【04】 引っ越しの届が遅れると裁判所行き?
丹沢「ところで、転出証明書はお持ちですか?」
爽香「持って来たわよ!!」
爽香が勢いよく
書類を叩きつけた。
丹沢「……前回こちらに来られたのって、いつ頃でしたっけ?」
爽香「2ヶ月くらい前」
丹沢「2ヶ月……2ヶ月ねぇ。……えっ、2ヶ月!?」
爽香「それが何か?」
丹沢「いえ……」
爽香「なら、早く手続きしてちょうだい」
丹沢「はい」
丹沢は受け取った書類一式を
クリアファイルに挟み、
後方の天満稔江へ手渡した。
丹沢「手続きに少々お時間をいただきますので、ロビーでお待たちください」
爽香が長椅子に腰を下ろす。
稔江は書類を点検し、
氏名や前住所を端末に入力し始めた。
入力画面の文脈を確認した稔江が、
丹沢を振り返る。
稔江「丹沢さん、ケタイお願いね」
懈怠――義務を怠ること。
ここで言う「ケタイ」とは
『過料手続のための遅延理由書』
のことだ。
丹沢「了解です。……速水さん」
呼ばれた爽香が
カウンターに戻ってくる。
丹沢「大変申し訳ないのですが、こちらの書類にご記入をお願いできますか?」
丹沢が差し出したのは
『住民基本台帳法違反に伴う
過料事件申立書』だ。
爽香「何よこれ?」
丹沢「引っ越した日から14日以内に届け出をしなければならないという法律がありまして」
爽香「へえー、そんなルールあるんだ。聞いたこともないわ」
丹沢「14日を過ぎてしまった場合、なぜ遅れたのかという理由をこの書類で申告していただくことになっています」
爽香「めんどくさいわね」
丹沢「お気持ちはわかりますが、決まりですので。よろしくどうぞ」
爽香「ちょっと待って。これ、宛先が『簡易裁判所』って書いてあるけど、あたしが裁判所まで持っていくの?」
丹沢「いえ、こちらでまとめて裁判所へ送付しますのでご安心ください」
爽香「そう。で、どこ書けばいいのよ」
丹沢「こちらのチェック欄です」
丹沢が書類の中央を指し示す。
そこには選択肢が並んでいた。
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□ 14日以内であることを知らなかった
□ 仕事の都合で行けなかった
□ 代理人に頼んでいたので出していると思った
□ すぐに再転出する予定だった
□ 面倒だった
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