51 学科とクラス
次の朝、ハンスの姿は剣魔学校のFー2の教室にあった。
今日から剣魔学校での生活が始まる。
ハンスは担任の先生が来るまで自分の席に静に座り、外を見たり、クラスメイトを見たりと視線だけは忙しいのだった。
何だ?学校って俺が思っていた雰囲気と違うんだが?何て言うか・・・もっと笑顔があったり、近い年なんだしもっとお喋りが1つ有ってもいいと思うが・・・。
ハンスがそう思うのも無理はない。
クラスメイト全員が、早くに教室には入り、各自先行している学科の教科書を開いている。
しかも誰も一言も喋らずに黙々と勉強している。
そんな常態でハンスは落ち着きがなくなっていた。
俺も勉強した方がいいのか?やはり、そんなに学科1つ1つが厳しく、難しいのだろうか?
そう考えていると、担任のキリシマ先生が入ってきた。
「おっ?朝から皆頑張っているみたいだな・・・まぁ、なんだ?一人除いてか・・・」
キリシマ先生やめて、皆の視線が痛いから!
「ほら、教科書を閉まって、出席をとるぞ!まずは、えーっ、アイジャ!」
「はい・・・」
「どうした?元気ないぞ?次はエイル!」
「は、はい」
「よし、次々いくぞ!エウリ!」
「はい」
※※※
「よし、全員いるな、今日から学科別に授業がある。学科によってだが、クラスメイトの中で同じ学科を選んでるなら、学科先で会うことになると思うが、他所のクラスの学生も参加する。何が言いたいかだが、問題になるような喧嘩はしないように注意してくれ。ただ、こっちが悪くないなら負けるなよ?」
いや、どっちだよ!
「それと、他クラス合同で1つの学科をやるにあたって、毎年だが人気の学科のみは、クラス別だったりもする。教室は間違えて移動しないようにな」
キリシマ先生曰く、学科によって参加人数が少なければ、SSランクのクラスからFランクのクラスまでの生徒の合同になるし、逆に良ければランクやクラスごと学科がある。
普通は2~3ランク合同が多いらしい。
まぁ、俺は授業が受けれて、自分のためになるからそれで良しとする。
ホームルーム修了後、俺達は選択した学科の教室に向かう。
しょっぱな、始めある学科は、武器術・薬学・造船技術・農業・林業の5学科、1時間目から分身はフル活用だ。
学科によっては、授業の時間が1時間だったり、2時間だったり、1日だったりとバラバラ。
とりあえず朝の状況は、皆は3ヶ月後の学科別の確認テストに向け、頑張っているんだろう。
そして俺は、武器術の教室へと移動する。
分身達よ、後の学科は任せた。
予め今日ある学科は把握しているので、分身達はそれぞれの学科近くの人気のいない所へ、拠点から転移する。
実は昨日時間が掛かったのは、神格相談のもと転移ポイントの割り出しにかなりの時間が掛かっていたのだ。
武器術の学科があるのは、教室と言うよりも修練場に近い。
ここの場所は、第5武技館という。
そこに着いたハンスは武技館を見渡す。
どうやらこの学科にはFランクの2クラスで合同して行うみたいで、隣のクラスの学生まで来ていた。
Fー1は40人のうち27人が居て、俺達Fー2は42人のうち31来ている。
広いな、かなり人も集まっているみたいだし、・・・武器術か、少しは楽しみだな。
「おぅ!生徒の諸君!お待たせ!」
そう、言いながら入ってきたのは体力試験で、試験管していた、バ、バ、バ?何だったけな?いいや、試験管をしていた先生。
「俺は、武器術担当の講師バルトールだ!よろしく頼む!」
そうそう!バルトール、バルトール先生だ。
うん、思い出した!
んっ?武器術の担当はキリシマ先生じゃなかったっけ?
「よし、まずは準備運動から始めるから、順番は気にしないでいいが、クラスごとに別れてくれ」
バルトールに指示を受け、58人がぞろぞろと動き出す。
「おら!きびきび動け!そんなんだと、時間がいくら有っても足りないぞ!」
無理を言うなよ・・・初めてでどう整列していいのか分かんないんだから。
全く、やけに厳しいな・・・。
「整列したな、それじゃ俺の動きに合わせ準備運動を始める!行くぞ! 1! 2! 3! 4! もっと、気合いを入れろ!怪我するぞ!」
まじか、かなり気合いの入った先生だな。
生徒全員がたじたしになっているぞ?それにしても、学科の開始時間はもうちょっと後じゃなかったっけ?
「・・・バルトール先生、いったい何をやっているんですか?」
んっ?女性の先生か?今度は何事だ?
「おおっ、エリスティナ先生!先生方が揃うまでに、生徒達の身体を暖めとこうと思ってですな、なに、軽く準備運動をと」
軽くだと?気合い入れろって言ってたのは誰だよ!
「バルトール先生・・・今日の武器術は各自の武器選択と基本の型を教え、2時間後には素振りっていう流れと決まってますよ?準備運動はするにしても、まだ早いのではなくて?しかも、学科の開始時刻前ですし・・・」
おっふ、何してくれてんだ!バルトール先生!今の準備運動まるっきり無駄じゃないか!
「エ、エリスティナ先生!すみません!ただ」
「ただ?」
おおっ、エリスティナ先生怖っ!
あの迫力ただ者じゃないぞ!
※※※スキル『威圧』の発動を感知しました※※※
うん、神格ありがとう・・・
「よう!またせた、な?なんだ?何があったんだ?」
「キリシマ先生、また、バルトール先生が先行して生徒達に準備運動をやらせてたみたいです。しかも、気合いを込めて」
「あー、なんだ、生徒諸君!ドンマイ!」
軽いなぁ~、キリシマ先生軽いなぁ~
「それにしても、バルトール先生学科が終わったら、話があるんでよろしく!」
「キ、キリシマ先輩!そ、それは!」
「ああっ!」
「うぐっ、わ、分かりました・・・」
※※※スキル『威圧』の発動を感知しました※※※
怖いな、ここの先生陣!
「それじゃ、武器術学科を始める、ますば自己紹介からだな。俺はキリシマだ。よろしくな。武器術学科では剣術と盾を教える」
「次はわたしね。皆さん初めまして、わたしはエリスティナよ。武器術学科では弓と短剣術を教えるわ」
「バ、バルトールだ、武器術学科では、斧や棍棒、それにメイス等を教える」
「皆さん初めまして、ハンクです。私は格闘術を教えます」
「まぁ、以上4名が武器術を教えるから、始めに各武器のスタイルを決め、先生方の所まで移動してくれ。スタイルが決まってない生徒がいたら、とりあえず俺のとこだな。それじゃ、移動してくれ」
そうして、武器術の学科かようやくスタートした。
まず、各生徒の取り扱う武器を選択、それは余り時間が掛からなかったが、各先生が武器の取り扱いの説明に、基本の構え等いろいろ説明するが、これは主に数が少ない平民の生徒に向けての説明だ。
どうして平民の生徒に向けてなのかは、貴族であれば家庭教師を雇い、武器の取り扱いは既に教えてもらっている。
中には魔物をこの年齢で討伐している者までいるが、平民は家庭教師を雇う余裕が無いものは戦闘の初心者が多い。
「ちっ!平民が・・・俺はもっと上のクラスを目指さなきゃいけないのに・・・」
そう言った声が小さく聞こえる。
実際に隣に居る者が辛うじて聞こえる位だ。だが似たような呟きは色んなとこで聞こえてくる。
はぁ、耳が良いのが今日ほど嫌な日はないな。
各先生が説明を終え、次の授業段階は素振りに入る。
やはりそこでも、授業はスムーズには進まない。
腕の振り方や、武器の握り方を一人一人教えているためだ。ここで、手を抜いたら上手くなるはずはない。分かっているが、早く次の段階へ進みたい生徒が態度を少しずつ悪くする。
授業はそのまま進み、各武器の基本の型の動きを教える教室陣。
流派によって動きは若干違う、その場合は流派を尊重し、流派の基本の型を行う。
貴族でも、先生から注意されてしまう事もある。
「君は?うちのクラスのハンス君か、武器はショートソードの二刀流か。一本でも降るのが慣れていないなら余りお勧めは出来ないぞ?二刀流にするならまずは一本をある程度納めた方が良いと思うが?」
「確かに扱いは難しいですが、徐々に使いやすくはなっているので大丈夫です」
「いや、そうじゃなくて10歳かそこらの子どもで二刀流は早すぎるんだ」
「日頃から鍛えてますので、大丈夫です」
「むぅ、とりあえず、基本の型をしてみてくれ。それで判断させてくれ」
「分かりました」
キリシマ先生に言われ、ハンスは両手に持った、2振りのショートソードを軽く握る。
そして、一呼吸をししなやかに動き始める。
ハンスは久しぶりに、本気で剣の型をなぞる。
流れるような体さばきも見事なもので、周りの者も手を止め視線が引き寄せられていく。
「す、すげぇ・・・」
誰かが言ったその言葉も今のハンスには届かない。
それほど集中したものだった。
それは剣の型をするように言ったキリシマさえも、今のハンスから目が話せない。
綺麗で格好良く、無駄がないその動きはもはや達人の域も通り越していた。
それはハンスの努力もかなりあるのだが、固有スキル『武器使いⅢ』も大きく貢献している。
それに加え、称号の『武器師』の効果も上乗せされているのだった。
「ふっーーっ」
そして最後に一呼吸、その一呼吸で今まで止まっていた時間が動き出さすように、回りがざわつき始める。
「な、何だったんだ・・・今の・・・夢?ではないよな・・・」
「お、おい・・・今の見たか?」
「勿論よ・・・」
「あいつは1体・・・」
「あ、あの子は!」
「・・・」
そんな声が生徒問わず、先生からも辺りからから聞こえてくる。
その雰囲気に疑問を持つ者が一人居た。
周りの視線が半端なく降り注いでいるような事態に気付き
「えっ?どうしたの皆?」
何故こうなったか訳がわからないハンスはそんな言葉を発した。
「ハ、ハンスはどこかで剣を習ったのかな?」
そう、ハンスに問い掛けるキリシマ。
「剣ですか?初めはお父さんから習っていたけど、ここ4年くらいは自分で練習しました」
本当は『神格』指導の下、分身相手に訓練をしていたハンスだったが、回りにはそんな事は言えない。
それに、ハンスの答えも間違いではない。
スキル『神格』もハンスの能力と考えれば・・・それでも、『神格』が、常識を外れたスキルなのだが。
「父親に・・・そ、それは本当か?君の型は親に教えてもらったっていう域を遥かに越えてるぞ?しかも、あの体さばきは剣以外も武術も出来るのか?」
「間違いないです。武術もある程度は出来るし、その他の武器もそうです」
「その他の武器とは?」
「弓や斧に・・・まぁ、ここにある武器ならある程度使えます」
「くっ・・・」
キリシマは「ある程度使える」その言葉で、ハンスの才能を少しながら見抜いてしまった。
冗談じゃない!ハンスの剣は俺を越えているかもしれん。
ましてや他の武器を持っても、結局今のように扱えるんだろう・・・なんて、恐ろしいんだ・・・この年齢でここまでとか・・・理事長は知っているのか?この事を・・・剣だけ見てもSSクラスをも凌駕する実力だ。




