36 契約と
はぁ、どうするかな今回の囚人・・・奴隷に堕ちることは確定として、その後だよな・・・。
ハンスは奴隷制度について多少毛嫌いがある。
小さい時に自分の友達が、生活にどうしようもなく親から奴隷商人に売られるってことがあった。
まだ小さかったハンスにはどうしようもなくただ、ただ泣くことしか出来なかった。
その後その友達は違う町に連れていかれ、その後はどうなったかは分からない。
そもそも奴隷に堕ちた人達は良い噂はあまり聞かない。
良い人に引き取られれば良いが、逆にマナーの悪い者に引き取られた場合は最悪らしい。
はぁ、取り合えず決めなきゃな・・・。
期限は明日までに決めれば良いが、ハンスは領主邸へと何時もより重たい足取りで足を運ぶ。
領主邸へと辿り着いたハンスは、領主邸の門番二人に声をかける。
「すみません、ハンスって言います。誘拐事件の囚人達の件でトデイン様に面会に来ました」
「ハンス君か、話は聞いているよ。ちょっと待っててくれ、トデイン様に確認してくるから」
領主邸の門番の一人はそう言って、領主邸の中へ入っていった。
そして、あまり時間も掛からず直ぐに出てきた。
「待たせた。さっ、こっちに来てくれ」
門番の男性がトデイン様の所へ案内してくれるみたいだ。
「ありがとうございます」
何度か来たことがある応接間。ではなくトデイン様が仕事をしているらしい部屋の前に案内された。
扉の上には金属のプレートで領主室と書かれてあった。
門番の男は扉の前に立ち。
「ハンス君をお連れしました」
そう声をかけると中からトデイン様の声が聞こえた。
「ああ、入ってくれ」
「はっ!失礼します」
そうしてやっと中に入る。
部屋の中を見渡せば両サイドには本棚があり、中には重要そうな本がびっしりと並んでいた。
正面の壁にも棚が並んでいるが、何かの置物がきれいに並んで置かれていた。
その前に大きな、しかも高そうな机が置かれ、その場所でトデイン様は椅子に座り何かの書類を見ていた。
トデイン様の机の前には何も置かれておらず、そこまで門番の男性に案内され門番の男性はそのまま部屋から出ていった。
「トデイン様、急に来てすみません」
「いや、大丈夫だよ。でっ、ハンス君、囚人達の処遇決まったのかね?」
机に座ったままトデイン様はハンスに質問をしながら見ていた書類を閉じる。
「はい、決まりました」
「でっ、どうするかね?」
「こちらで引き取ろうかと思います」
「引き取る?大丈夫なのか?」
椅子に座っていたトデイン様はハンスの言葉で腰を浮かし、机越しに身を乗り出す。
「はい、大丈夫です。引き取った後も彼等を食べさせていくことは出来るし、住む場所も問題ありません」
「そうなのか?まだ子供のハンス君には辛い選択かもしれんが、奴隷商に引き取って貰った方が本来なら良いのだが・・・既にあれほどの仲間達が居るから出来るのか・・・そうか・・・よし、それならこちらで直ぐに奴隷の契約を進めるか。今すぐには出来ないが、明日には担当の者を呼び出す。その奴隷契約に掛かる料金だが、今回は俺が出してやるよ」
トデイン様はそう言いながら椅子に腰をかける。
そして右手を額に置き何やら考えている素振りを見せる。
「・・・いえ、奴隷契約も自分で行います。そうした方が早く引き取れますから」
「なっ、君は奴隷契約魔法も扱えると言うのか?」
ハンスの言葉でトデイン様は勢い良く机を叩きながら驚いた。
「はい・・・出来ます」
「契約内容は決めているのか?」
「はい、取り合えずですが、他者への攻撃等の縛りと、命令への絶対服従、それに自殺禁止の基本的な契約と変わりません。ただ、追加で情報の漏洩防止を付け加えます。もしかしたらですが、冒険者の仕事もしてもらうかと思いますので、他者への攻撃等の縛りとは別に、敵対行動・敵意行動・命令での攻撃を優先可能と追加します」
「そこまで決めているのか・・・なら一度囚人達の居る牢へと移るか」
そう言いながらトデイン様は椅子から立ち上り俺の側まで歩いてくる。
その後はトデイン様と俺の二人で、囚人が捕まっている領主邸の地下牢へ移動する。
本来なら、護衛に近衛兵を着けるのだが、今回は俺と二人で牢屋まで行く。
どうやらトデイン様は、人にはあまり言えない能力だからと、気を使ってくれたみたいだ。
囚人が捕まっている牢の前まで来て直ぐに中の囚人の一人が声をだす。
「何だ!領主様じゃねぇか?ってことは俺達の処遇が決まったってことか・・・くそが!奴隷に鉱山で強制労働か・・・終ったな・・・」
囚人の男はそう言いながら下を向きその言葉以外にも何やらブツブツ言っているが、声が小さくしっかり聞こえてはこない。
「兄貴・・・あっしは、あっしは・・・」
他の囚人男はそう言いながら地面に崩れ落ちる。
「まぁ、待てお前ら。覚えてろよ?ぜってぇ・・・仕返しに来るからよ」
一番奥で壁に寄りかかって座っていた男はそう言いながら、トデイン様に向け睨み付ける。
「鉱山で強制労働か、残念だったな。そうはならない、これからの主人はこのハンス君だ」
睨み付けられても全く動じていないトデイン様は、囚人の男達に俺を紹介した。
「・・・どういゆうことだ?」
その紹介で中に居た囚人の男達は一瞬固まる。
その中、先程トデイン様を睨み付けた男が1人そう言いながら、鉄格子に近付いてきた。
そこからはトデイン様が内容と、これからどうなるかを説明していく。
因みにトデイン様が説明してくれたのは奴隷契約をハンスが行い、それからハンスの指示にしたがって行動する事になる。の簡単な説明だった。
案の定、囚人の男達は子供の俺が奴隷の契約をする。と言う説明の時に悪そうな顔をしたので、多分だが脱獄出来ると勝手に思ったのかも知れない。
ただ、ハンスが捕まえた7名はハンスを見た瞬間に震えだし、うつむいてしまっている状態で、かなり大人しかった。
取り合えず、奴隷契約だ。
ハンスは右手を牢に居る囚人達に向け、魔力を集中させる。
「契約!」
俺がそう言った瞬間に、牢屋の中いっぱいに魔方陣が展開され、黒い影の用な物が囚人1人1人に纏わりついて行く。
「ひぃぃぃぃっ・・・」「何だ!」「体が!」「ぎゃゃゃゃっ!」「た、助け・・・」
魔方陣から黒い影が伸び纏わりつけられた囚人の男達から、叫び・呟き・悲鳴、そんな声が牢屋に響きわたる。
「ハ、ハンス君、だ、大丈夫なのか?囚人達は・・・」
そんな光景を見たトデイン様は、額にうっすらと汗をかきそう言ってきた。
「はい、大丈夫です。傷みも無いように契約を実行中で、その・・・見た目は悪いですが・・・うん、無事に終わりました」
ハンスの言葉通りに魔方陣はゆっくりと消えていった。
残ったのは、囚人の男達だ。
男達の様子はあまりの恐怖からか気絶しているものから、地面に倒れ痙攣を起こしている者、目の焦点があわず地面を見つめていたり、と多種多様だった。
そんな中、先程トデイン様を睨み付けていた男が1人。
「はあ、はあ、はあ、はあ、何だったんだ・・・おい・・・俺達に、何しやがった?」
そう息を切らしながら言ってきた。
「んっ?只の奴隷契約だけど?」
「ふ、ふざけるな!あれの何処が奴隷契約だぁ!」
「全員の右肩の後ろを見てみてよ?ちゃんと奴隷紋?があるから」
「お、おい、お前!ちょっと見せ・・・ろ・・・ほ、本当にありやがる・・・」
そしてその男はハンスに畏怖の眼差しを向ける。
「じゃあ、皆さん疲れているところで悪いけど、一旦皆を起こして!これからの事を伝え、奴隷契約内容を言うから」
ハンスは事前に決めた奴隷の契約内容を伝え、その後でこれから奴隷の男達にやってもらうことを伝える。
奴隷達は奴隷紋を見て心ここに在らず。そんな雰囲気で話は理解していたのかは分からないが・・・。
「それじゃトデイン様、俺達はこのまま拠点に移動します」
ここにずっといても仕方ないし、取り合えず拠点へ向かうことにした。
「ああ、くれぐれも奴隷の間違った使い方をするなよ?」
トデイン様からの奴隷の扱いを再度注意された。
「はい、勿論です」
大丈夫、酷い扱いは流石にしないから・・・。
そう自分に言い聞かせながら拠点へ空間を繋げ、奴隷達の前の空間が揺らめく。
「なっ!」「ひっ!」「・・・・・・」
流石の奴隷達も目の前に出てきたそれには恐怖を抱いてしまった。
何せ先程の奴隷契約も本人達にしたら恐怖そのものだったのだから。
その後は恐怖しているのか中々に入らない奴隷達を強制的に入らせるため、トデイン様に牢の鍵を開けてもらって、1人づつ中に押し込んでいく。
その様子を見たトデイン様は牢の外で「はははは・・・」と、乾いた笑いをしていたが、ハンスは気付いていない。
そしてようやく無事?に全員を拠点に強制的に押込み終わった。
「トデイン様、今日はすみませんありがとうございました」
「あ、ああっ、くれぐれも奴隷の扱いに気を付けてくれ」
「分かりました」
「そうだ、ハンス君」
「はい?どうしました?」
「落ち着いたらで良いんだが、いつかハンス君の拠点に招待してくれないか?奴隷達の扱いの視察と言う名目でなんだが」
「分かりました・・・剣魔学校が始まって、長期の休みが出来たら。で宜しいですか?」
「勿論構わない。そうか、このバタバタで忘れていたが剣魔学校の入学も控えているんだったな。んっ?ハンス君大丈夫なのか、入学に必要なものは準備しているのか?」
「入学に必要なもの・・・?」
「何だ、届いていないのか?入学者には学園から必要な物とその他の案内や必要な手続きを書いた紙が届いているはずだが」
「あっ・・・」
「その様子だと・・・見ていないな。学園が始まるまで後・・・2週間しかないぞ。もし、案内の紙が届いていなかったら直接だが、学園に貰いに行く必要がある」
「2週間・・・あ、ありがとうございます。トデイン様、用が終わったら剣魔学校に行ってみます・・・」
「そうした方がいい。気を付けるんだぞ・・・って、ここからメルガイまで君ならあっという間何だろ?気を付けてくれの言葉が合わないな・・・」
「ははは・・・行ってきます」
そうしてハンスは空間に入り拠点へ移動する。
拠点に着いたハンスが見たものは、地面に崩れ落ちた者や、ただ立ち尽くしボーッとしている者、何やらブツブツ言っている者達だった。
「さっ、ここが皆が住む場所だ。変な感じだけど、これからもよろしく」
皆の支線を集めたハンスはまだ奴隷達の住む場所が決まっていない為、今日は豪邸へと案内することにした。
豪邸に入るとソウシュ部隊が居たため、ソウシュに奴隷の事と、これからの事を話し奴隷を任せることにした。
奴隷を任せた後は一旦コープルの実家に行き、全ての説明をお母さんとミトお婆ちゃんにし、それから直ぐにメルガイに移動・・・
そうしてやっと剣魔学校へと辿り着いて、門番に案内等の紙の事を聞いたハンスは現在学園長の部屋に居た。




