46 ダンジョン地下3ー4階②
今ハンスとコボルトリーダー9匹はお互いに睨み対立していた。
ハンスはダンジョンの挑戦者として、コボルトリーダー達は部屋を守るボスモンスターとして。
ハンスには余裕の表情も見てとれるが、対するコボルトリーダー達はどこか緊張した雰囲気で焦っているようにも見える。
「何をそんなに緊張しているんだか・・・ボス部屋のボスモンスターなのに・・・何処かチグハグのような感じがするな・・・ベビーゴブリンにしても、こいつらにしても」
もしかしたら始めに出てきたボスモンスターのマザーアントの方が強かったりしてな・・・
そんな風にハンスが考えていると突然コボルトの一匹が雄叫びを上げた。
「アゥウオォォォォォォォォン!!」
「「「「!?」」」」
そして、その雄叫びに驚く他のコボルトリーダー達。
どうやら雄叫びを上げたのは盾持ちのコボルトリーダーだったみたいで、驚いたコボルトリーダー達は一斉に盾持ちを睨み殴りかかっている。
「いや、これって戦闘中だったんだよな・・・?」
流石のハンスにも予測不可能な行動に最早立ち尽くしていた。
まさか、ボスモンスター同士の戦闘になってハンスが放置されるとは思わなかった。
「えっと?サンダーライン?」
とりあえずさっさと終わらせようと、本当に攻撃して良いのかと考えながら魔法を放つ。
魔法の向かう先には一塊になっていたコボルトリーダー達だ、どのコボルトリーダーもハンスの放った魔法にも気付かずに全員ドロップアイテムと化した。
「・・・良いのかこれで?まぁ、簡単に次の階に行けるなら得したんだろうな・・・」
何処か釈然としなかったがドロップアイテムを拾い、出てきた宝箱を開けパンチングトラップに引っ掛かり地面を叩くハンス。
少しして落ち着いたのか、宝箱に入っていた金貨袋を中身も確認せずに直しこみ次の階に向かっていった。
現在は地下4階層でゴータが諦めた5階層まであと少しだ。
バルベリアさんが造った階層は7階層までだから残りは3階半分を過ぎている。
因みに4階層の風景も今までと変わらず、洞窟風なダンジョンが続いている。
「ふむ、この階も相変わらず洞窟っぽいな」
ダンジョンとは下の階に潜れば潜るほど出てくる魔物も強くなる。
それはオールドも言っていた、実際にハンスが住んでいたコープルの町の裏にある森なのだが、中央にはあまり高くはないが山があり、その山頂には山ノ上のダンジョンと呼ばれているダンジョンが存在している。
コープルに住む冒険者達もこぞって探索しに行っているみたいで、ダンジョン探索は金になると言うが、実際にハンスが探索しているダンジョンは金になるって言われたら「えっ?何処が?」って考えてしまう。
今の段階だと外で狩りをしているチーム4号のハクやコクセキ達の方が稼ぎは勿論良かった。
最近ではゴータ達ゴブリントリオも加わり更に稼ぐようになっているし、順調に食料の備蓄や家畜として捕まえている動物や魔物も増え続けている。
そんなチーム4号を影で支えているチーム2号のソウシュやセキメそれにコボルト達、彼らは農場や牧場それに討伐した魔物剥ぎ取りに売却、最後に全員の食事作りと一番活躍している。
因みにチーム3号のゴルダとトウカは大都市メルガイで大工の基礎を学んでいる。
分身3号とゴルダにトウカはまだ大工の親方の所でひたすらにその知識を蓄えている。
大工の知識と経験が溜まれば次は加治の知識をと忙しい毎日を過ごしている。
最近ではそんなうちらに新たな仲間が加わっていて、更に作業の手助けにもなる予定だ。
その者はウッドウルフのライフ・バッカス・モヒートにキラーエイプのジンキラーに犯罪奴隷として来た16名の者達だ、まだその活躍は未知数でかなり期待しているところではある。
そう思うと大所帯何だなぁと思う。
そのほとんどはハンスのスキルでもある『従う者』のお陰とも言える。
そのスキルが無ければこうまで順調には行かなかっただろう。
そんなハンスは大都市メルガイにある剣魔学校に入学が決まっていて、入学までの残り約1ヶ月を切っている。
その入学の前にはダンジョンを踏破したいと思っているハンスだったが、ある意味悪質な宝箱のトラップに悩まされたり、頭がいたくなりそうなるダンジョンの魔物に苦労をしていた。
魔物事態はハンスにとっても脅威でもなく、自分の戦闘の練習相手と思って挑んではいるがまだ練習相手になったのは、2階層のゴブリン達だけだった。
そんなこんなでハンスが今居るところは4階層だ、ここの風景は今までと変わらず洞窟タイプだったのだが、予想をしていなかったことが起き苦戦をしていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
先ほどから4階層にはそんなハンスの声だけが響いている。
4階層に入って約一時間位経ったが魔物は1匹たりとも出てこない、じゃあ何がハンスに起こっているのか・・・
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!聞いてない!聞いてないよ!こんなダンジョン!」
ハンスに襲ってくるは前に置いてある障害物の数々、ただ置かれているだけなら避けて通れば何も問題はなかった。が、問題があるのは地面の方だった。
「何だよ!この地面!め、めんどくせー!」
最早4階層に降りてきた時に装備していたショートソードはとっくにアイテムボックスにしまい、何も持っていない身軽な状態だ。
そうしないと非常に問題がある階層だった。
前から(・・・)迫ってくる岩や樽、木材等障害物の種類は様々でその障害物を避けながら先に進まないとこの階層ではボス部屋に辿り着く事が出来ないみたいだ。
因みにハンスが1時間で4階層を踏破した距離は未だに20㎞位で入り口からここまでは真っ直ぐな直線だった。
今いる場所から前を見るが障害物のお陰で遠い先の方までは見えないにしても、ボス部屋まで真っ直ぐな一本道と予想は出来る。
それが当たっているかは全く分からないが・・・。
そして、ハンスが1時間で進んだ距離は20㎞・・・通常ならあり得ないペースであった。
ハンスが本気で走ったなら1時間で70㎞は超す、今もハンスは本気も本気、全力で走っている。
このボス部屋の方から入り口にかなりの早い速度で動いている地面が無ければもうボス部屋には着いていたかもしれない。
更に達が悪いのは、動いている地面のスピードに対抗してハンスは逆らうように走っている為、ただ地面に設置されている障害物も今までに味わったことがない速さで接近してくる。
しかも、避けにくいように設置された障害物に当たると結構な距離戻されてしまう。
ここまで来たハンスはどれくらい障害物にぶち当たり入り口の方向に戻されたか最早分からない。
全力で走れば何とか地面のスピードには対抗出来るが、少しでも気を抜いてしまうと地面のスピードに負けてしまう。
「がふっ!」
そうしてまた障害物にぶち当たり尻餅を着いてしまうハンスだった。
「ああああっ!もぅ!全然先が見えない!障害物邪魔!」
まさに悪質なダンジョンとも言える。
ハンスは急いで立ち上がり、攻略を再開する。
幸いハンスのスキルのお蔭で疲れやダメージは全くない、確かにバルベリアさんが言っていた安全でそれほど危険がないダンジョンって言っていた意味は分かる。
だが、ゴータの為に創られたダンジョンってのもこの階層なら分かる気がする。
種族はゴブリンだが最早ゴブリンを辞めたゴータを見れば・・・また、バルベリアさんの特訓も相当辛いものだったみたいで、ゴータ本人は地獄とまで言っていてその時の目が死んでいた。
そうこうしているうちに更に1時間が経ち未だに障害物と動く地面に苦戦をしていた。
時間的にも今日の踏破は無理と判断しハンスは来た道を戻り4階層を上がっていく。
この時、行に2時間かけた道のりは帰りは15分と短い時間で入り口に着いたハンスは少しながら精神にダメージを受けてしまっていた。
そして、ダンジョンから帰還したハンスは拠点へ帰って来て装備等の点検をし、みんなが揃った段階で遅い晩飯となった。
そこで、俺はあのダンジョンの経験者でもあるゴータに話を聞くことにした。
「なぁ、ゴータ?バルベリアさんが創ったダンジョンで聞きたいんだけどいいか?」
「あのダンジョンっすか・・・どうしましやした?」
あまり思い出したくないのか、肉にかぶり付きながらその表情は何処か暗かった。
「地下4階層の動く階層はどうやったら抜けれるんだ?はっきり言って障害物が邪魔で中々進まないんだけど、って逆に戻されるんだよな・・・」
動く階層に興味を持ったのか、コクセキが聞いてきた。
「ハンス様?その動く階層とは?」
それから皆にダンジョンでの魔物や宝箱、それにトラップ等自分が経験した出来事を話してみた。
「ハンス様、自分の時も連携してくるゴブリンには苦労させられたっすよ、でもそこまで強くは無かったっすよ?一匹づつならせいぜい、自分がハンス様に召喚された時よりも弱く感じたっす」
「そうなのか?俺の時にたまたま強いのに当たったのかな?それともスキルにあった【進化種】と称号の【上位進化種】のせいかも知れないな」
「【進化種】と【上位進化種】ですか・・・それはどんなゴブリンでした?」
「んっ?ハク気になるのか?」
「はい・・・その進化?とやらがどの位他のゴブリンよりも強くなるのか興味があります」
ハクはそう言いながらも腕を組む。
「ん~っ、確かにな・・・食事の後召喚してみるか?」
「よろしいんですか?ありがとうございます」
「で、ゴータ問題の4階層はどうやって踏破したんだ?」
「自分も何回もチャレンジしてもダメだったんで、バルベリア様に聞いたんすけど、避け方に無駄が多いって言われてしまい、翌日からバルベリア様の魔法を避ける訓練がしばらく続いたっす・・・」
ゴータは視線を流し遠くを見つめる。
俺はそんなゴータを見てかなり大変な修行だったんだと思った。
「無駄な動きか・・・皆にちょっと明日お願いがあるんだけどいいかな?」




