40 ダンジョンから帰って
ダンジョンから出たハンスはそのまま豪邸まで帰り着いていた。
今は昼を過ぎてだいたい3時位の時間。
そういえば昼飯を食べていなかった事を思いだし、1人食堂でご飯を食べていた。
「体力的には問題けど、キツかったのは精神的にキツかったな」
昼飯は朝持たされた弁当で、焼いた肉にスープそれにパンと簡単なものだった。
焼いた肉は時間が経つと固くなるが、俺のアイテムボックスに入れさえすれば時間の経過が止まるため、今食べても出来たてで問題はなかった。
「魔物の多さと、あのトラッブがキツかったな・・・」
ソウシュやセキメ達は農場で作業をし、コクセキ達はメルガイの近くのマギシャル第7森林の探索。
ゴルダ達はメルガイで大工の手伝い兼修業に出ている。
「特にトラッブだよな・・・いい方法はないかな・・・」
それ故ハンスは1人で豪邸に居ることになる。
因みに奴隷達はソウシュに連れられ農場で扱かれているらしい。
「実際に宝箱のトラップっていったらパンチングトラップ以外にも何かありそうだな。今のところパンチングトラップしか無いわけだけど・・・」
そう言いながらも遅めの昼食を食べ終わったハンス。
「ギルドに行ってみるか」
昼食の食べ終わった皿等を片付けメルガイへと空間を繋ぐ。
そうしてやって来たメルガイ。
現在は人が中々通らない路地裏だ、そこから冒険者ギルドに向かうハンス。
「相変わらずメルガイは人が多いな」
路地裏から出て表通りを見渡せば沢山の人で溢れ帰っている。
そこに居るのは冒険者や警備兵、主婦に子供、老人に商人、何かの職人達。
種族もバラバラでヒューマンに獣人、エルフにドワーフ、ホビットに竜人等、多種多様居る。
「竜人は直接初めて見たな・・・」
竜人はドラゴニュートとも呼ばれ、高い戦闘力に加え空も飛べる者まで居るのだとか、中にはブレスを吐く者もいれば、防御に突飛した者まで居るのだとか。
竜人がパーティーに1人居るだけで、パーティーの死亡率がかなり下がるとまで言われている。
コープルとの違いを感じながら、ハンスはキョロキョロと回りを見ながら歩いていく。
因みにハンスはちょくちょくメルガイに来ている分身達の記憶もあるため、道に迷うことなく冒険者ギルドに辿り着く。
中からは賑やかな笑い声などが聞こえてくる。
クエストに出ていた冒険者達がどうやら戻ってきて、既にギルドに併設してある酒場で騒いでいるようだった。
「冒険者か、丁度いい。」
ドアを開けハンスは酒場の方へと歩いていく。
「がはははっ!んっ?坊主、ここにしてはちょっと年齢が早すぎないか?」
ハンスが近付いたのは一番近くにあったテーブルで飲んでいた3人組の冒険者達。
1人はドワーフの男性に、1人は兎の獣人の男性、最後の1人はヒューマンの女性だ。
「こんにちは」
ドワーフの男性はお酒が進んでいるようで顔が既に赤い。
「こんにちは、どうしたの?親とはぐれたの?」
そう言ってきたヒューマンの女性。
「いえ、少し話を聞きたくて。今大丈夫ですか?」
「話か?良いぜ、でっ、聞きたいこととは?」
兎の獣人が返事を返してきてくれる。
「がはははっ!まずは坊主も一杯どうだ?」
「いや、まだ早いだろ!」
ドワーフの誘いに兎の獣人がつつこみを入れる。
「はははっ、すみません、ダンジョンの宝箱についてなんですが」
「宝箱?どうしてあなたみたいな子供がそんな事を?」
そう返してきたヒューマンの女性。
「ちょっと興味があって・・・でっ、宝箱のトラップってどうやって対処してます?」
「あーっ、トラップか・・・」
とドワーフの男性
「トラップね・・・」
とヒューマンの女性
「トラップなら俺の担当だな・・・」
と兎の獣人。
「担当とかあるんですね。トラップの回避の仕方はどうされてますか?」
「そうだな、基本は罠が有るか無いかを調べて、あった場合は解除を試みてるな」
「宝箱のトラップって解除出来るんですか?」
「ああ、出来るぜ。ただかなり難しいから、解除出来なければ宝箱は開けずに放置することもある」
「そうなると何か悔しいですね」
「そうだな・・・だが危険性がない罠の場合は、安全対策を取って開ける時もあるぞ」
「安全な開け方?」
「そうだ、矢とか落とし穴は宝箱の前に立った奴が対象になるから後ろから開けたりな」
「・・・そんな方法は思い付かなかったな・・・。因みに罠ってどうやって解除するんですか?」
「解除するときはトラップツールを使うんだが、これが難しい」
そう言って兎の獣人はトラップツールをハンスに見せる。
「それって何処で手に入れているんですか?」
その後も話を聞いたハンス。
トラップツールはギルドで販売しているらしい事が分かった。
ただ、初級用だ。
それ以上になると鍛冶屋にオーダメイドで金額も高いらしい。
そして、簡単な解除のやり方を聞きハンスはお礼として食事代を払い、無事にトラップツールをギルドで買うことが出来た。
その後は拠点へ戻りトラップツールの中を見てみる。
中には色々と入っていて何にどれを使うか全く分からなかった。
ただ買うだけではトラップの解除が出来ない事に少なからずショックを受けたハンス。
拠点へ戻ってきてみると、ソウシュ達が戻ってきており、セキメ達は夕食の準備をしていた。
ゴルダ達とコクセキ達はまだ戻ってきていないみたいだ。
今の時間にすることがないハンスは、明日の行動は何をするか1人自分の部屋で考える。
「明日は実家に帰って書類を貰いその提出に、その後はまたダンジョン・・・いや、トラップをどうにかしたいな。解除のやり方を調べないといけないから本屋か図書館に行ってみるか」
案外早めに予定が決まり再度することがなくなったハンスは、ダンジョンでの戦闘を思いだし考えてみる。
「ダンジョンか・・・」
今回はかなり魔法を使うことが多かった。
ただ、ハンスは戦闘をいままでしてきて、どこか戦闘も魔法も効率が悪く感じた。
「新しい魔法か・・・」
新しい魔法、それはどんなシチュエーションにも対応したそれぞれの魔法。
一般が使う魔法とは、呪文の詠唱を終えて発動する魔法で威力は個人差によりバラバラだが。
魔法の内容・・・つまり、魔法の在り方は固定されている。
例えば、【ファイヤーアロー】だと威力は人それぞれあるが、効果は、火で出来た矢が相手に向かい、衝撃と火属性のダメージを与える。
って言う風になっている。
ハンスはローズにしか魔法は教えてもらなかったために智識が片寄っている。
教えてもらったのは、各属性の初級まで。
初級は○○ボールや○○アローと言った魔法で、ハンスが使ったサンダーボールも初級の魔法だ。
初級魔法は使いやすく詠唱も短いから、熟練者にも重宝されている。
因みに○○アローは魔法の矢で、○○ボールに比べるとスピードは早く、飛距離も長い。
だが、弓矢と同じで複数の相手には不向きとされている。
中級魔法に上級魔法になると、使いやすく威力も大きいものもあるが、ハンスにはその知識がない。
因みに神格なら知ってそうだが、※※※簡単に教え、それが当たり前になりハンス様がダメ人間になる恐れが在りますので、最低限は調べてください※※※とこんな反応だ。
俺のスキル【神格】は厳しい人、いや、スキルである。
教えてくれても、ねぇ。
※※※駄目です※※※
あっ、はい・・・。
そういった経緯で、中級魔法以上からは自分で調べないといけない、もしくは誰かに習わないといけない。
それでも、雷属性の【サンダーライン】や回復魔法等は習得するのに手伝ってもらったんだが・・・それ以降はさっぱり教えてくれる気配さえない。
頼りきったら俺が駄目人間になるからそう厳しくしてくれているらしいが、もう少し手伝ってくれても・・・
※※※駄目です※※※
・・・・・・。
「ハンス様、お食事が用意できました」
ここで晩御飯ができたみたいで、俺を呼びにセキメが来てくれた。
「あ、うん、今行くよ」
部屋のドアを開けるとセキメが待っていてくれた。
「お食事お待たせいたしました」
「大丈夫だよ、ありがとうセキメ」
そして食堂では聖魔人やゴータ達が揃っている。
「コクセキ、ちょっと聞きたいんだけど?」
「どうしました?」
「魔法についてだけど、どんな感じに使ってるの?」
「魔法ですか?」
「今日ダンジョンに行ってみたんだけど、魔法が強すぎたり弱すぎたりで・・・実践ならコクセキ達が今多いよね?」
「あー、分かります。自分も同じでしたから、魔物によっては攻撃してはいけない所もありますから」
「えっ、それ初めて聞いたよ?攻撃しちゃいけない所ってあったんだ」
「如何に素材として、食材として倒せるかの手加減は難しいですね。失敗すれば素材としての価値、食材としての量が減りますから」
「そっか・・・ダンジョンとは違うもんね」
「ダンジョンの魔物は違うんですか?」
「ダンジョンに出てくる魔物は倒すと消えるんだ。ただ、アイテムや素材を残してね」
「なんとも不思議な・・・」
「ほんと不思議だよな」
「ハンス様」
「どうした?トウカ?」
「ゴルダとも話したんですが、私たちも手が開いた時にはダンジョンに入ってもよろしいですか?」
「あっ、私たちもお願いできませんか?」
セキメもそう言い出した。
「皆ダンジョンに興味があるんだね。勿論大丈夫だよ」
「それなら俺達も入ってみるかハク」
コクセキも興味はあったのかそう言い出した。
「そうですね、どんな魔物が出るか楽しみ」
「そう言えばゴータ、お前はあのダンジョンには入っていたんだろ?」
「・・・そ、そうっね」
「んっ、何か嫌なことがあったのか?」
「あのダンジョンはバルベリア様が創ったのは知ってるっすよね?」
「それはハンス様から聞いたから知ってるわ。それがどうしたの?」
そうセキメが答える。
「それならあのダンジョンを創った理由まで知ってるすっか?」
「理由?それはゴータの修業のためじゃないのか?」
ハンスはてっきりゴータを鍛えるために創ったものだと思っていた。
「半分はそうっすけど、残りの半分はノリと嫌がらせっすよ・・・多分すけど・・・」
「まさか・・・な」
あの魔物の量と宝箱の罠を考えると・・・だけど、まさかね?
「1階から苦労したっす。 魔物の群にあの宝・・・いや、そこは自分で見て確認して欲しいっす」
「ははは」
あれは経験者にしか分からんよな。
やはり、ゴータも通ってきた道なんだ・・・。
「ハンス様も・・・そんなに大変なのですか?」
「1人だったから面倒だったけど、仲間がいたら大分楽になるよ。ゴータはどうやってあの群に、ボスを倒したんだ?」
「・・・殴っては千切って、殴っては食べて。もう我武者羅に暴れまくったっす・・・」
「食べて!?そんなことしたのか?」
「とても苦く、不味かったっす。だけど、両手両足では足りずに頭や口も使って乗り切ったっすよ・・・魔法を覚えてからは大分楽に倒せるようになったっすけどね」
「そ、そうだったんだ・・・因みにあのダンジョンは何階まであるんだ?」
「今の階層は分からないっす。 自分は結局5階までしか行ってないっすから。しかもあのダンジョンは生きているってバルベリア様が言ってたっす。放置すれば勝手に広がり階層も増えるそうで・・・。だから分からないんすよ。因みにバルベリア様が創ったのは7階迄だそうっす」
「まじか・・・ダンジョンが勝手に大きくなるって・・・」
「何階まで有るんだろう?」
「ゴータが5階まで・・・責めてそれよりは行きたいですね」
そうセキメが呟く。
「「「「ああ (ええ)」」」」
それに聖魔人達も頷き返事をする。
「ちょ!何、対抗意識燃やしてるっすか!自分も頑・・・いや、また、あのダンジョンに潜るっすかね?コクセキさん?」
「勿論だ」
「じ、自分はちょっと遠慮したいっすけど?」
ゴータは焦ったようにそう言った。
「そうか・・・なら、引きずってでも連れていかねばな」
「そ、そんな!あんまりっすよ!」
豪邸にゴータの声が響いたのだった。




