【03】 数字のこだわりと「大っ嫌い!」の同調
事務室内。
デスクで聞き耳を立てていた
戸部考一が首をかしげた。
戸部「ん? 『6』で止まったか……?」
隣の君本早苗が
書類から目を上げる。
早苗「どうかしたの?」
戸部「いや、窓口のお客さんがさ……」
早苗「また丹沢さんと揉めてるみたいね」
戸部「うん。なんで『6』まで数えて止めたのかなと思って」
早苗「あそこまで言ったら『7、8』って続けそうなのに、中途半端ね」
戸部「丹沢も青いな。いくら正論でも、言い方ってものがあるだろ」
早苗「なんて言ったの?」
戸部「『こんなの常識です!』ってさ」
早苗「あら。それは客の火に油だわ」
受付カウンター。
丹沢「あなたクレーマーですか? たかが数字の順番で、なんでそこまでムキになるんですか」
爽香「あたしにとっては数字がすべてなの! 世の中だってそうでしょ! 成績表は5段階、順位だって1位から順番に並ぶじゃない。10番飛びに優秀な生徒が貼り出されたりする?」
丹沢「世の中のすべてが数字とは思いませんけどね……まあいいか」
爽香「良くないわよ! 市役所の採用試験だって受験番号は1番から並ぶでしょ? 出身地ごとに百の位を変えたりするの!?」
丹沢「わかりました、わかりました」
爽香「『わかりました』を2回言わないで! 本当にわかってんの?」
丹沢「あなたが数字に対して並々ならぬこだわりをお持ちだということは、痛いほどわかりました」
爽香「……ねぇ、さっきあたしを呼んでくれたお姉さん、呼んできて」
丹沢「はいはい、お安い御用です」
丹沢が奥から
春菜を呼び戻してきた。
春菜「はい、お待たせしました。なんでしょう?」
爽香「さっきの質問だけど……やっぱりあたし、この職員大っ嫌いです!」
春菜は一瞬目を見開いたが、
すぐに破顔した。
春菜「ふふふ、そうでしょう! 実は私もこの男、大っ嫌いなんです! 融通は利かないし、人の気持ちは汲み取れないし!」
爽香「でしょ!? ああ、聞いてすっきりしたわ!」
春菜「それでは~」
春菜は仕事に戻るフリをして、
そそくさと奥へ退避した。
影に入った瞬間、
春菜は一人ごちる。
春菜(ああでも言っておかないと、納まりがつかないもんね。へへっ)




