52 武器術
調剤棟にある第10調剤室、ここでは薬学の学科を学ぶ場所。
俺は本体と別れ、薬学の基礎を学ぶ為ここに居るわけだが、回りには生徒が42人居て、先生が一人だ。
全体的にこの学科を取得する者がいないのか、すべてのランクで合同で行われている。
この学科の先生はマリゥという、ご年配の女性だ。
流石にうちのミトおばあちゃんよりは若いみたいだが、10も離れてないだろう。
授業の初めは、基本の注意事項と、実物の薬草を使った名前と効力の説明だった。
ただ、説明がされているのは基本のメジャーな薬草なので、特に問題なく俺は授業を受けれている。
薬学に詳しいミトおばあちゃんのお陰だな。
ここら辺は、ミトおばあちゃんに貰った薬学のノートにも記載されていたし、ここまでは問題ないな。
「農業の基本は、強い足腰と忍耐を伴う作業に、基本作業の繰り返しだな。まずは土壌の見極めに畑の作り方からやっていく」
ここは、剣魔農場。
こちらも、問題なく授業は進んでいる。
農業の学科は選択率が悪いのか全ランクでの合同授業があっている。
先生は1人で、生徒も9人と少ない。
「ここでは作業道具の説明を一通りしたのち木の選び方に、採取や間引きのやり方を教えるさね。実地するのは明日から・・・先に言っておくが、明日の集合場所は剣魔学校の正門だ。ホームルームが終わったらそこに来てくれ。馬車に乗りマギシャルル第7森林に向かう。そこで、魔物対策として、各自武器の携帯を認める。武器は貸し出すから、自分にあった武器を後で報告してくれ」
ここは林業の学科。
どうやら明日はメルガイの外で、実地訓練に入るらしい。
林業は先生は1人で生徒は8人と小ぢんまりとした人数だ。
これでも全ランクの合同みたいだが、あまりにも少なすぎるように思える。
「造船技術は確かな知識と正確性、体力に力が物をいう。中途半端な奴はいないと思うが、授業に乗り遅れるなよ?・・・ぷぷっ・・」
造船技術の学科では先生は1人で、生徒は11人。
全ランク合同となっているが、高ランククラスからは誰も参加していない。
来ているのはCランクよりもしたのクラスのみだ。
全員が体格も良く、筋肉がこの年齢では付いている者ばかりだ。
本当に10歳位か?って思えるほど。
そんな生徒全員が、静に講義を聞いている。
なんだ、今のは洒落か?洒落なのか?いや、違うだろう。
まさか、体格も顔もゴツい筋肉マッチョな先生がまさか、そんな事はないだろう・・・多分だが・・・。
「うっ・・・。ま、まぁ、なんだ。始めに造船するに辺り基本な道具や部位の説明から入る・・・」
なんだ、やけに先生のテンションが下がったような・・・いや、今は講義をしっかりと聞かないとな。
戻って、武器術学科では二時間目の授業に入っている。
先ほど各個人で基本の型の練習をしたが、今はそれを用いてペアに別れ、打ち込みと受けまたは払いの練習に移った。
「やぁ!はっ!せい!」
そして俺のペアの相手だが、お世辞にも上手いとは言えず。
手に持っている武器に振り回されている。
そこで、極力受けることはせず受け流したり避けたりといった行動で対処していた。
「くっ、せい!やー!」
正直、筋力も柔軟も不足しているその攻撃はゴブリンさえも相手にするのは厳しいものだった。
だが、初めは誰でもそうで仕方ないこととは思う。
そして、基本の型での攻撃だから次にどんな攻撃が来るかもわかる。
だから、こんなことも起こりうる。
「うぐっ!」
何処かで鈍い音と低いくぐもった声が聞こえた。
次第に生徒達の動きが止まり、問題の場所を見る。
問題があった場所には貴族の生徒らしい生徒が、ロングソードを持ち、倒れている生徒を睨み付けている。
倒れている生徒は脇腹を抑え微かに震えている。
それは、唐突な痛みで震えているんだろう。と、予測はできる。
不味いな。
そうハンスも思う状況だった。
そんなハンスは倒れている生徒に向け近付いていく。
「大丈夫か?何があった!」
そう問い掛けたのはキリシマ先生だ。
「何も。そいつが受けのやり方が違っただけですよ」
ロングソードを持った生徒はそう返事をする。
「くっ・・」
ここで、倒れている生徒は何か悔しそうに下を向き、何かを我慢しているような様子だった。
神格!
※※※確かに攻撃側は基本の型でしたが、攻撃に緩急を付けて訓練をしておりました。そして、相手が怯んだところに、横腹に打ち込みました※※※
卑劣な、そんな事していたのか。
これは基本の型の受け攻めの練習だぞ?
※※※間違いないありません※※※
「詳しい話は後で聞こう。エリスティナ先生!怪我人を見てくれ!」
「分かったわ!」
エリスティナ先生が怪我した生徒を見る。
だが、その表情は更に厳しいものとなる。
「キリシマ先生!あばら骨が折れ内蔵にダメージがいってる可能性があるわ!バルトール先生担架を!」
「おぅ!そこの生徒、そう君だ!手伝ってくれ」
「は、はい・・・」
バルトール先生はエリスティナ先生の指示を受け一人の生徒をつれ何処かへ向かう。
「今、応急処置をします。」
エリスティナ先生が怪我した箇所に両手をかざす。
「キュア!」
エリスティナ先生のての先に魔方陣が浮かび上がり、そこから優しい光が怪我に降り注ぐ。
キュア、は聖属性の回復魔法だ。
聖属性の回復魔法は、ローキュアから始まり、キュアと取得難易度も上がっていく。
キュアの魔法が使えれるのは、熟練の神官職か魔術師。
勿論、魔法の適正が高ければ、それ以外の人でも覚えられるが、人数は少なくなる。
魔法は誰にも扱えれるが、適正がなければ初級魔法止まり。
適正がある人は、50人に1人位の割合と言う。
割合は多く見えるが、適正がある人でも然るべき訓練をしないと魔法を使うことができない。
そんな熟練の魔術師。ではないが、エリスティナ先生が使ったキュアは重症の怪我には応急処置程度しかならない。
内蔵の怪我は、高額のポーションかよりランクが高い回復魔法が必要だ。
だが、効果はあったらしく怪我した生徒の表情にゆとりが出来てきた。
「ごめんなさい、私はこれが限界なの・・・今担架が来るわ。その後は医務室で手当てをしてもらって下さい」
「す、すみません、ありがとうございます。少し痛みが引きました・・・ 」
うむ、それでも怪我した生徒は表情が悔しそうだ。
やるか。
「すみません、ちょっと良いですか?」
ハンスはそう言って怪我した生徒に近付く。
「えっ?」
「ちょっと君!この子は怪我を・・・」
エリスティナ先生は俺が怪我した生徒に危害でも加えると思ったのか警戒をしている。
「流石に知ってます。これだけ騒いでるんですから」
苦笑いをしハンスはそう言う。
「ローキュア!」
ハンスは手をかざし魔法を使う。
怪我した生徒中心に魔方陣が展開され、光が降り注ぐ。その量は先に使ったキュア以上の光だ。
やがて光が収まり、魔方陣が拡散していく。
「え、あ、え?・・・痛みが・・・無い?」
「うん、大丈夫みたいだね」
「え、うん・・・」
「はっ?」
「えっ?」
「そ、そんな!」
「あ、あり得ないわ・・・」
「・・・」
無事に受けた怪我は完璧に癒えた。
癒えたのは良かったのだが、怪我の直し方が不味かった。
ハンスが使った回復魔法は聖属性のローキュア。
実際のローキュアであれば、切り傷や擦り傷が癒やすのに用いられ、消費魔力もそんなに多くないのが特徴だ。
だが、ハンスの使ったローキュアはどうだったか、まずあり得ない回復力に魔方陣の大きさどれも比べ物にはならなかった。
ただ、消費魔力は本人にしか詳しくは分からないが・・・
そんな事を見た教師陣が黙っているのかと言ったら、答えは否だった。
「ハンス、今君は何をした?」
真顔のキリシマ先生、いつも気怠そうな表情とは違う。
そんな、キリシマ先生を見たハンスは
「えっ?怪我人の処置をしただけですけど?」
本気で、そう思っていた。
「それは分かる。分かるがそうじゃない。君が使った魔法は何だったと聞いている」
「魔法?ローキュアですが?・・・もしかして、剣魔学校は怪我人に生徒が回復魔法禁止でした?それならすみません、次は気を付けます・・・出来る限り・・・」
「はぁ、怪我人に回復魔法?それは大いに結構!気にせず行ってくれ。だが、問題はそれじゃなく君が使った魔法だ!」
キリシマ先生とのやりとりでも何処か温度差があるハンス。
だが、キリシマ先生との会話にか細い声が聞こえる。
「ローキュア・・・あり得ないわ・・・」
その声はエリスティナ先生だった。
呟くような小さな声でそう言った。
「えっと・・・」
ハンスは本気で困っていた。
自分の使った魔法は可笑しかったのか?
不味かったのかハンスには分からない。
「今あなたはローキュアを唱えたわ。そのローキュアは聖属性の回復魔法で、初歩の魔法ってのは分かるわよね?」
「そ、それは勿論。聖属性の回復魔法では1番使いやすいですし」
「そうね、1番使いやすいって考えは間違ってないわ。ただ、その効力は間違ってるわ。いえ、間違っているのではなくて、あり得ないのよ」
あ、ああ・・効力・・・
「効力ですか・・・」
「そう!効力よ!聖属性の初級魔法ローキュアは擦り傷や小さい切り傷を癒すのが限界なの。それが、今までの皆が使っているローキュアよ」
今までローキュアなら普通に使ってたのに・・・
「えっ、そんな・・・」
「あなたの魔法は誰に教えてもらったの?」
「えっと、何年か前に怪我をして通りすがりの冒険者に治してもらった時に・・・」
そう、神格のトレーニングで、コープルの裏の山で走りまくった時だったよな、あれ・・・
「その冒険者のローキュアも今あなたが使ったローキュアと同じ感じだった?」
「い、いえ。その時は全身擦り傷で・・・何度も重ね掛けしてもらいました・・・」
そういえば、重ね掛けしてたのに疑問は全く無かったな・・・。
とりあえず、家に帰りたかったから・・・門限がギリギリだったんだよな、あの時
「・・・つまり、それを見て自分で覚えたって事なのね」
「はい・・・」
詳しくは神格からその後教えてもらったんだよな・・・
「やっぱり、あなたあり得ないは・・・理事長、そう言う事だったのね・・・」
「えっ?」
理事長?理事長が俺の事を何か言ったのかな?
「いえ、こちらの事よ気にしないで、キリシマ先生」
「分かってる。ほら、まだ授業時間なんだ、続きを始めるぞ!」
無事?に怪我も治り、生徒達は授業へと戻る。
視線が、視線が痛い!
ただ、周りの生徒の視線はハンスに突き刺さったままだが。
「エリスティナ先生!担架を持ってきたぜ!怪我人をのせ、かえ、る?んが?エリスティナ先生・・・あの生徒、重傷じゃなかったんじゃ・・・」
「「あっ・・・」」
((((忘れてたーー!))))
「た、担架・・・」




