14恋~「花より団子」ならぬ「花火より紗綾」?~
「いってきまーす」
午後六時、薄暗い道を歩く。
神社に近づくにつれ、人が多くなってきた。浴衣を着た人々、家族、そしてカップルや友達と、たくさんの声が聞こえてくる。
神社に着くと、百合がもう待っていた。
「百合、早いね」
「そう? 紗綾さんもお早いですよぉ~」
いかにもわざとらしい言い方をして百合は笑い気味で紗綾を見る。
「浴衣、ちゃんと着てきてくれたんだね。うんうん紗綾っぽい! 可愛い~」
「百合だって可愛いじゃん」
「でしょ? お気に入りなんだ~。特にぃ~この丸柄」
紗綾にその柄を指すがそれはどう見ても水玉だった。
言うか言わないか少し迷ったが、一応疑問系で確認をする。
「百合、それ水玉......だよね......」
「え? あっそうそう。柄の名前忘れてた......」
「そっか、そういうこともあるよねっ」
* * *
数分後ー。
紗綾と百合は真里たちを待っている間、テレビ番組の話で盛り上がっていた。
「......ねぇ、話変わるんだけどやっぱ祭りとなると人が多いよね~」
いろいろな人々が屋台などで賑わっているのが鳥居から背伸びして見える。
「だねぇ~」
「百合、お小遣いっていうかお金何円持ってきた?」
「私? 私はねぇ~、色々買うかもだから六千円くらいかな。紗綾は?」
「私も百合ぐらいかな。五千円くらいだから」
話題がなくなってお金の話をしていた二人だがまだ真里と優と冬斗の姿が見えない。
どうしようか、と悩んでいたその時。
「ごめんねぇ~遅くなった。私のせいで優まで」
「いいよ、ただ僕がしたことだし。靴ずれで、痛いのに歩かせられないよ」
「ごめん、俺も遅れた......」
状況からだと靴ずれした真里は優におんぶされて来た。それはしょうがないとなったが冬斗はどうした、と紗綾と百合は思っていた。すると、冬斗は二人の思っていたことを察したように口を開く。
「母さんから逃げてくんので時間かかった」
「あっそういうこと。今年もご苦労様~」
紗綾はなんのことかすぐわかった。
幼なじみでよくある、幼なじみだけしかわからないことが。
冬斗の母は毎年、毎年懲りずに浴衣を着せようとする。
冬斗は浴衣自体は嫌いではないが浴衣の柄に問題があった。問題の柄というのは、とても着たくない水色のチェック柄の浴衣らしい。
実は毎年着させるのがわかっている冬斗は母が自分の部屋に入ってくる前にタイミングをみてすぐ家を出るというので、浴衣の柄は最後見た年と変わっているのかもわからないといった。
「じゃあ最後見たのは水色のチェック柄の浴衣だったんだ」
「そうなんだよ、紗綾さんよ~。まだ水色はいいとしてもチェック......チェックかぁ~」
「あら、私の次に冬斗まで"さん"付いているわ! どうツッコミすればいいのかしら」
「そういう百合はボケているのかなっ?」
真里は笑って百合にツンツンと体を突っつき続けて言う。
「さて、ここで喋って祭りが終わっちゃうのもアレなので祭り楽しもっか!」
「そうだね~真里は屋台で何食べるの?」
「そうだなぁ~かき氷! ......はキーンってなるから嫌じゃん、わたあめは嫌いだし、食べるものがな......くない。とうもろこし食べる~」
「優と真里は似た者同士だな」
真里は目についた焼きとうもろこしを買いに行く。
そして、冬斗は真里の言葉でみんなと一緒に行った海のことを思い出す。
(せっかく優のために海に来たのに本人は暑いから入らないといって何しに来たんだ~、となったの覚えているな。真里は真里で夏祭りで食べるものがない。なにも細かいこと気にしてたら食べれるものないじゃんか~、て思う。だってキーンってなるからかき氷ダメって、焼きそばも青のり歯についてダメってこと? とうもろこしは食べれるのか。とうもろこしもよく考えたら歯の隙間に入るかも知れないぞ。これ全部言ってたら日が暮れるよな......。まぁそういうとこが優と真里が似てるのかもな)
頭の整理がついた冬斗はタメ息をする。
(けっこう頭使ったなっていうか一人で何してるんだ?)
「ほら、みて~。可愛いくない? この飾り~」
向こうでさっきまで焼きとうもろこしを食べていた真里が次の店にいる。
(あいつ、もう食べ終わったのかよ。早っ)
「ねぇ、紗綾。もうすぐじゃない? 花火」
「だね。冬斗ぉ~、一番よく見えるところあるからそこ行くよぉ~」
「おう!」
紗綾たち、五人は紗綾がいう一番花火が見えるところに着くとちょうど花火が上がり始めた。
「わぁ~綺麗! 見て優。周り人いないし、特別感があるね」
「来てよかったよ」
「また来年来ようよ~」
* * *
~帰り道~
今日も二人で帰る。
真里と優と百合は違う方面に家があるから二人で帰るしかない。
「......冬斗どうしたの?」
「えっううん、何でも」
「そう」
(やべっ気付かれた。紗綾の浴衣、今ちゃんと見たら凄く似合ってたからついガン見してた。さっきまで色々考えてたりしてたからな......ってそれは言い訳にならないよな)
「冬斗、やっぱさっきから見てる。どうしたの、私の顔何かついてる?」
「あ......いや......その......今さらなんだけど浴衣、似合ってる」
紗綾の頬はほんのり赤く染まる。
(夜だから冬斗には見えてないよね。大丈夫だよね)
自問自答した後、ありがとうと返す。
家に着くと「また明日」といって二人は家に入る。
(まさか、あの会話の後一言も喋らなかったなんて......顔熱い。冬斗のせいだ)
二人は家に着くまで無言だった。
(あいつ顔隠してた、照れてたのかな...昔と変わってなかったら「ありがとう」っていって照れもしないし、うん。一歩全身!)
冬斗の努力で(?)鈍感さがなくなってきた紗綾。
翔との三角関係はどうなるのだろう。
~冬斗家~
冬「ただいま~」
兄「お帰り、祭りどうだったか」
冬「うん。楽しかった」
兄「そうか、よかったな」
冬「?」
兄「冬斗、お前に友達ちゃんといたんだな。ぶつぶつと呟いてたから病んでたのかと勘違いしてた」
冬「俺に友達はいるよ!」
* * *
次回『やがて消えてしまうお兄との記憶』です。




