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自作の異世界の味はどうですか?  作者: ベータ版
              [ドリーム・ワールド2]

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15話 世界を歪めて

 「ッツゥーーー」


 後ろからの爆風によって降りていた階段から距離にして5mほど吹き飛ばされ、腕に電気が走ったような猛烈な痛みを感じ、反射的に右手を抑える。

 痛い......。痛い、痛い。なんだよ、なんなんだよ、どうなってる。夢とは思えない感覚が右腕を襲い、気が動転するがそんなことよりも重要なことをすぐに思い出した。


 「どこだ、アルマ、返事をしてくれ」


 よろけながら立ち上がり、怪物が落ちてきた場所へと腕を抑えながら近づくと階段のアルマの立っていた場所が見るも無残に破壊され、螺旋階段が縦に避けているといった異様な光景が広がっていた。

 ひしゃげた階段の手すりはあらぬ方向に曲がり、数秒前は階段だったとされる大小様々な破片が落下地点真下に山のように積み上がられていた。

 頼む、アルマ。まだ生きていてくれ。

 自分の痛みも忘れて夢中で探していると、かすかに何かが聞こえ耳を済ました。


 「たす........て」


 か細く弱々しい声。


 「そこか!?」


 声のする方に足を向けると、瓦礫の山で見えなかった彼女の姿はそこにはあった。彼女は潤のとっさの声に従い、怪物の直撃を奇跡的に間一髪かわすことができたものの致命傷とも呼べる瀕死の状態にある事には代わりなかった。

 瓦礫を振り払い、ぐったりとした彼女の首を優しく起こすと、全くもって動けないその様子から骨を何本もやられているであろう事はすぐに予想がついたが無能にもその処置の仕方がまるでわからなかった。


 「くそっどうすれば.......」

 

 漠然とその場にいるだけで何もできない自分に苛立ちながらも、周りを見渡しているとゴロゴロと瓦礫の落ちる音が聞こえた。

 まさか....。いや、ありえる。嫌な予感しかしない。

 覚悟を決め、奴が完全に立ち上がり襲ってくる前にどうにかここから立ち去ろうと彼女をおぶるがどうにも体はこの中でも現実に即しているらしい。

 痩せ型の僕は腕の鈍い痛みに耐えながらもふらふらとその場を離れ、一番最初に入ってきた大きな扉へと向かった。


 「ウガッッーーーーー!?」


 すぐ後ろで怪物は城全体を揺らすほどの咆哮をあげ、犬が体についた水を飛ばすように身震いし壊れた階段の残骸を吹き飛ばすと、のそのそと起き上がった。


 「異世界召喚されて開幕コレって、さすがにひどすぎはしませんかね!?」


 怪物の近づいてくる地響きがだんだんと大きくなり始めていることに、焦りを覚えるもののふらついていた体はいうことを聞かず、ついに転倒した。


 あと、3メートル。


 扉を抜けさえすれば、今のやつは通れないだろう。

 だとしても、アルマを背負って逃げる余力はもうほとんどない。

 たとえ、この体にむちを打ってアルマを連れてこれ以上進んだとしてもあの扉を押し開ける時間がそもそも残されていない。

 文字通り、八方塞がり。


 「逃げ........て」


 かすれた声でなんとか絞り出し、自分だけでも逃げて、そんな想定される「逃げて」を耳もとでアルマは声を震えさせた。


 「全部僕のせいなんだ、こんなことになったのは。だからせめて君だけでもなんとか」


 目の前の絶望が一歩、また一歩と近づき、もうあと何秒かしたら2人まとめて餌になること間違いなしな状況で、天宮 潤はつぶやいた。


 「一か八か」


 体力もない、時間もない。そんな絶望的な場面で前回僕がこの世界に来て2番目に出会った男との会話をふと思い出したのだ。

 あの時、あの黒服に身を包む彼はこんなことを言っていた。


  「なるほど。来てばかりともなると、わからないことも多いでしょう。」そんな出だしで始まり、あの瞬間とき語ったのは「ここでは僕が勇者であること」そしてもう一つ。「な場所で物語が進んでいること」


 では、なぜそんな場所で物語が進んでいたのか。

 ーーーそれはこの物語について、あの時は何も描写していないかったから。


 ならば、簡単な話だ。書かれたことはこの世界にある。

 であれば、設定さえ書いているならそれはこの世界に干渉できる力になる。


 特に意識して書いたつもりは全くもってなかったが、つまりこういうことだ。

 メモ書きになんとなく書いていたアニメやゲームで超鉄板の設定、「魔法」が使えるのではないか、っと。


 前方の災害かいぶつに向かって、潤は目を閉じて静かに手を伸ばした。念じろ、そして想像するんだ、魔法が具現化するイメージを。あと何秒残されているかなんてわからない。だが、もうやるしかない。これにかける以外にもう彼女を救う方法は残されていないのだから。

 

 大丈夫だ、理論上できるはずさ。それより集中するんだ。


 数秒の沈黙。しかしこのたった何秒かの沈黙は果てしなく長く感じられた。どうだろうか、この間に僕は魔法を使えただろうか。一応、笑えないことに手のひらから何か、そう魔法らしき何かを出せたようなそんな感覚は感じられない。


 目を開けるのが怖い。そのせいかまぶたにぎゅっと力を入れてしまっている。誰かが助けてくれるでも、もちろん手のひらから出せた魔法で怪物を倒したでも、もう本当になんでも良い。どうか目の前に怪物がいませんように。僕はあのノートに同じ悲劇が繰り返されないことだけをひたむきに祈る。



 そして、目を開けると止まることのない阿鼻叫喚な現実が目に映る。

 怪物はドラゴンのようなアギトを目一杯広げ、潤たちに大きな影を落とし、止まる様子を見せなかった。

 

 「魔法だ、魔法!!魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法ぉぉおおおおおおおお」


 狂ったように繰り返し「魔法」という単語を唱えるものの、それは泡沫うたかたのように城の天上へと吸い込まれ虚しくも消えていく。


 時間が、くそっ。もうダメだ、喰われる。なぜ魔法は起きないんだ?最初に設定としてあのノートに間違いなく魔法ありのファンタジーと書いたはずだ。なぜ魔法が起きないのか。どう考えてもおかし...........!?

 そこまで考えて、ようやく頭の中にふと思い当たる記憶にぶつかった。


 その瞬間の僕の顔はきっと鏡で見ると引きつった顔で苦笑を浮かべていたに違いない。

 なぜなら、僕にはどうすることもできないルールがその原因であると確信したからである。


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