39 アリとアリとアリ
今ハンスはもう一人の父親でもあるバルベリアが創ったダンジョンを進んでいる。
あれからも色んな通路に進んでは行き止まり。
進んでは同じ場所に戻りと内心は少し、いや、かなりイライラしていた。
出てくる魔物も、ベビーアントやベビーラットの二種類でハンスにとっては手応えがない相手ばかりで、ドロップアイテムや討伐数だけが伸びていた。
その他には宝箱も幾つかあったのはあったが、中身はパンチングトラップかベビーラットやベビーアントのドロップアイテムだった。
ドロップアイテムと言えば、倒したときにドロップされるアイテムだが、神格曰くレアドロップアイテムも幾つか手に入れていた。
ベビーアントの籠手 ランク:1
攻撃:2
ベビーアントの甲殻で作られた籠手。
以外に脆く余り耐久性がない。
ベビーアントの胸当て ランク:1
防御:2 【打撃耐性Ⅰ】
ベビーアントの甲殻を繋ぎ会わせた胸当て。
刃物による耐性はあまりないが、若干打撃耐性がある。
ベビーラットの帽子 ランク:1
防御:1 【警戒Ⅰ】
ベビーラットの皮と毛で作られた帽子。
小さな皮で作られた為、見ためはあまり良くはない。
装備している時は【警戒】のスキルが得られる。
ベビーラットの服 ランク:1
防御:1
ベビーラットの皮と毛で作られた服。
少しの寒さを防ぐことができるが、あまり見ためは良くない。
レアドロップで得られたのはこれなんだが、ハッキリと言って微々だった。
性能も良くないし、何より見た目が最悪だ。
スキルを得られる2つはまだマシなように感じるが、装備しようとは思わない。
・・・ココロ達やゴゴ達にでも渡すか、何もないよりはましになるよな?・・・たぶん。
そう思いながら目の前に存在している扉を見つめる。
扉か、今までこのダンジョンには扉があった場所は入り口位だったよな。
そうなると、この先は下に行く階段が在るのかもしれないな。
岩で出来たダンジョンに似合わない鉄製の扉に手をやり中に入って行くハンス。
そのハンスが見たものは・・・。
名前 ーーー 種族 マザーアント 年齢 1
職業:無し 装備 無し
固有スキル【繁殖Ⅲ】【産卵Ⅲ】【消化液Ⅰ】
名前 ーーー 種族 ビッグアント 年齢 0
職業:無し 装備 無し
固有スキル【警戒Ⅰ】【噛み付きⅠ】
名前 ーーー 種族 ベビーアント 年齢 0
職業:無し 装備 無し
固有スキル【警戒Ⅰ】
無数に存在している蟻の群れだった。
マザーアント?こいつか!あんなに大量に居たベビーアントを生んでいたのは!
蟻達はハンスが入ってきたのに警戒し、ベビーアントはハンス目掛けて襲ってくる。
ビックアントはマザーアントの前に陣取り動こうとはしない。
マザーアントはマザーアントで、せっせと新しい卵を産み続け古い卵からは新たにベビーアントが産まれている。
本当に厄介な!まずはベビーアントを倒しながら、どうにかマザーアントを倒さないときりがないな。
「サンダーウェーブ!」
雷魔法のサンダーウェーブはハンスの作り出したオリジナル魔法。
サンダーウェーブは自分の回りに電撃を拡散する魔法だ。
遠くにいるビックアントやマザーアントまでは届かないにしても、向かってきているベビーアント達には直撃し、その魔法だけで、ドロップアイテムに変わる。
その出来た空白地をハンスは走りビックアントに迫る。
「ギギギィ!」
ビックアントは予想していなかった攻撃と、ベビーアントの全滅で流石にビックアントも行動が鈍っていた。
ビックアントの数は全部で9匹、その1匹にショートソードで斬りつける。
「ギィ!」
バァヂュ!と音をたてながらショートソードがビックアントの頭部へと斬り込まれた。
「くっ・・・固い!」
ビックアントの甲殻は非常に固く、一撃ではハンスもビックアントを倒すことは出来なかった。
このままでは不味い、と思い一度ショートソードを引き後ろへ力一杯ジャンプし一度下がる。
「サンダーボール!」
下がっている最中にもハンスは傷付いたビックアント目掛けてサンダーボールを放つ。
「ギィーーーッ!」
頭を斬りつけられたビックアントは痛みのあまり暴れていたが、サンダーボールの魔法のダメージでその体は消えドロップアイテムだけが残された。
サンダーボールの余波もあって近くに居たビックアント2体に少なからずダメージが入ったみたいで、動きを止める。
2匹の動きを止めたからと言っても安心は出来ない。
まだ、6匹のビックアントがハンスに向かってきているのだから。
かといって鉄のインゴットで作られたショートソードだけでは、ビックアントの甲殻には余りダメージを与えられない。
始めに攻撃したショートソードは【吸魔】の付与がされている方だった。
なら、【雷】の付与だったら?と思い、迫り来るビックアントにもう片方のショートソードを突き立てる。
「ギギギギギギギィ!」
突き立てた剣から紫電が流れ、ビックアントの体内をその電撃で焦がす。
そのままビックアントは消えドロップアイテムになる。
こっちの雷の属性剣なら問題なく倒せるか・・・だが、時間がかかるのはちょっとな・・・。
結論を易言うと雷が付与されているショートソードなら、ビックアントを倒すことが出来た。
だが、ショートソードをビックアントに突き立て、少しの間剣から発生する雷による追加ダメージを与えないと倒せない。
ビックアントは絶えずハンスに襲ってきている状態で、ゆっくり倒すなどしていたら攻撃を喰らってしまう。
もし、相手が2匹位なら攻撃を受け流しながらその攻撃を行えたかもしれないが、今の状態ならかなり厳しいだろう。
時間が掛かっても仕方ない・・・やるか!
ショートソードの【吸魔】の付与がされている方をアイテムボックスにしまい、取り出したのはいつぞやの盗賊のアジトで手に入れた、スモールシールド。
ハンスはスモールシールドでビックアントの攻撃を受け流しながら攻撃。
そして、距離をとるヒット&ウェイにスタイルを切り換える。
時には正面から、時には横から攻撃しビックアント達に確実にダメージを与えていく。
そうして分かったことは、ビックアントはハンスの攻撃を3発打ち込めば倒せる事が分かった。
また甲殻ではなく、甲殻の隙間なら一撃で倒せていた。
「なるほど、ここなら効率的に倒せるな。」
一匹一匹を効率よく倒せる頃になると新たに産まれたベビーアント達も戦闘に加わって来る。
「産まれるの早すぎだろ!」
ビックアントは残り3匹となった所で無数に産まれたベビーアント達が加わり、マザーアントもこれ以上卵を産んでもハンスを倒すことが出来ないと考えてか戦闘に参加始めた。
「くっ!」
ビックアントだけならまだヒット&ウェイで着実に数を減らせていたが、ベビーアントに邪魔をされ、マザーアントからは中距離から消化液を飛ばされと思うように戦えない。
マザーアントの消化液は地面に着弾するや否やジュッウと音と共にそこらに落ちているドロップアイテムを溶かす。
「あれに直接当たったら相当ヤバイな。」
ドロップアイテムが溶ける光景を見てハンスは少し冷や汗が出る。
マザーアントは絶えずハンスに向けて消化液を飛ばすが、それをかわすハンス。
結局、消化液が溶かすのは落ちているドロップアイテムか、果敢にハンスを攻めているベビーアントだった。
「ギチギチギチギチギチギチギィ!」
中々消化液が当たらなく、ベビーアント達が消化液で消えていく様子に興奮し耳が痛くなるような叫びを放つマザーアント。
「そう怒らなくてもベビーアントを倒したのは自分のクセに・・・。」
ベビーアントは体長が30㎝位で、ビックアントは1m、マザーアントはと言うと体長は3mにもなる。
そんなマザーアントがとった行動は突進だった。
目の前のビックアントを撥ね飛ばしながら、ベビーアントにしてはマザーアントに踏み潰されドロップアイテムに変わる。
マザーアントは卵を産むためか尾が大きく、動くスピードは遅かったのだが、ハンスはまさかマザーアントが仲間を犠牲にしながら突進してくることは思わず、マザーアントの突進を避ける事が出来なかった。
「ぐっ!」
咄嗟にスモールシールドで受けることが出来たハンスだが、突進の衝撃で後方へと弾き飛ばされる。
弾き飛ばされ起き上がろうとしていたハンスだが、目の前にはビックアントが迫り、顎を開き噛みついて攻撃をしようとしてくる。
「サンダーライン!」
サンダーラインは元々長い距離直線に電撃を放つ魔法だ。
そのサンダーラインを咄嗟に放ったがゆえに、サンダーラインは地面を真っ直ぐ、出はなくてダンジョンの天井に向っていった。
だが、目の前に居たビックアント1体はその直撃を受け倒すことが出来た。
相手もハンスの魔法を警戒してか動きが一瞬止まる。
その隙をつき体制を整える事が出来たのは幸いだった。
残りはビックアント2体にマザーアント1体、そしてベビーアントが無数だ。
「ふぅ・・・危なかった。まさかの突進って。
しかも、サンダーボールでは倒せなかったビックアントだったけど、サンダーラインでなら倒せるか。」
そう呟くハンスだったが、ビックアントやベビーアントの攻撃を避けながらチャンスを狙う。
今だ!
「サンダーライン!」
今度のサンダーラインはしっかり狙いも定め放たれた。
ビックアント2匹にベビーアント達、それからマザーアントまでも巻き込み電撃が走り抜ける。
「ギ、ギ、ギィ・・・」
サンダーラインでビックアント2匹とベビーアントの大半は倒れ去った。
「サンダーラインまでも耐えるとは・・・だけど!」
サンダーラインを堪えきったマザーアントだったが、その身体は雷で焼け動きも鈍い、見るからにして瀕死なのは間違いなかった。
「サンダーライン!」
再度サンダーラインを放ち、その戦いに終止符をうった。
「ふぅ・・・終わった。」
残っていたベビーアントも最後の魔法の巻き添えで倒した今、部屋の中央に突然光が射し宝箱が現れた。
「宝箱?マザーアント達を倒したからか?」
そう言ったハンスは一息をつき部屋に散らばるドロップアイテムを広い始める。
ビックアントの顎 ランク:2
非常に固く、その顎で噛まれたら中々抜け出すのが困難。
武器素材として扱われ商人達からも重宝されている。
ビックアントの甲殻 ランク:2
非常に固い甲殻に対して軽く扱いやすい。
盾には不向きだが鎧として防具素材で有名。
消化液袋 ランク:2
強酸性の液が入った袋。
強酸性故に取扱いが難しい。
ビックアントの魔石 ランク:1
大きさは3㎝と小さく用途は余らない。
マザーアントの魔石 ランク:2
大きさは8㎝と小さいが武器や防具又はアクセサリーの強化素材や錬金術に用いられている。
この戦いでレアドロップは手に入れられなかったが、手に入れるまで何回もは戦いたくはない、と思った。
ようやくドロップアイテムの回収も終わったハンス。
「宝箱か、何が入っているのか・・・少しは苦労したから良いのが入ってれば良いんだけど。」
そう言いながら宝箱に手をあてふたを開ける。
中に入っていたのは・・・
「ぶへっ!」
パンチングトラップだった。
パンチングトラップに顔面を打たれ尻餅をつく。
「・・・・・・。」
宝箱からはバネが延び、上下に揺れるパンチングトラップ。
「ここまで来てこれか・・・」
その後は無言でパンチングトラップの回収を始めようと宝箱に近付くと、パンチングトラップ以外に何かが入っているのに気付く。
「袋?」
宝箱から取り出したのは片手に収まる小さな袋だった。
中を確認してみると銅貨が3枚入っていただけだった。
「・・・ダンジョン創った人の性格か?」
銅貨とパンチングトラップを収納しハンスは来た道を戻る。
今日のダンジョン探索はここまででとした。精神的にいろいろ堪えたから・・・。
帰り道も魔物と出会ったが、一方的に八つ当たり気味に攻撃し倒していく。
帰りは最短距離で帰り入り口まで戻ってこれた。
マザーアントが居た部屋から入り口までは20分もかからず来れたのは良かったと思うハンスだった。




