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自作の異世界の味はどうですか?  作者: ベータ版
              [ドリーム・ワールド2]

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16話 予期せぬ終焉

 

 異世界ノートのルールはたったの5つ。しかし、このたったの5つの中にあまりにも抽象的で具体性のないルールが1つあったのを完全に忘れていたのだ。

 このノートは万能だ。確かに用意した異世界は忠実に僕の書いた通りに再現されているし、メモ書き通りの登場人物もちらほら確認している。

 ただこの「異世界ノート」にも出来ることに限界がある、それを堂々とこの3つ目のルールで宣言していることになぜ今まで気づかなかったのか。そう、「書いたからといって実現できるとは限らない」。


 信じたくはないが、最初に設定していた魔法ありのファンタジー、これ自体が異世界ノートの効力外であるという可能性...。

 今の今まで全てが順調にこの世界で具現化していたからこそ完全に見落としていたがやはりあまりにも都合のいいことは起こりえない、これがこの世界のルール何だろうか。


 やる意味は薄いとわかっていながらも反射的にアルマの上に覆い被さり、強く抱きしめた。

 口からでた怪物の生温かい粘液が背中にドバドバと浴びせられ、ついに怪物の息がかかるほどの距離まで近づかれた。



 こんなことなら、書くんじゃなかった...。

 そうだ、そもそもあのノートに手を出すべきじゃなかったんだ、僕なんかが。

 何が「勇者」だ、何が「主人公」だ。


 心の内で自らの愚かさを嘆きながら、ボロボロと頬に涙がこぼれ落ちる。惨めで愚かでなんて自分勝手なのだろう。


 わかっている。わかっているさ、一度生き返ったからといってもう一度彼女が生き返る保証など、どこにもない。たった一人の少女さえ守ることが出来ずに、また彼女にとんでもない苦痛を与える結果を招くこのクズはまさに制裁を受けるにふさわしいだろう。


 どうせまた現実に戻るんだ。それなら、異世界ノートの文字ではなく、自身の体にその痛みを焼き付けて、思い出したいものだ。 

 「バカだね、潤は。充分....頑張ったよ。私はアルマ。君の仲間だから....何度だって生き返れる。君がいや、潤がこの物語を諦めない限りは」


 少女は全く何もできない僕に小さく笑いかけた。そう、何もできなかった僕なんかに。


 そして、再びいつものベッドの温もりを感じ、帰還した僕はゆっくりと仰向きの姿勢から起き上がった。


 「帰ってきたのか....そうだ!?ノート、ノートはどうなってる」


 慌てて布団を投げ捨てると、学校の鞄からノートを漁った。


 思った通り、ノートには今日眠っていた時の見ていた異世界の出来事が淡々と記述されていた。『第2章 2日目の異世界冒険』などとやはり見出しが書かれ今回のできごとがずらずらと書かれていたが、今回はあまり目新しい情報は特にないみたいだ。ただ1つ知れたことがあるとすれば、異世界ノートのルールにあったセーブポイント。これが死んだ場所の復活地点のことを指すといったことだけだろう。つまり、次の復活では少しだけ扉に近い状態でスタート出来ると言うことだ。残念ながら、お姫様に会うという目的を考えれば、城の外に出ることはむしろその目標から遠のいてしまうことになるわけで完全に喜ばしいということにはならない。


 そこまで考えてふと我に帰ると、無意識に身支度を済ませ玄関の扉に手をかける自分に遅まきながらに気づいた。


 「行ってきまーす」


 祖父と祖母に恒例の決まり文句を言って玄関の扉を閉めようとした瞬間、扉はいつもより少し重く感じたような、そんな気がした。


 学校につき、いつもの定位置の席に着くと、騒がしい友人がいつものように声をかけてきた。

 「オーッス、潤」

 「ああ、西村、おはよお。相変わらず、お前は元気だな」

 「おおう、あったりまえよ。そりゃ、どうなったか気になるからな」

 西村はニヤニヤしながら肘で肩をつつき、僕の返答を待っている。

 「どうもこうもないよ、ただ一緒に怒られただけだよ」

 「でも、昨日は二人で帰ったんだろ?」

 「よし!もうすぐ授業だからな。準備、準備っと」

 なおも西村の追求は続こうとしていたが、今日最初のチャイムが鳴り響きゴングに救われる形となった。


 

 はあ〜、っと一人溜め息をつき、今後について考える。

 まさか、あの黒崎さんがあんなことを言ってくるなんて思いもしなかった。


 それは昨日の帰り道。先生のお説教が終わり、二人で教室をあとにした時のことだ。


 「ねぇ、天宮くん。よかったら、お互いノートを交換して見せ合いっこしない?」

 「ど、どうしたの?いきなり」

 「え?いや、嫌ならいいのよ」

 何か意図がある、そんな気がしたがこう満面の笑みを浮かべられるとどうも断りづらい。まあ、彼女のノートにも同じルールが書いてあるのか、それから彼女がどんな物語を綴っているのかにも興味あるし、悪い話じゃないはずだ。


 「うん、いいよ。ちょっと待ってね、え〜と」

 鞄から例のノートを手に取り、彼女に手渡した。

 「ありがとう」

 彼女はにこやかな笑顔を向けると、代わりに彼女のノートを差し出した。


 「へぇ〜、天宮くんのノートにはこんなルールがしっかりと書かれてるんだね。なるほど、天宮くんはこんな話を」


 彼女がじっくりと僕のノートに目を落とし、物珍しそうに文章を読み漁る。

 

 「あれ?黒崎さんのノート....」


 「そうなの、私のノートはまだ真っさらで。その...小説とか書いたことなくて」


 「それはまずいよ!君はこのノートが届いてどれくらいたったの?」


 この異世界ノート。無償で異世界にいける力を与えるわけではなく、代償として異世界に対する執筆、すなわち異世界への冒険が必須となる。彼女のノートを見る限りどうやらまだ異世界には行っていないのだろう、その冒険の有様は全く記録されていない。つまり、一週間に500文字以上のペースで4つの異世界を執筆しなければならない、並びに自らの用意した異世界に入り、お題をクリアしてストーリーを完成させること、これらがどちらも達成できないことになる。



 「明日で確かちょうど一週間だったと記憶しているけど」



 「一週間....ってもう時間がないじゃないですか!?」


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