【02】 350番飛びの番号札に大バトル!
壁の時計は夕方5時を指している。
丹沢「今『531番』でお呼びしたんですが、お気づきになりませんでしたか?」
爽香「何か番号を言ってるのは聞こえてたわよ。でも、あたしが呼ばれるのはまだまだ先だと思って真剣に聞いてなかったの」
丹沢「『まだまだ』って……待合席、あなたひとりしかいませんよ?」
爽香「だって、さっきまで『187番』とか『188番』とか言ってたじゃない。あたしは『531番』でしょ? だからまだまだだなーって」
丹沢「じゃあ何かですか、自分の前にあと350人くらい待ってると思ってたんですか?」
爽香「うん、うん」
爽香は小さく4回頷いた。
丹沢「この狭いフロアのどこに350人も収容できるんですか!?」
爽香「そこまで深く考えてなかったわ」
丹沢「『深く』じゃなくて、浅く考えたってわかりますよ!」
爽香「ちょっと、その言い方何?」
丹沢「だいたい、これから350人も受付してたら、あなたの順番が来るのは来週になりますよ!」
爽香「そうね。あなた、手際悪そうだし」
丹沢「……そう来ましたか」
爽香「それが何か?」
丹沢「350人待ちでも待つ気だったんですか? 頭の構造大丈夫ですか?」
爽香「ちょっと! そこまで言うなら言わせてもらうけど!」
丹沢「おや、怒りました?」
爽香「そうよ! なんであたしの番号が『189番』じゃないのよ! 350番も飛んで『531番』なんて、絶対におかしいでしょ!!」
丹沢「……あー、なるほど。お客様、うちでは申請内容によって番号の『百の位』を変えてるんですよ」
爽香「百の位?」
丹沢「住民票なら100番台、戸籍なら300番台、転入や転出の手続きは500番台です。銀行だって預金、融資、振込で番号を分けるでしょう。それと同じシステムです」
爽香「そんなの、あなたたちの勝手な都合でしょ。客にとっては紛らわしいのよ。番号の頭を変える前に、あなたの頭の固さを変えたら?」
丹沢「はあ!?」
爽香「顧客ファーストって言葉、知らないの?」
丹沢「あのですね! 住民票1枚なら5分で終わるんです。もし転入届の30分かかる手続きの後ろに並ばされたら、大迷惑でしょう? それを解消するための配慮です。こんなの常識ですよ!」
爽香「常識ねぇ! あなたにとっては常識かもしれないけど、あたしから見れば非常識よ! 数字ってものは『1、2、3、4、5、6』って順番に並んでこそ役割を果たすの! なんで勝手にジャンプさせるのよ!」




