003 国外追放だ!
グランディアを出た俺は、就職活動に明け暮れていた。
しかし、再就職ってこんなに難しいんだな。
冒険者ギルドに伝手を頼っても収穫はナシ。
他のクラブに行っても、
「すまない……ライノくん。力になりたいのは山々なんだが、バルゼンさんから君が来ても入れるなと釘を刺されていてね」
「あー、ダメダメ。悪いけど他所に行ってくれないか? うちみたいな小さいクラブじゃ抱えきれないんだよ」
目を逸らされ、厄介払いされるのがお決まりのパターンだ。
だが、日が経つにつれて断られ方は徐々に変わっていった。
「あんたみたいな無法者、入れるわけにはいかないよ」
「帰れ帰れ! 平民風情が!」
「王国の秩序を乱したって話じゃねぇか!」
なんだこの変わりようは……まるで犯罪者扱いじゃないか。
聞けば、最近になって俺に関する噂が街中へ広まっているらしい。
曰く、
横暴な性格。
法律違反の常習犯。
貴族の娘を妊娠させたクズ。
もちろん俺は何もやっていない。
だが、人間は真実よりも根も葉もない噂を信じたいものらしい。
「はぁ……」
ベッドに腰掛けながら、俺は頭を抱えた。
悪評もそうだが、金も尽きかけている。働かなければ生活費を稼ぐことすらできない。
しばらくは節約して過ごさないとな。
その時。
ガシャァン!!
「!?」
突然、窓ガラスが砕け散った。
「なんだっ!?」
転がってきたのは、石だった。
くそ、なんの嫌がらせだ。俺が何をしたっていうんだよ!
翌日。
怒声と共に、激しく扉が叩かれた。
窓の外を見ると、戸口の前に巡邏たちが集まっていた。
穏やかな朝には似つかない剣呑な雰囲気に、住民たちが様子を見に来ていた。
扉を開ける。
おもむろに先頭にいた隊長格の男が、一枚の紙を広げた。
「貴様を反王国思想扇動罪により国外追放とする!」
周囲がざわつく。
「これは第一王子、ハムステッド殿下、並びに王家からの正式なお達しである!」
ハムステッド。
「――っ!」
またあいつか。
その名前を聞いた瞬間、猛烈な怒気が込み上げてきた。
顔を交えたことは一度もないが、その面を想像しただけで吐き気がする。
あいつが総帥との密談の時に言っていた言葉を思い出す。
『自分の好きな女の視界に平民が入るのが気に入らない』と。
ふざけんな。
貴族の娘なんて俺は知らん。勝手に恋愛ごっこでも何でもやってろ。俺を巻き込むな。
「第一王子に会わせてくれ、直接話がしたい!」
「認められない」
「なっ……!」
「当然だろう。危険分子を殿下に会わせるわけにはいかない。そもそも貴様は平民であろう。身の程を弁えよ!」
ちっ、どこまで平民が嫌いなんだコイツらは。
…………そうか、俺の悪評を広めたのも王子の仕業か!
俺の信用を失墜させ、捕まってもおかしくない人間だと民衆に見せかけるために。
人を貶めるためにここまでやるとは、どこまでも腐ってる。
「おいコラ、離せ!」
兵士たちに取り囲まれ、俺の手には重い鉄の手錠をかけられた。
「国外追放処分により、貴様は今後ベルデンブルク王国への再入国は禁止される」
「待て、人の話は最後まで聞け!」
「境外まで連行する!!」
「っ……!?」
俺は、この国で生きることさえ許されないのかよ……!!




