表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束の傘  作者: 祥野雅子
6/25

第6話 シウとさらの出会い

この物語が、降り止まない雨の中にいるあなたの一本の傘になれますように

 千葉理科大学大学院の生命科学研究所。シウが昼食後に休憩している時だった。

 

 走って飛び込んで来る女性がいる。香川さらだった。

「まーじ、遅刻すっかと思った」

 さらはそう言うと、シウのペットボトルの水をごくごく飲んだ。

 シウは呆気に取られて言う。

「ごめんなさい」

 シウは思わず謝る。

「なんであんたが謝るの」

 さらはそのペットボトルをどんっ、と置いた。

「僕が飲んでた水だから」

 さらの圧に圧倒されるシウ。

「気にするこたねーよ。それともあんたが嫌?」

「いえ」

「まさかこれ、毒入ってないよね?あんた飲んでたんだもんね?良かったー」

 と言ってさらはシウの隣へ座る。

 シウは咄嗟に、さらのカーディガンが肩からずれ落ちてはだけていたのを直す。

「気利くじゃん、名前は?」

「チェ・シウです」

「チェなの?シウなの?どっちで呼べばいい?」

「シウで」

「わかった。私はさらって呼んで」

「……さらさん」

 シウは躊躇して言った。

「さら!さんはいらない」

「それはちょっと」

 シウは戸惑った。

 同じ研究室の藤田あかりがさらに声を掛ける。

「さらちゃん、前髪切ったんだ」

「切ったんよ、切りすぎたんよー」

「でも似合ってるよ」

「ほんと?まじ?生きてて良かったー」

 さらは前髪の前で、指をひらひらさせた。シウは、さらに憧れのような思いを抱いた。シウはさらのようなインパクトがある女性は嫌いじゃなかった。

 

 夕方になり、研究室のシウはそろそろ帰ろうかと準備していた。そこへさらがやって来る。

「シウ君、これ」

 ペットボトルの水だった。

「さっきのお返しね」

「ありがとうございます」

 シウは頭を下げた。

「お礼言うのこっちだから」

 シウは、そうか……と納得した。

 さらは聞く。

「今何時?」

 シウは自分の腕時計を見て言う。

「五時二十分です」

「そう」

 シウはさらの手首に無骨な腕時計があるのに気づき、しばらく考え込んだ。


 なぜ、自分に時間を聞いたんだろう……


 シウは頭にハテナが浮かび首を傾げた。

 さらはその様子を見て言う。

「これね、時間合ってないのよ。もう何分遅れてるのかもよくわかんなくてさー」

「直したらいいです」

「それが出来たらしてんだけどさ」

「僕に、貸してください」

「何、直せるの?」

 さらは腕時計を外してシウに渡す。

「古いからさ、文字消えてんだよね。どれがどのボタンなのかわからなくてさ。出来るの?」

 

 シウは勘で、しかし迷いのない手つきで時間を合わせていく。

 

「はい、出来ました」

「うお、ほんとだ!直ってる」

 さらはぱっと顔を明るくさせた。

「母親が買ってくれたやつだったのさ、捨てられなくてさ、ありがとう」

「いいえ、直って良かったです」

 シウはさらの役に立てて満足だった。

 さらはシウの顔をまじまじと見た。悪くないな、いや、むしろタイプかも……と思った。

「ときめきー」

 そう言いながらさらは研究室を出て行った。

お読みいただきありがとうございます。

お気軽にご感想等くださると嬉しいです♡♡

今後ともよろしくお願いいたします( ơ ᴗ ơ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ