掛かるなら退屈だな。
あっちの豪華な馬車が並ぶ所なんかは、あまり混まなくメルガイの中に入れてるのに・・・。
貴族ってこういう時は憧れるよな。父さんが言うには大半が胸くそ悪い奴らばっかだ!って愚痴ってたが、でもやけに家族連れが多い見たいけど、もしかしてこの人達の多くは剣魔学校の受験者だったりしてな、流石に全部では無いみたいだけど。
チラリと横を見ればたちの悪いゴロツキに見える男。
「おい、こら!何を見てやがる!シバくぞコラァ!」
「あはははっ、すみません、何せ田舎から来たばかりで全てが珍しくて。」
「ちぃっ、次その目で見やがったら、ぶん殴るからな!」
「気を付けます。」
そんな会話があっても周りは知らないとばかりに顔をそらす。
先程乗っていた乗合馬車は正門に知が近づく前に降りていた。
追い出されたんじゃなくそこが乗合馬車の乗車場だったからだ。
故にハンスは今は1人でメルガイに入るための列に並んでいる。
※※※
それから時間は流れ、列も3分の1は減っただろうか、メルガイの中へはまだまだ入れそうもない。
はぁ、かなり進んだけど何時になったら中に入れるんだ?あと何時間かで門が締まるとかないよな?こんだけ人を外に出したままで・・・。
それから数時間後、案の定門は締まり明日は朝の6時からの入場受付になるらしい。
都市や町等の門の入場は3通りある。1つめは貴族専用、2つめは商人専用、3つめは一般専用だ。
もちろんハンスは貴族でも無ければ商人でも無いから一般専用に並んでる訳だが。
今門の外には一般専用に並ぶ者しか居ない。
貴族は家名と階位が書かれたプレートを見せるだけで通れる。中にはノンストップで通過する者まで居た。
商人は貴族よりも若干確認する時間が掛かる。商業ギルドが発行するギルドカードと商品の一覧が書いてある物を提示しなければならない。
一般は更に時間が掛かる。一般は警備兵達の動員数は一番多いのだが一人一人時間が掛かる。
まぁ、犯罪者を中にいれないが為に時間が掛かるのは仕方ないが、正式な身分証を持っている者は、商人達見たいに早く入場できる。が、無い者の処理に大幅に時間が掛かっている。
身分証も無いものでも誰か偉い人や貴族の方からの紹介状が在れば別だが。それでも本物か調べないとならない為に、やはり時間が掛かるのだ。
また、この様な事に慣れている者、慣れていない者がやはり居る。
前の方では整理券が貰えるらしい、でも、後ろの方では整理券が無い。と言うか配るのにも時間が掛かる為、全員に配り終える時には朝になる。
そうなると後に並ぶ者達は列と順番を維持したままで明日までこの場で野宿しなければならず、それだけでみんなイライラもしていた。
門は締まっていたが問題が起きてはいけないとそれなりの数の警備兵達が門の外に出ては巡回をしているのだが、それでもあちらこちらで小さな喧嘩をする物が複数いた。
小さなものならばいいが、大きなものとなると警備兵に連行され、何日間かは牢屋に入れられ、出る頃に罰金で支払わないといけない者までいるとか・・・。
その事は大陸中の常識であるためワザワザそんな事をする者が少ない。
そう少ないのだ。
「ちょ!誰かクソ泥棒を捕まえてくれ!俺の荷物を盗みやがった!」
それでもこんな奴もちらほら居る。実はハンスも先程腰に下げていた財布代わりの袋を普通に取られていたのだが・・・。
まぁ、取られているのをバッチリ気付いて放置してたんだが。
中身?ああっ、ダミーだ問題無い!
だが、取られたやつ可哀想だ・・・いや、放置するか!
取られた奴は昼間、俺に文句を言ってた奴だし・・・目を合わせたりしたら殴られたり、殺されたりするしね!
日頃の行いが悪い、残念だったね。
それにしても、俺の布袋盗んだ奴の顔を見れないのが残念だ・・・。
**スリ視点**
「うへへっ、あのガキかなりの大金を稼いでたのか、この重さは期待が出来るぜ。スリ師のエミット様にかかればざっとこんなもんよ!それにしても中身♪中身♪」
「・・・・・・。」
「なにーーーーっ!舐めやがって!あの糞ガキ覚えてやがれ!」
そお言ってハンスからとった布袋を地面に叩きつける。
中からこぼれてきたものは小石やどうしようもない鉄屑と手紙だった。
《ハズレ、これを盗むなんて三流以下のド新人。
貴方には向いてないことなので、明日からでも真面目に生きてみたら?まっ、真面目に生きられなかったからそうなったんだろうけど・・・残念な三流以下のド新人さん・・・。
貴方にお似合いの物を入れているんで使って下さい。》
**ハンスに戻る**
それにしても退屈だな・・・イタズラ半分でスリをからかうのは良いけど・・・結局一番面白い反応は見れなかったし失敗だったな。
実際にメルガイみたいな人が多い所はああいった者が多い。
その為ダミーのお金入れは幾つも用意はしてある。
本当は捕まえた方が良いのだけれど、再度この列に並び直すのもなぁ・・・。
まっ、そこはメルガイの警備隊に期待だな。
ただ並んでいるだけでは暇だから盗賊団から手に入れた物でも確認するか?俺が使えるものも幾つかあるし。
えっと、まず武具はロングソード・斧・弓・槍・棍棒・短剣・ダガー・スモールシールド・鉄の盾・皮の鎧・鉄の鎧矢には毒矢・麻痺矢等だが、幾つかは手入れが行き届いてないのもあるみたいだ。
アイテムは下級ポーション・中級ポーション・アンチポイズン・アンチパラライ・下級マナポーション・毒薬・麻痺薬・松明・縄
食料は干肉・酒瓶・酒樽・肉・水樽
その他には家具類・木材・石材・洋服類
宝で持ってても意味無いやつは売ったし残りは。
鉄鉱石・鉄のインゴット・銅のインゴット・魔石各種・書物
そして
お金は換金分もあるから今は懐の心配は全くない。
ちょっと興味を引かれたのは数は少ないが、風魔結晶や火炎結晶それに水結晶だった。
その結晶は、それぞれの属性が長年封じ込まれた鉱石で純度が高い物はかなりの高額で取引される。
主に錬金術師や鍛冶屋等で属性付与の為に使われるがそれを出来るものも少なく、属性アイテムや武具等はまだ数は少ない。
ダンジョンで見つかる方が数は多いのだとか、ランクの低い粗末な物ならまだ作れる者は多いが。
また、ステータスとして一部の貴族が個人で所有していたりもする。
ステータスとして置いとくものて当然純度は高い高価な物だが。
***
結局、大都市メルガイの中には入れたのはそれから次の日の夕暮れ時だった。
「君、身分証の提示をしてくれ。」
「はい、お願いします。」
ギルドカードは持っていないハンスはコープルの住民票を出す。
「んっ?コープルから来たのか?保護者はどこに居るんだ?」
「いや、1人で来たから保護者は居ないんだけど、居ないと入れないとか?」
「あ、ああ、いや、一人でも入れるが・・・10歳の若さで1人でここまで来るのがなかなか無いから聞いただけだ。ちなみにメルガイには何の用事だ?やっぱり剣魔学校か?」
「はい、そうなんですよ!」
「場所分からなかったらあっちで大都市マップを買うといい。主要な建物なんかは載ってるから便利だぞ?ただ1つ1万貸円と馬鹿高いけどな。わっはははっ!」
「マップがあるんですね!助かります!」
「お、おう!か、買うんだ、高いけど大丈夫なのか?」
「大丈夫です、余分にお金持ってますから」
「そうか、なら、ようこそ大都市メルガイへ!」
「ありがと、おじさん!」
「俺、まだ20半ばなんだが・・・。って行っちまったか、はぁ・・・」
1人の心をくじいたハンスはマップを買い入学試験受付をする為、1度剣魔学校と足を進める。
大通りには色々な店出店が並びかなり賑やっていた。
入学試験がある期間はいつもよりも人が集まりその大通りもお祭騒ぎ並に人で溢れかえる。
大通りを抜け暫くマップを見ながら暫く歩くと遠くに剣魔学校らしき建物が見える。
それからもその建物を目指して歩きようやく受付会場へと辿り着く。
辺りは夕日がさし人も多くは無い。
「どうされました?」
受付らしき人に声をかけられ
「入学試験の受け付けに来たのですが?ここで合ってますか?」
「はい、場所は合ってますよ、ただ本日の受け付けは先ほど終了致しました。また明日9時から受け付け致しますので明日お越しください」
「あ、ああっ、そうなんですね・・・また来ます」
「はい、お待ちしております」
しくじった・・・人が少ないからそうかもって思ったけどやっぱりか。
宿を探さないと泊まるとこが無いや・・・。
疲れた体で剣魔学校を後にするハンス、宿を見つける為マップ片手に移動する。
それから何件も宿を回りハンスは途方に暮れていた。
次でマップに乗っている最後の宿屋、ここを逃せば今日の泊まるところがない。
「はぁ、今日は精神的に疲れた」
そう言って宿屋の扉を開ける
「いらっしゃいませ!お食事ですか?」
「食べ物と泊まりを頼みたいんですが?」
「申し訳ございません!お食事なら大丈夫ですが、本日部屋は空いてないんですよ・・・」
「ああっ、大丈夫・・・他の所も回ったけど同じ感じだったし。そしたら食べ物だけお願いします」
「すみません、かしこまりました、あちらのテーブルへどうぞ!」
とりあえず食べ物は注文した。今日どこに泊まろうか・・・流石にここ何日もまともに寝れてないしな。
今日はゆっくり休みたかったんだけどな・・・。
明日は受付をしなきゃいけないし、メルガイの中も見て回りたいしやる事は一杯あるんだけど。
「お待たせ致しました!サラダとスープのパンセットとオークの肉ステーキです、熱いので気を付けてください」
「美味しそ!」
流石大都市!肉も美味しくスープの味付けも美味しかった。
その美味しさに頬を緩ませるハンス。
「あっ、そうか!すみませんー」
「はーい、お待たせいたしました、どうされました?」
「ここにある同じ食事をお持ち帰りできます?」
「はい、大丈夫ですよ!お1つお持ち帰りですか?」
「えっと、6人分と串焼に軽食も6人前お願いします。」
「え、あ、あはい・・・あの・・・大丈夫ですか?」
「えっ?3万貨円くらいなら余裕ですが、もし足りないなら言ってください」
「3万貸円なら多すぎます、7千630貸円で良いんですが・・・料金ではなくて・・・その量、持って帰れるんですか?」
「それなら問題ないよ」
「・・・分かりました、少々お待ちください」
お金も払い終わり食事も食べ終わりゆっくりしていた。少しして葉っぱや木で出来た器に入った食べ物が出てくる。
お持ち帰り用となっていているが、持ち方や運び方が悪ければこぼれてしまう。
そもそもこういった所でのお持ち帰りは御近所の住人しかしないからどうやって持って帰るのか宿屋の店員は不思議がっている。
お腹も膨れたし帰らないとな、宿が空いていたら良かったんだけど。
「よし!そろそろ帰るか」
「おーい!こっちエールと軽食追加してくれ!」
「は、はいただいま!」
あっ、さっきの店員さんか
「あっ、ごちそうさま!」
「えっ?」
「ん?」
「あ、ありがとうございます?またお越しください?」
「ん?あ、ああ」
何だったんだろあの店員?俺を見ていたが、なんかしたかな?
**店員視点**
ちょっとあの男の子、泊まる宿が無かったから変な注文入れてきたんじゃないか?
流石にこの量はどう考えても持って帰れないだろ!
はぁ、無理に持って行って店の中でこぼすのが落ちか・・・。
ただでさえ忙しいのに仕事増やさないでくれ!
「よし!そろそろ帰るか」
ん?帰るのか、流石に俺も何度かに分けて持ってきた量だからな。
やっぱり、こぼすんだろうな。
こぼす前にもう一度あの子のとこへ行くか。
「おーい!こっちエールと軽食追加してくれ!」
「は、はいただいま!」
ちょっと!少し位タイミング見ろよ!
こっちはそれどころじゃないんだから!
「あっ、ごちそうさま!」
「えっ?」
えっ、手ぶら!?あの料理は?
「ん?」
「あ、ありがとうございます?またお越しください?」
「ん?あ、ああ」
俺・・・ちゃんとあの子に料理を渡したよな?
間違いなく厨房から料理持ってきて渡した筈なんだけど。
「おい!ウォークどうした?」
「あっ、オーナーすみません、暫く休暇いただけないでしょうか?」
「えっ?」
忙しい時期に1人戦力が無くなったこの宿屋は回らなくなり、クレームも相次ぎ来年からのマップに掲載されなくなり、経営が傾いたのはまた別の話。
今日は歩き疲れたし、宿もとれなかったし・・・でも、あの料理は美味しかった。
また食べに行って見ようかな?
3/19日 誤字・脱字修正致しました。




