44 ダンジョン地下②階
ハンスがボスフロアに入ってから数分が経過した。
数分経ったとは言え、ハンスの状況は無傷。
ゴブリン達はソルジャーの1匹が手負いで、片方のソルジャーは腕にかすり傷がついているのみ、メイジの3匹は魔力を幾らか消費している。
ハンスにとって実際にメイジが後何発魔法を打てるか分からないが、メイジの疲れようから後数発打てば魔力は尽きるかもしれないと感じる所はあった。
メイジから受けたファイヤーアローとウォーターアローのダメージはハンスの耐性スキル【属性魔法耐性V】によって余りダメージは受けておらず、既に【オートリジェネレーション】によって回復していた。
お互いの立ち位置はゴブリンソルジャー2匹が前にいて、ゴブリンメイジが後ろに位置していた。
「やっぱりメイジからやるか!」
そう言うとハンスはゴブリンメイジの1匹に狙いを定め距離を縮める。
それに伴ってか、仲間を守るようにゴブリンソルジャーも2匹ハンスへと向かってくる。
だが、手負いのゴブリンソルジャーは痛みのせいか、もう1匹よりは動きが遅い。
ハンスに接近されたゴブリンメイジは魔法の発動が間に合わないのか、いまだに魔法の詠唱をしていて少しでも距離を離そうと後ろに後退していく。
「遅い!」
それでもハンスの身体能力はスキルや魔法を使わずとも高く、ゴブリンソルジャーに追い付かれることなく、ゴブリンメイジに近付けた。
ハンスが攻撃する瞬間にゴブリンメイジは杖をハンスに向け魔法を放とうとしていた。
だが、ハンスのショートソードで杖をずらされ意図しない方向へと放たれるウォーターアロー。
ゴブリンメイジはその魔法を最後にハンスの攻撃によって首が胴から離れた。
「グギ!」
ゴブリンメイジが1匹倒されゴブリンソルジャーはハンスへと接近していたが、もう1匹のゴブリンメイジへと走っていく。
ゴブリンメイジからファイヤーアローが前や側面から放たれるが、慌てることはしない。
放たれたファイヤーアローは実際にハンスの腕と同じ大きさだったため、今度はショートソードで切り払ったりせずに回避を選ぶ。
避ける事によって2つのファイヤーアローはハンスの後方や明後日の方へ飛んでいった。
「グゲェ!」
運が悪かったのか、正面から放たれたファイヤーアローは後ろから接近していた手負いのゴブリンソルジャーに当たり、走っていた勢いのまま倒れこんだ。
「ラッキー!」
対角線にはもう一匹のゴブリンソルジャーも居たがこちらはなんとか避ける事が出来たみたいで、今は倒れこんだゴブリンソルジャーに視線を送っている。
ゴブリンメイジも、まさか仲間に当たるとは思わなかったのだろうか、次の魔法の詠唱もせずに突っ立っているのみだった。
「戦闘中なんだけどな!」
そんなハンスの一言と共に振るわれるショートソードによってゴブリンメイジは倒された。
「残り2匹・・・いや、3匹?」
魔法のダメージもあってもうまともに動けないだろうゴブリンソルジャーもここで数に入れても良いのか分からなかったが、ハンスは残りのゴブリンメイジに向けて走り出す。
最後のゴブリンメイジも仲間のメイジが倒されるのを見て、慌てて魔法の詠唱に入った。
「ギィグ!」
ハンスがゴブリンメイジにたどり着く前にゴブリンソルジャーの一匹が追い付き、我武者羅ではあるが武器を振るってきた。
「お前の相手はまた後でしたかったんだけど!」
ゴブリンソルジャーのロングソードを左手のショートソードで受け流し、右手のショートソードで反撃をするも、ゴブリンソルジャーの驚異的な運動神経で薄皮を切り裂く程度で避けられてしまった。
「今のを避けるって・・・」
それでも攻撃の手はお互いに緩められない、一撃二撃と撃ち合っていく。
ショートソードの材質は鉄で出来ていて、普通なら撃ち合う度にボロボロになっていき、結果折れてしまうのが当たり前なのだが、ハンスのショートソードには2本とも【再生】がついている。
ショートソードについたスキル【再生】は魔力を流せば徐々にだが元の状態に回復されていくというもので、魔力さえあればいつでも刃こぼれがない状態に戻っていくというものだ。
今ハンスがゴブリンソルジャーと打ち合っているが、ゴブリンソルジャーの剣も中々の業物なのか変化は見られない。
「くっ、しつこい!」
「グッ、ゴガァ!」
ゴブリンソルジャーと剣を交える最中、ゴブリンメイジは距離をとり詠唱に入る。
仲間の魔法に当たったゴブリンソルジャーも打ち合いに合流し、人数的にハンスが不利になるが、それでも追い込まれているわけではない。
実際に剣の腕・スピード・力・体力とどれもハンスが勝っている。
だが、それでもまだゴブリン達を倒せないのはゴブリン達が変に連携をしてくるせいだった。
ハンスは魔物の討伐経験はこの年であるものの、人間相手と言うなら経験はあまりない。
もちろん盗賊等と戦った経験もあるが、そのときはスキルや魔法を使って楽していた経験で、こうして自分の魔法を使わず縛りプレイの中、相手がこうも連携してくるとは思わなかった。
しかも魔物が・・・。
「これも、俺が今よりも強くなるためか・・・仕方がない・・・やるか!」
気持ちを切り替え更にスピードを上げるハンスに着いてこれなくなったゴブリンソルジャー達は各々隙が出始める。
「グ、グガァァ!」
先にハンスが沈めたのは手負いのゴブリンソルジャーだった。
傷の痛みでハンスのスピードに着いてこれず、勝手に体制を崩しそのままショートソードにより喉を突かれ、苦しそうに悶えそのまま動かなくなった。
「よし、次だ!」
残りのゴブリンソルジャーもハンスが止めを刺す時に攻撃していたが呆気なくもう1本のショートソードに弾かれる。
「ギィ!」
「もらった!」
突きで止めをさしたショートソードを突き出しゴブリンソルジャーの胸に沈める。
「残りはメイジか・・・」
先程から魔法の詠唱に入っているゴブリンメイジだったが中々魔法を放つ気配がない。
「魔力切れか?なら、後は楽だね」
最後はゴブリンメイジの魔力切れにより簡単に戦いの幕が降りた。
その後はドロップアイテムを拾い部屋の中央に出てきた宝箱に視線を向ける。
「また、どうせトラップがあるんだよな・・・」
1つ前の階でボスを倒した後のトラップに引っ掛かったハンスは少し気落ちしながらトラップの解除に挑んだ。
「・・・・・・難しい・・・ってか!どう解除するんだよ!教えてもらった通りにしてみたが中々大変だ!」
その後、無事に後ろから宝箱を開けハンスは中に入っていた物を確認する。
「難しかった、あれは難しかった・・・でっ、中身・・・は?」
宝箱に入っていた何かの破片と思われる物を手に取り鑑定するも、コアの欠片としか分からず捨てるにしても態々宝箱に入っているくらいだから何かしら意味があるものと思い収納した。
「結局この部屋では疲れただけで、これと言って旨味が無かったわけだけど・・・」
ゴブリン達からのドロップ品は魔石にゴブリンの腰布だった。
「腰布って・・・あいつらそれよりもいい装備してたよね・・・?武器に至ってはかなり良い剣も装備してたし・・・ゴブリンと一緒で消えるし・・・腰布って・・・」
ぶつぶつ良いながらもハンスは地下3階を目指し奥に進む。
「ゴータは5階までで、バルベリアさんは7階まで創ったって言ってたよね?結局何階まで在るんだろうか?後1ヶ月ちょいで剣魔学校が始まるから、それまでにはダンジョンクリアーしてみたいな」
ボス部屋の奥には下へ降りる通路があり、1段1段ゆっくりと降りていくと、この階も上と変わらない岩で囲まれた通路が伸びていた。
上の階と違い少しひんやりし、じめじめしていてハンスは若干渋い顔をする。
「このじめじめした場所はちょっと気持ち悪いな・・・さっさと次の階に行きたいな」
そう思い少し早歩きをしながら奥へ進んで行くと、暫くして小さな広場に出たハンスはダンジョンで始めての魔物と遭遇した。
種族 スライム
固有スキル 【吸収】【分裂】【溶解液】
「スライム・・・」
広場の出口付近で水溜まりっぽいものがうねっている様子を見て、ハンスは少し昔の事を思い出した。
それは、父オールドと母ローズに連れられコープル裏の森の中でミトおばあちゃんのために薬草を採取しに行った時に、水溜まりと思った場所にジャンプで入り込み靴を溶かされた時の思い出を・・・あの時はバルベリアさん達にあった後だったから酷い怪我はしなかったが、親二人に物凄く怒られてしまった。
それ以降ハンスはスライムが苦手、ではなく好きにはなれなかった。
まぁ、魔物で液状のスライムを好だ!って言う者が居るかは分からないが・・・因にスライムは水溜まりボディーの中にある核を破壊せれば難しくなく倒せる。
ただ、その核は魔石自体でもあり壊せばギルド等には売れなくなるという、更にはその液体は錬金術で使えるとかで特別な作りがしてある瓶に入れると売れるのだが、毎度荷物になるその瓶を持ち歩く冒険者も居らず、その素材事態は枯渇気味だとか昔オールドが言っていた。
更には、武器で攻撃するならスライムの溶解液でボロボロに、何とも冒険者泣かせの魔物で有名らしい。
そんな魔物のスライムであるが、あまり思考回路が存在せずただ触れた物を溶かし自分に吸収する。
普段は空気中の魔素を吸収し生きているのだとか、魔素が濃い場所によく見かけられるって言っていた。
「ファイヤーアロー!」
ぼしゅ・・・
そんなスライム相手に魔法を使い倒すハンス。
倒されたスライムからのドロップは【スライムの体液】だった。
御丁寧に瓶詰めで・・・
「まぢか・・・ドロップアイテムって不思議だよな・・・しかもさっきのゴブリンに至っては腰布って・・・」
未だにゴブリンのドロップアイテムに引きずっているハンスだった。




