33 到着
ラザト村を出て休憩を挟みながらも街道を進んでいるハンス一行。
予定では明日の朝には何もなければコープルへとたどり着く事が出来るが、魔物が襲ってくるため予定通りには行っていない。
今日はここで夜営をするみたいだが、今まで襲ってきた魔物は騎士団の二人とハクとコクセキによって一掃されている。
えっ、俺?勿論俺も戦おうとしても座る席順が悪いのか、出ていった時には既に終わっていたよ。
今回襲ってきたのはゴブリンが多く、キラービーにコボルトなんかも居た。
惜しかったがコープルに急いでいると言うことで魔物の死体は街道横に置かれ焼かれて終わった。
俺がアイテムボックスに入れれば良かったが、何もしていない俺は流されるまま皆の行動を見守るだけであった。
昨日まで忙しかったから少し休んでもバチは当たらないだろう。
そして夜営の準備も出来て簡単なご飯を済ませ早めに寝ることとなった。
近衛兵に騎士団にコクセキとハクは夜の警備を交代でしてくれるみたいだ。
「ねぇ、ハンス・・・ミリルは大丈夫だよね?」
ラザト村を出るときから暗かったレインだったが、やはりミリルの事が心配みたいだ。
気持ちは痛いほど分かる。
レインが連れ去られ同じ気持ちを抱いて俺達はレインにたどり着いたのだから。
だが、俺はミリルは無事に戻ってくる。そんな予感しかない。
あっちには父さんやソウシュ達が居るんだから間違いないだろう。
「父さんや俺の仲間を信じて待ってるんだ。ミリルもきっと無事に帰ってくるよ」
「・・・うん」
「ほら、レインもハンスも早く寝るんだ」
トーマスのおっちゃんは明日朝が早いためか早く寝るように促す。
「おやすみ、レイン、おっちゃん」
「おやすみなさい、ハンス、お父さん」
「ああっ、おやすみ二人とも」
夕食として簡単な携帯食を食べ早めに寝て目が覚めるとまだ真夜中だった。
「変な時間に目が覚めたな・・・」
馬車を出るとコクセキと警備兵の1人が今の時間の担当みたいで見張りをしていた。
「ハンス様?どうされました?」
「ん?コクセキお疲れ様、いや、懐かしい気配がして目が覚めたんだが・・・その懐かしい気配がちょっと不安でね」
「懐かしい気配?ここら辺に知り合いでも?」
「知り合いは知り合いでも、そいつは人ではなく魔物なんだ。しかもそいつと会ったのは5年前位前だったんだ」
「魔物ですか・・・」
「その魔物が俺を覚えてれば襲ってくることはないだろうが・・・もし忘れていれば戦わないといけない。俺にとっては戦いにくい相手なのは間違いないが、皆が危険になるなら戦わないといけない」
「ハンス様大丈夫ですか?もしやりにくいようだったら自分が行きますよ」
「んーっ、いや、俺がやるよ」
その気配は徐々にだがこっちへと向かってきているみたいだ。
気配は全部で3つと離れて1つだ。
俺は気配がする方へ身構えて相手を待つ。
幸いにそれ以外の気配も感じれず集中できる。
そしてついにその相手は街道横の林の中から現れた。
以前の体格と違い今は立派に成長したみたいだ。
3匹ともこの前戦った同種の魔物達よりも少しでかい。
「よう、ちび?ってもうちびじゃないか。 元気にしていたか?」
俺は何気に声をかけれた。
3匹から発する気配は今までの魔物とは違い穏やかなもので警戒を全く抱いてはいなかった。
どうやら相手も俺の事は覚えていてくれたみたいだ。
更に奥から少し早めだが、こっちに向かっている気配もするがその気配もどうやら知っている気配のようだ。
「グルルルルルッ!」
その声は威嚇ではなく甘えるような鳴き声だ。
俺は自然にチビに手が伸び体を擦っていた。
固い毛並みだが手触りはそれほど悪くはないそんな感じだ。
チビを触っていると他の2匹も寄ってきて体を擦り付けてくる。
「チビの父さんに母さんも久しぶりだね」
「「グルルッ!」」
俺は3匹を交互に撫でていく。
「うぉっ!ウッドウルフ!だ、大丈夫かハンス君!」
もう1人の見張りの近衛兵が気付いたみたいで驚きながらも声をかけてくる。
「大丈夫ですよ、この子等は俺の知りあいです。危険はありませんよ」
「そ、そうなのか・・・いやはや、ウッドウルフは人にはなつかないで有名なのだが。それこそ、ウッドウルフを従魔にしているのは冒険者のルード・シャラブアだけなんだが・・・」
ルードさんか、懐かしい名前だ。
ルードさんの下の名前はシャラブアかどうかはしらないけど。
当時はお世話になった冒険者で、ルードさんが居たからあの時は無事にコープルに帰れたんだっけ?
・・・ゴブリンはどうとでも出来たけど道が分からなかったんだよな。
そのルードさんも、もうすぐこっちに来るみたいだ。
それにしてもチビ達はルードさんの従魔になったのか。
皆体格もよく相当に強くなっているみたいで特にチビ、両親のウッドウルフと姿は同じにしても筋肉の付きに体格も大きい、これって立ち上がれば俺よりもでかくない?
「お前ら勝手に飛び出してからに!何も知らない冒険者に会ったら危険だとあれほど言っているだろう。まっ、ここいらの冒険者に遅れはとらないだろうが・・・って人か?珍しいな?チビ達がそんなになつくのは・・・」
そう言いながら林から登場したのはルード。
そのルードが見た光景に驚きながらも近寄ってきている。
「ル、ルード・シャラブアさん!やっぱりそのウッドウルフはルード・シャラブアさんの従魔だったのか・・・道理で大人しい訳だ」
「んっ?君は?それにコイツ達が大人しい?コイツ等は大人しくはないぞ?いつでも好戦的であんまし言う事も聞かないしな」
「はっ、私はコープル領主の近衛兵をしているトラザイ・バースと申します。 いやいやいや、ご謙遜を貴方の噂は聞いていて・・・その、握手してもらっても宜しいですか?」
「へぇ、近衛兵ね、俺も有名になったものだな、そんなつもりは全くなかったけどな・・・何故こうなったのか・・・」
ルードさんはそう言ってチビ達へと視線を向けるも、当のチビ達はハンスに撫でられて其どころではないようだ。
「それにしてもだ。俺には撫でもさせてくれない3匹なんだが君は一体・・・」
「ははっ、お久しぶりです、ルードさん。あの時はお世話になりました。俺ですよハンスですよ」
「ハンスか!ああっ、大きくなったな!あの時の好奇心旺盛のとんでも迷子ボーズか!懐かしいよ本当に。ってことはこれで俺も解放されるってもんか、なんか寂しいが良かったぜ」
「本当にお久しぶりです。ルードさんチビ達と行動していたんですね、って解放?」
「ああ、あの後コープルを出て山の上のダンジョンに行こうかしたらコイツらとバッタリあってな。チビはお前の事が忘れられないみたいでハンスが大きくなるまで俺と行動をしてくれたんだよ。あれから5年か・・・本当に・・・濃い時間だったよ」
ルードはそう言って空を染々と見上げる。
「ルードさんウッドウルフの言葉分かるんですか!?」
「分かるわけないだろ!まぁ、なんだ俺が分かるんじゃなくチビ達が俺達の言葉を理解しているみたいで、意思疎通はあんまり苦はなく出来たよ。戦闘ではなかなか言うことを聞かなかったがな」
チビ達と居て苦労したのかな?それよりも
「チビ頭良いんじゃないか!このこの」
ガシガシと頭を撫でる。
「ゥワフッ!」
「あれ?じゃあチビ達は俺に着いてくる?」
「「「ワフ!」」」
3匹とも尻尾を千切れんばかりに振って喜んでいる。
「よろしくね!チビ達。でも、ルードさんはどうするの?こんな時間だし」
辺りは暗く真夜中で1人で居るのは危険だと思うから言ってみたがルードさんは「そうさなぁ、1人山の上のダンジョンに戻るさ」と返事をした。
それに対して俺は「朝までここにいたら?」と言ってみても「そうしたいが夜営をしてた所を放置して来たから戻らないとな。おっとそうだ、コイツらにまだ名前は付けていないからちゃんと付けてあげろよ。チビ達今まで世話になったな!またいつか会おう!じゃあなハンス!」と言って足早に林の中へ足を向けて歩みだす。
チビ達も今まで5年の間一緒に行動をしてきた仲間へ別れの遠吠えをしていた。
「「「アオォォォォォォォォォン!」」」
その遠吠えは何処か今までのお礼だったり、寂しさだったり、仲間への旅立ちを後押しするかのようなそう聞こえる遠吠えだった。
ルードさんもそれに答えるかのように右手を上げガッツポーズをしながら林の中へ消えていった。
「行っちゃった」
「嵐みたいな人でしたね・・・って、握手してもらってないし・・・」
そう言った近衛兵のトラザイ・バースは自分の手を見つめる。
「ハンス様、何はともあれ新しい仲間ですね」
一部始終を近衛兵のトラザイ・バースの横で見ていたコクセキはハンスに笑顔を向ける。
「うん!コクセキ、チビ達と仲良くしてね」
「勿論ですともハンス様」
近衛兵のトラザイ・バースが言うには、この時の二人の笑顔はガキ大将のような笑顔だったという。
ルード・シャラブアと別れた後はまだ真夜中だったため再度寝ることにして、ウッドウルフ達はハンスと一緒に外で寝た。
コクセキと近衛兵のトラザイ・バースは交代の時間までもう少しあり、まだ眠れないみたいだ。
次にハンスが起きた時には朝になり何故かトラザイ・バース以外の近衛兵や、騎士団の二人それにトーマスのおっちゃんからじろじろと視線を感じた。
コクセキが教えてくれたんだが夜の時間に寝る前まで居なかったウッドウルフが3体居てハンスと仲良く寝ている。
そんな状況を見た皆は何があったのか理解できずにいたが、理由を知っている二人がその度に状況を説明したみたいだ。
それでも「あのウッドウルフが・・・」や「ル、ルードルード・シャラブア・・・」だったり「1匹ウッドウルフか?」など小声が聞こえる。
その後も簡単な朝食を捕りコープルへと向かう。
その際に少しづつだがハンスの言うことを聞いているウッドウルフ達を見て皆も落ち着きを取り戻した。
ウッドウルフ達は馬車に乗らずにハンスが乗っている馬車の横を走っているが、時たま魔物を見かけては威嚇し戦闘という戦闘はなく昨日よりも早く馬車が進めれた。
それもあって予定の時間よりも少し早くにコープルの町へとたどり着いた一行は、東門で入場の手続きをしそのまま領主亭へと入っていった。
因にだが、ウッドウルフやコルトにココロに関してはハンスの従魔として町中へ入ることは出来た。




